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4つのプランの栄養基準と、実際にいくらかかるのか。継続割の解約条件と、向いていない人の条件まで、公式に出ている数字だけで並べました。

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グラスフェッドバターは体に悪い?普通のバターとの違いとLDLへの影響

グラスフェッドバターと普通のバターを並べた写真

「グラスフェッドバターは体に悪いのか」を左右しているのは、牛が草を食べたかどうかではありません。あなたが1日に何グラム使うかです。

市販バター54点を実測した研究では、グラスフェッドバターと普通のバターの脂肪酸の差は、期待されているほど大きくありませんでした。CLAは平均1.44倍、オメガ3(α-リノレン酸)は平均1.26倍。この平均値をバター10gに当てはめて試算すると、オメガ3の差は約9mgにしかなりません(Pustjens, Foods 2017)。

一方で、バターを1日50g、4週間とった比較試験では、バター群のLDLコレステロールの変化量が、オリーブ油群より0.38 mmol/L(約15mg/dL)大きくなりました(Khaw, BMJ Open 2018)。ここで効いているのは草かどうかではなく、乳脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸の量です。グラスフェッドバターも、飽和脂肪酸が多いバターであることに変わりはありません。

先に結論を書いておきます。

結論(先出し)

  • グラスフェッドバターが普通のバターより特別に体に悪いことを示した研究は見当たりません
  • 同時に、「普通のバターより体にいい」も現時点では示せていません。平均含有率の差は1.3〜1.4倍で、1回に使う量に直すと差は小さくなります
  • グラスフェッドかどうかにかかわらず、バターは飽和脂肪酸を多く含む食品です。健康影響を考えるときは種類より食事全体の量を見ます
  • 「体に悪い」が数字に出るとすれば、多くはLDLコレステロールです。これは種類ではなく量に反応します
  • CLAによる減量効果を、バターの量で期待することはできません。試験で使われた量に届くには1日約500g必要になります

この記事では、臨床検査技師として日々LDLや中性脂肪の数値を見ている立場から、論文8本と国の基準の数字を挙げて、どこまでが確認できてどこからが確認できていないのかを整理します。2021年に書いた元の記事では「全く悪くありません」と締めていましたが、その根拠が薄かったため全面的に書き直しました。

この記事でわかること

  • グラスフェッドバターと普通のバターの成分差が、実測で何倍・何mgなのか
  • SNSでよく見る「CLAが5倍」「オメガ3が圧倒的」がどこまで確認できるのか
  • 意外だが天然由来のトランス脂肪酸はグラスフェッドの方が多かったという実測結果
  • 期待されている「効果」を1つずつ、確認できる/できないで判定した表
  • LDLコレステロールについて介入試験がどこまで示しているのか(何mg/dLなのか)
  • バターコーヒーでLDLが49%上昇した症例報告の中身と、その読み方の注意点
  • バターそのものと死亡・心血管疾患の関連を調べた636,151人のデータ
  • いちばん差がつくのは「減らす」ではなく「何に置き換えるか」だという話
  • 飽和脂肪酸7%から逆算した量の目安と、それが安全上限ではない理由

本記事は論文と食品成分値をもとにした一般的な情報提供であり、特定の食品が疾病を予防・改善することを示すものではありません。摂取量の判断は個人の状態によって異なります。健診で脂質の異常を指摘された方、治療中の方は自己判断せず、医師や管理栄養士にご相談ください。

目次

結論|「体に悪いか」を左右するのは、グラスフェッドかどうかより量

グラスフェッドバターをめぐる情報は、きれいに二極化しています。推す側は「最強のスーパーフード」「食べる美容液」と書き、心配する側は「動物性脂肪だから動脈硬化」と書く。どちらも数字を出さないので、読んだ側は判断できません。

