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果糖ぶどう糖液糖は体に悪い?砂糖との違いとリスクを論文で検証

果糖ぶどう糖液糖と砂糖を並べた写真

「果糖ぶどう糖液糖」の6文字を原材料名に見つけて、棚に戻したことがありますか。私はあります。むしろ、それを人にすすめる記事を書いていました。

この記事は、2021年に私が書いた「果糖ぶとう糖液糖は最悪!知らないで摂取する危険性」を、5年後に全部書き直したものです。当時の私は「果糖ぶどう糖液糖は砂糖よりたちが悪い」「フルクトースを代謝できるのは肝臓だけ」「遺伝子組み換えだからダブルで身体に悪い」と書いていました。いま論文を読み直すと、3つとも支持できません。

※この記事は一般的な栄養・研究情報の解説です。糖尿病、高尿酸血症・痛風、脂肪肝(NAFLD/MASLD)などで治療中の方は、自己判断で治療や食事指示を変更せず、主治医・管理栄養士の指示を優先してください。

先に結論を3行で置きます。

この記事の結論

  • 果糖ぶどう糖液糖だけが砂糖より極端に危険、という証拠は乏しい。767人分をまとめた比較で、体重も中性脂肪も差が出ませんでした
  • だから好きなだけ摂ってよい、という意味ではありません。肝臓も尿酸も、「置き換え」では動かず「上乗せ」で動きます
  • 実生活で見るべきは甘味料の名前ではなく、加糖飲料などから入ってくる糖の量。桁が2つ違います

この記事でわかること

  • 砂糖と果糖ぶどう糖液糖の違いは、実は「5ポイント」だけだということ
  • 「血糖値が急上昇する」が、果糖については逆向きの誤解である理由
  • 納豆のタレやめんつゆの少量を、気にすべきかどうか(実際のメーカー公表値で計算しました
  • 粉末タイプに替えれば安心なのか
  • 「遺伝子組み換えだから危険」が、制度をどう読み違えているか
  • 2021年版の記事から、私が取り下げる主張

私は臨床検査技師です。仕事は「測ること」そのもので、測り方の違う数字を並べて比べてはいけないという前提で毎日を過ごしています。この主題は、まさにそこで話がねじれています。

目次

果糖ぶどう糖液糖とは何か——砂糖との違いは「5ポイント」だけ

まず、正体から。

異性化糖とは、でん粉を酵素または酸で加水分解してぶどう糖主体の糖液をつくり、それをグルコースイソメラーゼなどで一部「果糖」に変えた(=異性化した)液状の糖のことです。日本農林規格(JAS)では、果糖含有率によって名前が変わります。

表1:JASによる異性化液糖の分類
名称 果糖含有率 特徴
ぶどう糖果糖液糖 50%未満 ぶどう糖のほうが多い。甘味はやや控えめ
果糖ぶどう糖液糖 50%以上90%未満 実際にもっとも多く使われるのは果糖含有率55%のもの
高果糖液糖 90%以上 甘味がもっとも強い

この分類は2021年版の記事でも正しく書けていました。問題はその先です。

砂糖(ショ糖)は、果糖1つとぶどう糖1つが結合した二糖です。果糖ぶどう糖液糖は、その2つが結合せずに混ざっているもの。そして構成比は、砂糖が果糖50:ぶどう糖50、よく使われる異性化糖が果糖55:ぶどう糖45です。

差は5ポイント。しかも砂糖は小腸で分解されて果糖とぶどう糖になるので、消化されたあとは同じ2つの単糖が並びます。

図解1:砂糖と果糖ぶどう糖液糖は、どこが違うのか 砂糖(ショ糖) 果糖 50 ぶどう糖 50 結合している(二糖) 小腸で分解してから吸収される 果糖ぶどう糖液糖(果糖55%の例) 果糖 55 ぶどう糖 45 結合していない(混合液) 分解の手間なくそのまま吸収される 吸収されるときは、どちらも果糖とぶどう糖 JASの分類は果糖含有率による。50%未満=ぶどう糖果糖液糖/50%以上90%未満=果糖ぶどう糖液糖/90%以上=高果糖液糖