そこで、SNSでよく見る言い方を、実測データと突き合わせてみます。

表1:よく見る主張と、論文で数えた実測
よく見る言い方 論文で数えるとどうなるか 出典
CLAが普通のバターよりずっと多い 平均で1.44倍(総脂肪酸の0.54%→0.78%)。バター10gに換算すると約45mg→約65mg Pustjens, Foods 2017
オメガ3が圧倒的に豊富 平均で1.26倍。10g換算の差は約9mg。n-3の1日の目安量(成人で2.0g前後)の0.45% Pustjens, Foods 2017
トランス脂肪酸を避けられる 逆。天然由来のトランスC18:1はグラスフェッドの方が多かった(2.89%→3.72%) Pustjens, Foods 2017
バターは体に悪い 14g/日あたり総死亡RR1.01、心血管RR1.00、2型糖尿病RR0.96。明確な有害性は示されていない Pimpin, PLoS One 2016
良質な脂だから量は気にしなくていい 1日50gを4週間とると、LDLの変化量がほかの油より約15mg/dL大きかった Khaw, BMJ Open 2018

この表がこの記事の骨格です。成分の差は小さく、量の影響は大きい。だから「グラスフェッドだから安心して大量に使う」がいちばん筋の悪い選び方になります。

グラスフェッドでも飽和脂肪酸は多い|普通のバターとの共通点のほうが大きい

成分の違いを見る前に、共通点を確認しておきます。ここが抜けると、以降の数字を読み違えます。

  • 主成分は乳脂肪です。グラスフェッドでも、原料が牛乳であることに変わりはありません
  • 脂肪酸のおよそ半分は飽和脂肪酸です。これは飼料で大きく変わる部分ではありません
  • エネルギーは高い食品です。バター10gで約75kcal
  • 前項で見た差(CLA・オメガ3・トランス)は、いずれも総脂肪酸の1%未満から数%の範囲の話です

言い換えると、グラスフェッドと普通のバターの違いは脂肪酸組成の端のほうで起きていて、量の面での主役である飽和脂肪酸は、どちらも同じように多いということです。この記事でこのあと扱うLDLの話は、その主役のほうに関係します。

成分比較|CLA・オメガ3は「何倍」ではなく「何mg」違うのか

ここは推測ではなく実測データがあります。オランダで行われた研究で、市販されているバター54点(通常のバター28点・オーガニック14点・グラスフェッド12点)の脂肪酸組成が測定されています(Pustjens, Foods 2017)。

図解1:市販バター54点の実測(総脂肪酸に占める%・平均) 通常28点・グラスフェッド12点/すべて p<0.001(Pustjens, Foods 2017) 通常のバター グラスフェッド CLA(共役リノール酸) 0.54% 0.78%(1.44倍) α-リノレン酸(オメガ3) 0.43% 0.54%(1.26倍) 天然由来のトランス脂肪酸 (トランスC18:1) 2.89% 3.72%(1.29倍・こちらは多い) この平均値をバター10gに当てはめて試算すると CLAは45mg→65mg(差20mg)、オメガ3は36mg→45mg(差9mg)。個々の商品の含有量を保証する値ではありません

以下の「10gあたり何mg」は、この研究の平均脂肪酸比率を、脂質8.3gを含むバター10gに当てはめた試算値です。商品・季節・飼料・製法でばらつきがあり、グラスフェッド群のCLAは0.78±0.36%と分散も大きいので、個別商品の含有量を示すものではありません。

CLAは平均1.44倍|「5倍多い」はどこから来たのか

ネットで最も多く見かける数字が「グラスフェッドバターはCLAが5倍」です。しかし市販品を実測した値は0.54%→0.78%、つまり平均1.44倍でした。10g換算では約45mg→約65mg、差にして約20mgです。

では「5倍」がまったくの嘘かというと、そうとも言い切れません。飼料条件を実験的に振り切った比較では、もっと大きな差が出ます。米国で生乳1,163検体を3年間分析した調査では、CLAは牧草乳0.043 g/100g、通常乳0.019 g/100gで2.3倍の差がありました(Benbrook, Food Sci Nutr 2018)。ただしこれは生乳の比較であって、バターの含有量ではありません。牧草中心の飼養で原料乳の脂肪酸構成が変わることの裏づけとして読むべき研究です。

まとめると、「5倍」は条件を振り切った研究環境での値か、あるいは特定の資料の数字が独り歩きしたものです。店頭で買える製品を並べて測ると、差は1.4〜2.3倍の範囲に収まります。

オメガ3の差は10gで約9mg|1日の目安量の0.45%

「オメガ3が豊富」も同じ構造です。α-リノレン酸は0.43%→0.54%で平均1.26倍。10g換算では通常バターで約36mg、グラスフェッドで約45mg、差は約9mgです。

n-3系脂肪酸の1日の目安量は成人でおおむね2.0g前後(性別・年齢で異なります/日本人の食事摂取基準2025年版)。9mgはその0.45%にあたります。

これは「グラスフェッドバターがダメ」という話ではありません。オメガ3を増やしたいなら、バターの種類を変えるより魚などの供給源を足すほうが桁が違う、という話です。バターは風味と調理性のために使うもので、栄養素の供給源として設計されたものではありません。

天然由来のトランス脂肪酸は、グラスフェッドの方が多かった

ここは推している側もあまり触れない部分です。実測ではトランスC18:1が通常バター2.89%に対してグラスフェッド3.72%と、グラスフェッドの方が1.29倍多く含まれていました。

これは異常なことではありません。反芻動物の胃の中では、草に含まれる不飽和脂肪酸が微生物によって水素化される過程で、バクセン酸などの天然のトランス脂肪酸が生じます。草をよく食べた牛ほど、この天然トランス脂肪酸が増えます。CLAが増えるのと同じ仕組みの裏側です。

ただし、これを「だから危険」という結論につなげることはできません。天然由来のトランス脂肪酸と、部分水素添加油に由来する工業的なトランス脂肪酸で健康影響が同じかどうかは、この測定研究だけからは判断できませんし、多くの国の規制も工業由来を対象にしています。ここで言えるのは「グラスフェッドならトランス脂肪酸を避けられる」という言い方が、実測とは逆向きだという一点だけです。

ビタミンK2は、今回の資料では比較できませんでした

「グラスフェッドバターはビタミンK2が豊富」もよく見る主張ですが、今回集めた9つの資料の中に、グラスフェッドバターと通常バターのビタミンK2含有量を同一条件で比較した測定データはありませんでした。販売サイトや個人ブログには数値が並んでいますが、出典をたどれるものが見つからなかったため、この記事では扱いません。「確認できなかった」とだけ書いておきます。

期待されている「効果」を1つずつ検証する

「グラスフェッドバター 効果」で検索したときに出てくる主張を、今回の資料で確認できるかどうかで判定しました。「効果がある/ない」の二択ではなく、成分差は確認できるのか、実用量で差が出るのか、健康アウトカムまで示せているのかを分けています。

表2:よく挙げられる効果と、今回の資料での判定
主張 判定
通常バターよりCLAが多い 成分差は確認できる(平均1.44倍)。ただし10g換算の差は約20mg
通常バターよりオメガ3が多い 成分差は確認できる(平均1.26倍)。ただし10g換算の差は約9mg
食べれば痩せる バターとしての根拠は確認できない
CLAで脂肪が燃える サプリを用いた試験では小さな体脂肪減少の報告があるが、バターから届く量ではない
普通のバターよりLDLが上がりにくい グラスフェッドと通常を直接比較した介入試験は確認できない
心血管疾患を予防する 根拠は確認できない
ビタミンK2が豊富 今回の9資料では比較データを確認できない
バターコーヒーで脂肪が燃える バターコーヒー単独の効果を示した試験は確認できない
植物油より健康的 油の種類と置き換え先によるため一括して断定できない(後述の置き換え研究を参照)

ダイエット効果|CLAは、バターの量では届かない

グラスフェッドバターを推す文脈でほぼ必ず出てくるのがCLA(共役リノール酸)です。「脂肪の代謝を活性化する」という説明を、私自身も2021年の元記事に書いていました。今回、根拠を数えます。

CLAサプリメントの効果を調べた18試験のメタ解析では、CLAの中央値3.2g/日で、プラセボと比べた体脂肪の減少が週あたり0.09±0.08kgと報告されています(Whigham, Am J Clin Nutr 2007、p<0.001)。

問題は量です。グラスフェッドバター10gから試算されるCLAは約65mg。3.2gに到達するには1日およそ500gのバターが必要で、用量が約50倍違います。バター1箱が200gなので、毎日2箱半という計算になります。当然、その時点で飽和脂肪酸は目標量を大きく超えます。