なぜ砂糖ではなく、これが使われるのか

理由は主に3つです。でん粉(多くは輸入されたコーンスターチ)からつくれるので安価であること、液体なので飲料に溶かしやすいこと、そして低温になるほど甘味が強く感じられることです。冷やして飲むものと相性がいい、ということですね。

日本の異性化糖の消費量は、農林水産省の需給見通し(令和7砂糖年度)で78万トンと見込まれています。

ただし、ここで一つ補助線を引いておきます。日本人の砂糖の1人当たり消費量は、1974年の30.4kgから2019年の16.2kgへ、45年でおよそ半減しています。「昔より甘いものを摂るようになった」という前提そのものが、日本ではそのまま成り立ちません。

海外研究の「HFCS-55」と、日本の「果糖ぶどう糖液糖」は同じものか

厳密には、同じとは言い切れません。

海外の研究でよく使われるHFCS-55は、果糖がおよそ55%の異性化糖です。一方、日本の「果糖ぶどう糖液糖」はJAS上果糖50%以上90%未満という幅のある分類で、実際によく使われるのが55%というだけです。

この記事ではHFCSの研究を参考にしますが、日本で売られているすべての果糖ぶどう糖液糖が厳密に同じ組成という意味ではありません。ここは先に断っておきます。

「砂糖よりたちが悪い」は、比べた研究では出なかった

ここが、この記事でいちばん書き直したかったところです。

2021年の私は「果糖ブドウ糖液糖は砂糖よりたちが悪いって事? そうですね!」と書いていました。根拠は、書いていませんでした。

実際に両者を比べた試験をまとめたメタ解析があります。

高果糖コーンシロップ(HFCS)とショ糖(砂糖)を比較したシステマティックレビュー/メタ解析

4報9アーム・767人。HFCSまたは砂糖を、平均で1日の総摂取カロリーの19%として摂取させた試験を統合。体重・BMI・腹囲・体脂肪率・総コレステロール・中性脂肪のいずれにも有意差はなく、CRP(炎症の指標)だけがHFCS側で高かった。

表2:果糖ぶどう糖液糖と砂糖を比べたとき、差はどれだけ出たか(767人)
指標 差(HFCS−砂糖) 95%信頼区間 判定
体重 −0.29 kg −1.34〜0.77 有意差なし
BMI −0.18 kg/m² −0.46〜0.10 有意差なし
腹囲 −0.39 cm −2.04〜1.25 有意差なし
体脂肪率 −0.24% −2.04〜1.55 有意差なし
総コレステロール −2.45 mg/dL −9.12〜4.22 有意差なし
中性脂肪 −4.15 mg/dL −30.37〜22.07 有意差なし
CRP +0.27 mg/L 0.02〜0.52 HFCS側が高い

表の読み方を1つだけ。「HFCSで体重が0.29kg減った」ではありません。HFCS群と砂糖群の体重の差が−0.29kgで、その95%信頼区間が−1.34〜0.77kgと0をまたいでいる、つまり差があるとは言えなかった、という意味です。

唯一有意だったCRPについても、隠さずに書いておきます。差は+0.27 mg/L。ただしこの1つの解析だけで「HFCSは炎症を起こす」と結論できるものではありませんし、他の6項目で差が出ていない中の1項目である、という位置づけも同時に見ておく必要があります。

米国医師会(AMA)も、「HFCSの摂取が砂糖より肥満に寄与したという十分な証拠はない」と結論しています。

ここでいう「差がない」の意味

「果糖ぶどう糖液糖が健康的」という意味ではありません。「同程度のカロリーを摂る条件では、果糖ぶどう糖液糖だけが砂糖より大幅に悪いとは確認されなかった」という意味です。果糖ぶどう糖液糖でも砂糖でも、遊離糖や総エネルギーを多く摂れば別の問題になります。