さらに、CLAをサプリで増やす方向にも報告があります。腹部肥満の男性60人にCLAを3.4g/日、12週間投与した二重盲検試験では、t10c12という型のCLAでインスリン抵抗性が19%悪化(p<0.01)、血糖が4%上昇(p<0.001)、HDLコレステロールが4%低下(p<0.01)しました(Risérus, Diabetes Care 2002)。

つまり、CLAはグラスフェッドバターを選ぶ理由にはなりません。バターから届く量では試験で使われた量に遠く及ばず、届く量をサプリで摂ると別の指標が悪化した報告がある、というのが数字から出る答えです。

バターコーヒーとセットで語られるMCTオイルについても、期待と実際にはずれがあります。こちらは別記事で論文を並べて検証しています。

「グラスフェッドならLDLが上がりにくい」は、確認できていない

この記事でいちばん強調しておきたい空白です。グラスフェッドバターと通常バターを直接比較して、LDLコレステロールや心血管の指標がどう違うかを見た介入試験は、見つかりませんでした。

これは「グラスフェッドは上がりやすい」という意味でもありません。上がりにくいという主張も、上がりやすいという主張も、現時点では根拠がないということです。次の章で扱うLDLの試験は、いずれもバターの種類ではなく量を動かしたものです。

バターとLDLコレステロール|介入試験でどこまで分かっているか

ここからが本題です。「グラスフェッドバターは体に悪いのか」と検索する人が本当に気にしているのは、たいていの場合健康診断の数字です。良質な脂だと聞いて始めたのに、LDLが引っかかったらどうしよう、という不安です。

この不安には、段階に分けて答えるのが正確です。「バターを食べると病気になる」という一本線ではなく、どの段階までが介入試験で示され、どこから先が観察研究の示唆にとどまるのかを分けます。

図解2:どの段階まで研究で示せているか ①1日の量 バター何g使うか 草かどうかは無関係 ②飽和脂肪酸 バター重量の約50% 10gで約5g ③LDLの変化 50g・4週で他の油と 約15〜16mg/dLの差 ④動脈硬化 置き換え研究で 差が出る段階 ⑤発症 個人差が大きい ①〜③=介入試験で確認(Khaw, BMJ Open 2018/n=91・4週・比較した油との群間差) ③〜④=観察研究による示唆(Li, JACC 2015/127,536人・24〜30年・因果の証明ではない) バターそのものと死亡・心血管の明確な関連は示されず(Pimpin, PLoS One 2016/636,151人) ここが空白:グラスフェッドバターだけを対象にした比較試験 「グラスフェッドならLDLが上がりにくい」を検証した介入試験は見つかりません。 上がりにくいという主張も、上がりやすいという主張も、現時点では根拠がありません。

1日50gの4週間比較試験|バター群は、ほかの油よりLDLの変化量が大きかった

いちばん直接的なデータが、英国で行われた無作為化比較試験です。健康な男女が、ココナッツ油・オリーブ油・バターのいずれかを1日50g、4週間とるように割り付けられました(Khaw, BMJ Open 2018/最終解析91人)。

結果は、LDLコレステロールの変化量の群間差として報告されています。

  • バター群 − ココナッツ油群:+0.42 mmol/L(95%信頼区間0.19〜0.65、p<0.0001)=約16mg/dL
  • バター群 − オリーブ油群:+0.38 mmol/L(0.16〜0.60、p<0.0001)=約15mg/dL
  • ココナッツ油群 − オリーブ油群:-0.04 mmol/L(-0.27〜0.19、p=0.74)=差なし

ここは読み方に注意が必要です。この16mg/dLは「バターを50g食べたらLDLが16mg/dL上がる」という前後の変化ではなく、比較した油の群と比べたときの変化量の差です。バター群単独で何mg/dL動いたかを、この数字から直接読み取ることはできません。

それでも実務的に重要なのは、4週間という短さで、健診の判定が変わりうる大きさの差が油の種類によって生じていることです。「良質な脂だから量は気にしなくていい」が成立しないのは、この一点です。

スタチンを自己中断した男性で、LDLが49%上昇した症例報告(n=1)

もう少し目を引く報告もあります。米国の脂質専門誌に載った症例報告で、59歳の男性がバターコーヒーを1日1〜2杯、食事に取り入れた経過が記録されています(Toklu, J Clin Lipidol 2015)。

  • 総コレステロール:215 → 285 mg/dL(+33%
  • LDLコレステロール:156 → 232 mg/dL(+49%
  • HDLコレステロール:44 → 48 mg/dL(+9%)

数字だけ見ると衝撃的ですが、この報告をバターコーヒーの効果として一般化することはできません。この男性はもともと脂質異常症でスタチン(ロスバスタチン)を処方されており、バターコーヒーを始めるのと同時に、その薬を自己判断で中止しています。LDLの上昇には「バターコーヒーを足した」と「薬をやめた」の2つが同時に効いており、寄与を切り分けられません。しかもn=1で、掲載形態も抄録に近い短報です。前項の無作為化比較試験と同じ強さの証拠として並べてはいけません。

それでも紹介する価値があるのは、同じ形の話がX上でも見つかるからです。「毎朝バターコーヒー飲んでたけど健康診断受けたら脂質異常で引っかかったのでやめた」というような書き込みは、数は多くないものの実在します。バターコーヒーは1杯あたりバター10〜15gで、それが毎日となるため、食事全体に対する飽和脂肪酸の上乗せとしては小さくありません。

健診結果は、LDLだけで自己判断しない

臨床検査技師は検体と数値を扱う職種で、患者さんに直接指導する立場ではありません。ですからここでは「こう食べなさい」ではなく、数値を見るときに何が抜け落ちやすいかだけ書きます。

脂質の評価は、LDLコレステロール単独ではなく、non-HDLコレステロール(総コレステロール − HDL)、中性脂肪、前回値からの変化、既往歴、服薬状況を合わせて医師が総合的に判断します。とくに中性脂肪が高い人ではLDLの計算値がずれることがあり、non-HDLのほうが実像に近い場合があります。

また、比較するなら条件をそろえることです。採血前の絶食時間、直前の飲酒、体重の増減で数値は動きます。「バターコーヒーを始めたらLDLが上がった」と考えるなら、少なくとも3か月あけて、条件をそろえた再検査の結果を持って相談するのが現実的です。

バターと死亡・心血管疾患|636,151人の長期観察研究では

では「バター=悪」と書いてしまっていいかというと、それも実測と合いません。

バターの摂取量と健康アウトカムの関係を調べた研究を集めたメタ解析では、9論文・15コホート・636,151人・650万人年が対象になりました。死亡28,271件、心血管疾患の新規発症9,783件、糖尿病の新規発症23,954件が含まれます(Pimpin, PLoS One 2016)。

バター14g/日(大さじ1杯強)あたりの相対リスクは次のとおりです。

  • 総死亡:RR 1.01(95%信頼区間1.00〜1.03、p=0.045)=統計的には境界的に有意
  • 心血管疾患:RR 1.00(0.98〜1.02、p=0.704)=明確な関連なし
  • 冠動脈疾患:RR 0.99(0.96〜1.03)
  • 脳卒中:RR 1.01(0.98〜1.03)
  • 2型糖尿病:RR 0.96(0.93〜0.99、p=0.021)=わずかに逆相関

ここで大事なのは、この研究は無作為化比較試験ではなく、観察研究をまとめたものだという点です。「バターは安全だと証明された」とは読めませんし、2型糖尿病のRR0.96も予防効果を示すものではありません。論文自身も、長期の介入試験を確認できなかったと述べています。

それでも、「LDLの変化量には差が出る」と「通常の摂取量では死亡・心血管との明確な関連が示されていない」の2つは、矛盾しません。前者は1日50gという多めの量を4週間集中してとった介入試験、後者は普段の食生活での摂取量(1日14g前後)を長期に観察した研究です。量が違えば見えるものも違う、という当たり前のことが起きています。