結局、何から減らせばいい? まず「量の多い加糖飲料」から

ここまで読むと、「じゃあ何を気にすればいいのか」が知りたくなると思います。先に答えを置きます。

甘味料の名前ではなく、1回に入ってくる量を見てください。そして量は、商品によって桁が2つ違います。

実際のメーカー公表値で並べてみます。

表3:実際の商品では、1回にどれくらいの糖が入ってくるか(メーカー公表値・2026年8月5日確認)
商品 原材料名にある糖 表示値 1回分に換算すると
コカ・コーラ(500mlペットボトル) 糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖) 炭水化物 11.3g/100ml 約56.5g
ポカリスエット(ペットボトル) 砂糖、果糖ぶどう糖液糖 炭水化物 6.2g/100ml 500mlで約31g
ポカリスエット(パウダー1L用) 砂糖、ぶどう糖、果糖
(異性化糖ではない)
炭水化物 65g/1袋(1L分) 500ml相当で約32.5g
Newヤクルト(65ml) ぶどう糖果糖液糖、砂糖 炭水化物 11.5g/本 11.5g
めんつゆ(2倍濃縮) 果糖ぶどう糖液糖、砂糖 炭水化物 14.6g/100ml 原液50mlで約7.3g
納豆(添付のたれ・からし込み) 砂糖混合ぶどう糖果糖液糖 1パック56.7gで糖質3.8g
(納豆50gのみなら3.0g)
たれ・からし由来は約0.8g

※各社の商品情報ページに公表されている栄養成分表示から、2026年8月5日に確認した値です。商品はリニューアルで変わることがあるので、手元の商品の表示で確かめてください。また「炭水化物」は遊離糖そのものではありません(後述)。

炭酸飲料1本と、納豆のたれ1袋では、およそ70倍の開きがあります。「両方に果糖ぶどう糖液糖が入っている」ことは事実ですが、同じ土俵で心配する対象ではありません。

納豆のタレやめんつゆは、気にすべきか

Xを見ていると、この主題でいちばん驚かれているのは「健康そうな商品に入っていた」という発見です。「納豆のタレ、やばいぞ!」「おなかの調子を整えるトクホのゼリーを見たら、一番左が果糖ぶどう糖液糖だった」といった投稿が並びます。

気持ちはよくわかります。ただ、量で見ると納豆のたれ1食ぶんは糖質で1g足らずでした。毎日食べても、1か月で25g程度。炭酸飲料500mlを1本飲めば、その1か月ぶんを1日で超えます。

ここが、この記事でいちばん実用的なところだと思っています。削る順番は、桁の大きいほうから。納豆のたれを探し回るより、まず飲み物です。

粉末タイプに替えれば安心なのか

「粉ポカリはブドウ糖、ペットボトルは果糖ぶどう糖液糖なので粉ポカリおすすめ」——これもXでよく見る話です。

原材料名を見るかぎり、その指摘自体は正確でした。ペットボトルは「砂糖、果糖ぶどう糖液糖」、缶は「砂糖、ぶどう糖果糖液糖」、パウダーは「砂糖、ぶどう糖、果糖」で、パウダーには異性化糖が使われていません。

ただ、表3をもう一度見てください。ペットボトル500mlの炭水化物が約31g、パウダーを1Lに溶かして500ml飲んだ場合が約32.5g。ほぼ同じです。

甘味料の名前は変わりましたが、入ってくる糖の量は変わっていません。「名前を替える」より「量と頻度を替える」ほうが、結果に効きます。

遊離糖はどれくらいが目安? WHOは「10%未満」を推奨

では、量の基準はどこにあるか。

WHOは2015年のガイドラインで、遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを強く推奨しています。さらに5%未満(成人でおよそ25g=小さじ6杯)への追加的な減量を、条件付きで推奨しています。

ここは正確に読んでください。WHOは25gを一律の「上限」としているわけではありません。10%未満が強い推奨で、5%未満は「さらに減らせば追加の利益が期待できる」という条件付きの位置づけです。しかも10%未満という推奨の根拠は、う蝕(むし歯)に関する観察研究の中等度の質のエビデンスとされています。

そして「遊離糖」には、砂糖もはちみつもシロップも果汁も、そして果糖ぶどう糖液糖も、全部同じ枠で入ります。製造者・調理者・消費者が加える単糖類と二糖類に加えて、はちみつ・シロップ・果汁・濃縮果汁にもとから含まれる糖まで含む定義です。