減らした分を、何に置き換えるかで差がつく

飽和脂肪酸の議論でいちばん実務的に役立つのが、置き換えの研究です。

看護師健康調査と医療従事者追跡研究の参加者、女性84,628人・男性42,908人を24〜30年追跡し、冠動脈疾患7,667件を解析したデータがあります(Li, J Am Coll Cardiol 2015)。飽和脂肪酸から摂っているエネルギーの5%を別の栄養素に置き換えたとき、冠動脈疾患のリスクは次のように低い関連を示しました。

表3:飽和脂肪酸のエネルギー5%を置き換えたときの冠動脈疾患リスク(観察研究)
置き換える先 ハザード比 95%信頼区間 具体例
多価不飽和脂肪酸 0.75 0.67〜0.84 植物油、青魚、くるみ
一価不飽和脂肪酸 0.85 0.74〜0.97 オリーブ油、菜種油、アボカド
全粒穀物由来の糖質 0.91 0.85〜0.98 玄米、全粒粉パン、オートミール

いちばん低かったのは多価不飽和脂肪酸への置き換えでした。ここで注意したいのは、この研究が比べているのは「バターを減らすかどうか」ではなく「減らした分を何で埋めるか」だという点です。バターをやめて代わりに菓子パンを食べれば、置き換え先が精製糖質になるので同じ結果にはなりません。観察研究なので因果を示すものではありませんが、「減らす」だけを目標にしないという考え方は、実際に食事を組むうえで役に立ちます。

SNSでは「植物油は毒だからグラスフェッドバターかギーにしろ」という主張をよく見かけますが、油脂を一括して有害とする根拠はなく、種類と量と置き換え先で評価するしかありません。少なくとも冠動脈疾患について長期追跡されたこのデータは、その主張とは逆の方向を示しています。

1日何グラムと考えるか|31gは「安全上限」ではありません

ここまでの話を、量の感覚に落とします。ただし先に強調しておきます。

飽和脂肪酸の目標量は、バターだけに割り当てられた枠ではありません。肉・乳製品・菓子・加工食品を含む、1日の食事全体の合計に対する目標です。このあとの「バター換算31g」は、枠を全部バターに使ったと仮定した場合の理論値であって、「31gまでなら安全」という意味ではありません。

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、飽和脂肪酸の目標量は1日のエネルギーの7%以下とされています。2,000kcalの人なら140kcal、脂質1gが9kcalなので約15.6gです。

有塩バターの飽和脂肪酸は、重量100gあたりおよそ50g(日本食品標準成分表)。ここからバターの量に直したものが次の表です。

表4:バターの量と、飽和脂肪酸の1日の目標量(2,000kcal=15.6g)に占める割合
1日のバター量 飽和脂肪酸 目標量に占める割合 目安
5g 約2.5g 16% トースト1枚に塗る量
10g 約5.0g 32% バターコーヒー控えめ1杯
15g 約7.6g 49% バターコーヒー標準1杯=これだけで目標量の半分
20g 約10.1g 65% コーヒー1杯+トースト1枚
31g 約15.6g 100% バターだけで目標量に到達(=ほかの食品の分が残らない)
50g 約25.2g 162% Khawの試験と同じ量

見てほしいのは15gの行です。バターコーヒーを標準的なレシピで1杯飲むと、それだけで1日の飽和脂肪酸の目標量の半分を使います。残りの半分で、牛乳・チーズ・肉・菓子・パンを含む1日の食事すべてをまかなうことになります。現実には、かなり窮屈な配分です。

私自身の運用は「バターコーヒーを飲む日は、その日の他の乳製品と肉を減らす」です。足し算ではなく置き換えにする——これが前章の置き換え研究とも整合する考え方だと思っています。

結局、グラスフェッドと普通のバター、どちらを選べばいいのか

ここまでの数字から出る答えは、そっけないものです。

  • 健康への影響だけを理由に、高価なグラスフェッドへ買い替える必要性は、今回の資料からは示せません。成分差は確認できますが、1回に使う量に直すと差が小さく、健康アウトカムを比較した試験もありません
  • 一方で、味や香り、飼育方針、ブランドで選ぶことに問題はありません。実際「草っぽい香りが好き」「クセが強くて合わない」と好みは割れています
  • 通常バターから買い替えても、飽和脂肪酸の問題は消えません。枠の計算は同じです
  • したがって、判断の順番は「どちらを買うか」より先に「1日どれだけ使うか」になります