日本人の実測はどうか。新しく開発された食品成分データベースを用いた推定では、3〜6歳の小児で遊離糖は平均26.8g/日、総エネルギーの平均7.8%。10%以上を摂っている子は21.7%でした。思春期でも総エネルギーの8.4〜8.8%です。

平均はすでに10%を下回っています。つまり問題は「日本人全体が糖を摂りすぎている」ことではなく、自分が分布のどちら側にいるかのほうです。表3で言えば、加糖飲料を毎日飲む習慣があるかどうかで、位置がまるごと変わります。

原材料表示と栄養成分表示、どこを見るか

実務的な話をします。

  • 原材料名は重量順に並びます。糖類が1番目や2番目に来ていたら、それだけ量が多いということです。「糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)」のような括弧内も同じく重量順なので、この表記なら砂糖より果糖ぶどう糖液糖のほうが多い
  • 栄養成分表示で義務なのは「炭水化物」です。「糖質」「糖類」の表示は任意
  • したがって「炭水化物=遊離糖」ではありません。炭水化物には食物繊維も、もともと食材に含まれる糖も入ります

ここは私も以前は雑に考えていました。飲料のように炭水化物の大部分が糖類だと考えやすい商品では、1本あたりの炭水化物量が量の目安になります。でも、糖類の表示がない商品では、表示だけからWHOの言う遊離糖を正確に計算することはできません。表3で納豆だけ「糖質」の値を使っているのは、その商品が糖質を任意表示していたからです。

それでも、飲み物に関しては炭水化物のグラム数を見るのがいちばん速いと思います。名前を探すより、数字のほうが桁を教えてくれます。

肝臓への影響は、「果糖かどうか」だけでは決まらない

ここからは、よく言われるリスクを1つずつ確かめます。まず肝臓から。

Xで最も多い言説が「果糖は肝臓でしか代謝できない」「だから脂肪肝の原因になる」です。2021年の私も、ほぼ同じことを書いていました。

まず「肝臓だけ」は不正確です。果糖の初回通過代謝は主に肝臓で行われますが、小腸でも相当量が代謝されます。

そのうえで、肝臓への影響を調べた研究をまとめたものがこちらです。

Chung M, Ma J, Patel K, Berger S, Lau J, Lichtenstein AH. Fructose, high-fructose corn syrup, sucrose, and nonalcoholic fatty liver disease or indexes of liver health: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2014;100(3):833-849.

観察研究6報+介入試験21報。等カロリーで果糖を他の糖質と入れ替えた試験では、肝脂肪・肝酵素に明確な差は確認されなかった。一方、通常食に純粋な果糖を上乗せした高カロリー食の試験では肝脂肪が増えた(ただしエビデンスの質は低い)。そして高カロリーの果糖食とぶどう糖食では、肝脂肪・肝酵素への効果は同程度だった。著者らの結論は「肝の健康指標と果糖・ショ糖摂取の見かけの関連は、過剰なエネルギー摂取による交絡と考えられる」。

大事なのは最後の一文です。この結果から「果糖そのものが原因」と「単純なエネルギー過剰」の影響を切り分けることはできません。著者自身も、結論を出せるほど頑健な証拠はないと書いています。

図解2:同じ果糖でも、「置き換え」と「足し算」で結果が変わる ① 置き換え(他の糖質と入れ替え/カロリーは同じ) 肝脂肪 明確な差は確認されず 血清尿酸 +0.56 μmol/L(有意差なし) ② 足し算(通常の食事に上乗せ/カロリーが増える) 肝脂肪 増えた(エビデンスの質は低い) 血清尿酸 +31.0 μmol/L(有意) ただし上乗せの場合、果糖でもぶどう糖でも肝臓への効果は同程度だった Chung 2014(介入21試験)/Wang 2012(尿酸:置換18試験390人・上乗せ3試験35人)。いずれも群間の比較であり、同じ人の前後差ではありません。上乗せ試験の果糖量は1日213〜219gです

逆に、糖を減らしたら肝臓は動いた

「増やしたとき」の話ばかりでは片手落ちなので、減らした試験も置きます。

Schwimmer JB, Ugalde-Nicalo P, Welsh JA, et al. Effect of a Low Free Sugar Diet vs Usual Diet on Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Adolescent Boys: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(3):256-265.

組織診断でNAFLDと確認され、肝脂肪10%超かつALT 45 U/L以上の11〜16歳の男子40人。8週間、遊離糖を総エネルギーの3%未満に落とす食事を家族ごと提供する群通常食の群に無作為に分けた。8週間後の肝脂肪率は介入群で25%→17%、対照群で21%→20%。ベースライン値を調整した群間差は −6.23ポイント。

ここで大事なのは、「8ポイント減った」という各群の前後差ではなく、ベースラインを調整した介入群と対照群の差が−6.23ポイントだったことです。前後だけを見ると、対照群でも1ポイント動いています。

そして、この試験が支持しているのは「特定の甘味料だけを避けること」ではありません。遊離糖全体を3%未満まで落とした介入です。果糖ぶどう糖液糖だけを抜けばよい、とはこの試験からは言えません。

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果糖は、ぶどう糖より血糖・インスリン反応が小さい

次が、Xで2番目に多い誤解です。「果糖ぶどう糖液糖は血糖値を急上昇させる」「血糖値スパイクを招く」。

果糖に関しては、です。

Teff KL, Elliott SS, Tschöp M, et al. Dietary fructose reduces circulating insulin and leptin, attenuates postprandial suppression of ghrelin, and increases triglycerides in women. J Clin Endocrinol Metab. 2004;89(6):2963-2972.

標準体重の女性を対象に、エネルギーの一部を果糖の甘味飲料またはぶどう糖の甘味飲料から摂らせて比較。高果糖の日は、高ぶどう糖の日に比べて食後血糖の変動が66±12%小さく、インスリン反応は65±5%低かった。最初の12時間のレプチンのAUCは低下し、食後のグレリン抑制は弱まり、中性脂肪は上昇した。

果糖は、ぶどう糖と違ってインスリン分泌を直接刺激しません。だから血糖値の波も小さくなります。「果糖ぶどう糖液糖は血糖値を急上昇させる糖だ」という説明は、果糖については当てはまりません。

ただし、これを「だから安全」と読むのも早すぎます。この試験ではレプチンやグレリンの反応にも差があり、中性脂肪は上がっていました。とはいえ、この試験は「実際に食欲が増えた」「食べる量が増えた」までは測っていません。ここから「満腹にならないから止まらない」と言い切ることはできない、というのが正直なところです。

もう一つ、混同を解いておきます。果糖ぶどう糖液糖にはぶどう糖も45%前後入っています。血糖の話をするなら、そちらが主役です。「果糖だから血糖が上がる」のではなく「一緒に入っているぶどう糖が上げる」というのが順番として正しい理解です。

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尿酸への影響も、同じ形だった

痛風が気になる方へ。果糖と尿酸の関係も、肝臓とまったく同じ形で整理されています。

Wang DD, Sievenpiper JL, de Souza RJ, et al. The effects of fructose intake on serum uric acid vary among controlled dietary trials. J Nutr. 2012;142(5):916-923.

等カロリーで果糖を他の糖質と置き換えた18試験・390人:血清尿酸の平均差 +0.56 μmol/L(95%CI −6.62〜7.74)、I²=0%で有意差なし。
通常食に35%エネルギーぶんの果糖を上乗せした3試験・35人(いずれも男性)+31.0 μmol/L(15.4〜46.5)で有意に上昇。ただし著者らは「高用量試験では過剰エネルギーによる交絡を否定できない」と注記している。

この上乗せ試験の果糖量は、1日213〜219gです。表3のコカ・コーラ500mlに含まれる糖が全体で約56.5g、そのうち果糖はおよそ半分ですから、1日にコーラを7〜8本飲むような量にあたります。日常の摂取量ではありません。

つまりここでも構図は同じです。置き換えなら動かない、足し算だと動く。

加糖飲料と2型糖尿病——観察研究が示していること

成分ではなく「飲み物」で見ると、話は変わってきます。

前向きコホート34報をまとめた用量反応メタ解析では、加糖飲料が1日1杯多いことと、2型糖尿病リスクの上昇との関連がみられました(RR 1.27、95%CI 1.15–1.41)。2024年7月までを検索した新しいシステマティックレビューでも、1杯/日あたりRR 1.25(1.17–1.35)とほぼ同じ結果です。

ただし、これは観察研究のメタ解析です。加糖飲料そのものが27%のリスク上昇を「起こした」と断定することはできません。よく飲む人はほかの生活習慣も違うからです。

もう一つ。同じ解析で人工甘味料飲料でもRR 1.13(1.03–1.25)の関連が報告されています。これも「人工甘味料飲料が糖尿病を13%増やす」と読むのは適切ではありません。もともと体重や血糖を気にしている人ほどダイエット飲料を選ぶという逆向きの関係(逆因果)や、残った交絡を、観察研究では完全には除けないからです。

それでも、研究側の示唆と、Xで専門職アカウントが言っていることは同じ方向を向いています。「重要なのは糖の種類ではなく、総摂取量・摂取頻度・液体か固体か」。肝臓専門医の投稿にも「異性化糖は工業的につくられるからダメでサトウキビは自然だから大丈夫なんて大ウソ。どちらも加糖飲料として常飲すれば脂肪肝・肥満・糖尿病まっしぐら」とありました。

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「遺伝子組み換えだから危険」はどうか

2021年の私は、こう書いていました。「果糖ブドウ糖液糖のデメリットだけでなく、遺伝子組み換え商品としてのデメリットもあります。ダブルで身体に悪いので、十分に気を付けたいですね」「日本は加工した食品は、遺伝子組み換えの表示義務もありません」。

後半は事実ですが、理由を書いていませんでした。そこが決定的でした。

日本の遺伝子組換え食品の表示制度では、組換えられたDNAおよびそれによって生じたタンパク質が、広く認められた最新の技術によっても検出できない加工食品は表示の対象外とされています。そしてその具体例として、醤油・大豆油・コーンフレーク・コーン油とならんで「異性化液糖」が明記されています。

「表示義務が緩いから隠されている」のではなく、「検出できないから対象外」なのです。異性化糖は、でん粉を分解して糖に変えた精製物なので、原料のDNAもタンパク質も工程の中で残りません。

遺伝子組み換え作物そのものをどう考えるかは、別の論点として存在します。ただ、「果糖ぶどう糖液糖という糖の分子が、原料の違いによって性質を変える」という筋は成り立ちません。2021年版の「ダブルで身体に悪い」は取り下げます。

2021年版の記事から、取り下げること

この記事を書き直すにあたって、旧記事から削った主張を明示しておきます。

  • 「フルクトースを代謝できるのは肝臓だけ」——初回通過代謝は主に肝臓ですが、小腸でも相当量が代謝されます。「だけ」は誤りです
  • 「果糖ブドウ糖液糖は砂糖よりたちが悪い」——767人分の比較で、体重・BMI・腹囲・体脂肪率・総コレステロール・中性脂肪に差は出ませんでした
  • 「肥満が増えていない地域で糖尿病患者が増えているのは果糖ぶどう糖液糖のせい」——これは地域単位の相関であって、原因を示すものではありません
  • 「遺伝子組み換えだからダブルで身体に悪い」——上記のとおり取り下げます
  • 「糖化=老化。果糖ぶどう糖液糖がこれを究極に加速させる」——糖化やAGE(糖化最終生成物)によって老化が進むという主張について、果糖ぶどう糖液糖と結びつけて裏付けられるヒト研究を、今回は確認できませんでした。裏取りできない以上、書きません
  • 「悪魔の食品」「究極に加速させる」——根拠を超えた言い方でした

5年前の自分の文章を消すのは、正直あまり気持ちのいい作業ではありません。ただ、論文を貼るスタイルに変えたのに、本文が論文と食い違ったままにしておくほうが、読む人に対して不誠実だと思いました。

自分に実害が出ているかを確かめる数字

ここからは臨床検査技師としての持ち場です。「気になる」を「確かめる」に変える方法を書きます。

表4:甘い飲み物の習慣が気になったときに、実際に見る数字
見るもの 見方 何がわかるか
ALT・γ-GTP 健診の基準値と、去年の自分の値の両方と比べる 脂肪肝の手がかり。体重より先に動くことがある
中性脂肪・HDLコレステロール 同上。中性脂肪は食事の影響を受けるので採血条件をそろえる 脂質の代謝がどう動いているか
空腹時血糖・HbA1c 同上 糖の処理がどう動いているか。HbA1cは直近1〜2か月の平均を映す
尿酸 同上 痛風のリスク評価に使う。飲料の習慣と一緒に見る
腹囲 朝、同じ条件で測る 鏡に映らない内臓脂肪の目安

毎日数字を見ていて思うのは、「去年の自分の値と比べる」ことの情報量です。基準値の中に収まっていても、去年から明らかに動いていれば、そこには意味があります。

医療機関の受診をおすすめする場合

健診値だけで病気の有無を自己診断することはできません。ALTやγ-GTPの異常値の指摘が続く場合、痛風発作の既往がある場合、すでに糖尿病や脂肪肝で治療中の場合は、この記事の数値を治療目標として使わず、医療機関に相談してください。治療中の方は、自己判断で食事指示を変更しないでください。

中性脂肪を下げる食事|減らす食品・増やす食品と数値別の優先順位

果糖ぶどう糖液糖は「完全に避ける」必要があるのか

最後に、いちばん実務的な問いに答えます。

現時点の研究から、原材料表示に果糖ぶどう糖液糖がある食品をすべて排除する根拠は示せません。優先順位をつけるなら、甘味料の名称より、1回量と摂取頻度、とくに加糖飲料の量を見るほうが実用的です。

Xには「義務にすると苦しいから、見つけることを楽しんでる」という投稿がありました。私はこれがいちばん健全な距離の取り方だと思います。「スーパーで全然売って無くて悲しい」という声もありました。完全排除は、コストのわりに得るものが小さいというのが、数字を並べたあとの私の結論です。

やることを3つに絞るなら、こうなります。

  1. 飲み物から手をつける。桁がいちばん大きいのは液体です
  2. 甘味料の名前ではなく、栄養成分表示のグラム数を見る。名前を替えても量は変わりません
  3. タレ・ドレッシングの少量は、後回しでいい。1食1g足らずの世界です

よくある質問

Q. 果糖ぶどう糖液糖とぶどう糖果糖液糖は何が違いますか?
A. 果糖の含有率です。JASでは果糖含有率50%未満が「ぶどう糖果糖液糖」、50%以上90%未満が「果糖ぶどう糖液糖」、90%以上が「高果糖液糖」と決まっています。名前の順番は、多く入っているほうが先に来ると覚えると間違えません。

Q. 果糖ぶどう糖液糖は砂糖より太りやすいですか?
A. 767人分の試験をまとめた解析では、体重の差は−0.29kgで95%信頼区間が−1.34〜0.77kgと0をまたいでおり、有意差は認められませんでした。BMI・腹囲・体脂肪率でも同様です。ただし「どちらも太らない」という意味ではありません。

Q. 果糖ぶどう糖液糖は血糖値を急上昇させますか?
A. 果糖については逆で、ぶどう糖より血糖・インスリンの反応は小さいことが試験で確認されています。ただし果糖ぶどう糖液糖にはぶどう糖も45%前後入っているので、飲料として飲めば血糖は上がります。糖尿病で治療中の方は、主治医の指示を優先してください。

Q. 果糖ぶどう糖液糖は脂肪肝の原因になりますか?
A. 等カロリーで他の糖質と置き換えた試験では、肝脂肪や肝酵素に明確な差は確認されていません。通常食に上乗せした試験では肝脂肪が増えましたが、その場合は果糖でもぶどう糖でも同程度でした。「果糖だから」と「エネルギーが過剰だから」を、現在の研究は切り分けられていません。

Q. 遺伝子組み換えとうもろこし由来なら危険ですか?
A. 異性化液糖は、組換えDNAとそれによって生じたタンパク質が最新の技術でも検出できないため、遺伝子組み換え表示の義務対象から外れています。醤油・大豆油・コーン油と同じ扱いです。「表示義務が緩いから隠されている」わけではありません。

Q. 毎日少量の納豆のタレやめんつゆも避けるべきですか?
A. 量で見ると優先度は低いです。納豆に添付のたれ・からし由来の糖質は1食あたり約0.8g、めんつゆ(2倍濃縮)は原液50mlで炭水化物約7.3g。一方で炭酸飲料500mlは約56.5gです。桁の大きいほうから削るのが効率的です。

Q. 「砂糖不使用」「糖類ゼロ」なら安心ですか?
A. 別の表示です。「砂糖不使用」は砂糖を加えていないという意味で、ほかの糖が入っていないことを保証しません。また栄養成分表示で義務なのは「炭水化物」で、「糖質」「糖類」は任意表示です。判断したいときは、糖類の表示があるかどうかを先に確かめてください。

Q. 果物やはちみつの果糖は大丈夫なのですか?
A. WHOの「遊離糖」の定義では、はちみつ・シロップ・果汁に含まれる糖も同じ枠に入ります。ただし、この記事で扱った試験の多くは果糖の甘味飲料や加糖飲料を対象としており、果物そのものと同一視することはできません。

まとめ

2021年の私は「果糖ぶどう糖液糖=知らずに口にしている悪魔の食品」と書きました。5年かけて論文を読み直した結論は、こうです。

  • 果糖ぶどう糖液糖だけが砂糖より極端に危険、という証拠は乏しい。組成の差は5ポイントで、比べた試験でも差は出ませんでした
  • だから好きなだけ摂ってよい、という意味ではありません。肝臓も尿酸も「置き換え」では動かず、「上乗せ」で動きます
  • 実生活で効くのは、名前ではなく量。炭酸飲料1本と納豆のたれ1袋では、およそ70倍の開きがあります

原材料表示を見る習慣そのものは、やめる必要はまったくありません。見る場所を、名前から数字に変えるだけです。

ダイエット成功の中身を全部出す|82.05kg→72.4kgの実データを臨床検査技師が論文で解剖する

参考文献

  1. Chung M, Ma J, Patel K, Berger S, Lau J, Lichtenstein AH. Fructose, high-fructose corn syrup, sucrose, and nonalcoholic fatty liver disease or indexes of liver health: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2014;100(3):833-849. PubMed
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  3. Schwimmer JB, Ugalde-Nicalo P, Welsh JA, et al. Effect of a Low Free Sugar Diet vs Usual Diet on Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Adolescent Boys: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(3):256-265. PMC
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  9. Fujiwara A, et al. 日本人の遊離糖摂取量の推定(新規開発の食品成分データベースによる)。DONGuRI Study ほか. J Epidemiol
  10. 農林水産省「異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖の日本農林規格」 maff.go.jp
  11. 農林水産省「砂糖及び異性化糖の需給見通し」 maff.go.jp/独立行政法人農畜産業振興機構「砂糖類の国内需給」 alic.go.jp
  12. 消費者庁「遺伝子組換え表示制度」 caa.go.jp
  13. 各社商品情報ページの栄養成分表示(コカ・コーラ、ポカリスエット、Newヤクルト、ミツカン追いがつおつゆ2倍、おかめ納豆極小粒ミニ3)。2026年8月5日確認

この記事を書いた人

臨床ブロガー 臨床検査技師/18年・88kg→65kg

検査値を通して人の体を見てきました。論文を確認し、自分の実測とは分けて書いています。医師・管理栄養士ではなく、診断・治療・服薬の判断は行いません。

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この記事を書いた人

臨床検査技師。専門は生化学検査。健診センターのデータ業務、治験コーディネーター(CRC)、総合病院、公立病院の経営推進課を経て、現在はWEBマーケティングが本業。自身が20回のダイエット失敗のあと88kgから65kgへ。論文を読んで気になったものを自分の体で試し、体重・腹囲・血液検査・体組成という数値で確かめた記録を書いています。効くものは効くと、効かないものは効かないと書きます。広告主から記事内容の指定を受けることはありません。

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