買うのであれば、先に1日の量を決めてから買うことをおすすめします。大きな塊で安く買うと、消費のために量が増えるのが人間です。

健診でLDLが高かった人は、自己判断で続けない

ここまでは平均の話です。次に当てはまる方は、記事の数字だけで続ける/やめるを決めず、医師や管理栄養士に相談してください。

  • 健診でLDLコレステロールまたはnon-HDLコレステロールの異常を指摘された
  • 脂質異常症の治療中である
  • スタチンなどの薬を自己判断で中断している(Toklu の症例報告と同じ構図です。いちばん避けたい状態です)
  • バターコーヒーを始めた前後で、検査値が大きく変化した
  • 家族性高コレステロール血症を指摘されたことがある、または家族に若くして心筋梗塞・狭心症になった人がいる
  • 肝機能の数値を指摘されている(脂肪肝がある場合、見るべき順番が変わります。脂肪肝にいい食べ物・肝臓に悪い食べ物ランキングで整理しています)

旧記事の記述について、訂正します

この記事の以前のバージョンには「私は10kg痩せたあとに、更に完全無欠コーヒーで3kg痩せました」「結論:全く悪くありません」と書いていました。今回、手元のデータを確認して訂正します。

  • 体組成計アプリに残っている記録は、2020年11月から2021年2月にかけて82.05kgから約72.4kg(-9.65kg)という変化です
  • 同時期に食事の変更が複数あり、バターコーヒー単独の寄与を切り分けられるデータはありません。当時の脂質検査の値も記録していませんでした
  • したがって「バターコーヒーで3kg痩せた」は体感であり、根拠として提示できるものではありません
  • そもそも個人の体重変化は、その食品の安全性の証明にはなりません

減量そのものの実データは別記事で全部出しています → ダイエット成功の中身を全部出す|82.05kg→72.4kgの実データを臨床検査技師が論文で解剖する

なお、3か月続けた体感として、朝食をバターコーヒーに置き換えると昼まで空腹を感じにくかったのは事実です。ただしこれは朝食を固形物から液体の高脂質に置き換えたことによるもので、グラスフェッドかどうかとは関係がありません。普通のバターでも同じことが起きます。

まとめ|草かどうかではなく、量で決まる

  • グラスフェッドバターが普通のバターより特別に体に悪いことを示した研究は見当たらない
  • 同時に「体にいい」も確認できない。実測でCLAは平均1.44倍、オメガ3は平均1.26倍(Pustjens, Foods 2017/市販54点)
  • 10gに換算するとオメガ3の差は約9mg。1日の目安量2.0g前後の0.45%にすぎない
  • むしろ天然由来のトランス脂肪酸はグラスフェッドの方が多かった(2.89%→3.72%)。ただし工業由来と同じ影響かは判断できない
  • グラスフェッドと通常バターを直接比較した介入試験は見つからない。「上がりにくい」も「上がりやすい」も根拠なし
  • バター1日50gを4週間とった試験では、LDLの変化量がオリーブ油群より約15mg/dL大きかった(Khaw, BMJ Open 2018/n=91・群間差)
  • LDLが49%上昇した症例報告はスタチン自己中断が同時に起きたn=1で、一般化できない(Toklu, J Clin Lipidol 2015)
  • 通常の摂取量では、バターと死亡・心血管の明確な関連は示されていない(Pimpin, PLoS One 2016/636,151人・観察研究)
  • 差がつくのは減らすことより置き換え先。多価不飽和脂肪酸へ5%置き換えでハザード比0.75(Li, JACC 2015)
  • CLAでの減量はバターの量では届かない。試験の中央値3.2g/日にはバター約500g必要(Whigham, AJCN 2007)
  • 飽和脂肪酸の目標量は7%=2,000kcalで15.6g。バター換算31gは枠を全部バターに使った理論値で、安全上限ではない

「良質な脂だから安心」という言葉がいちばん危ないのは、それが量の判断を止めてしまうからです。グラスフェッドバターは、風味と、少しだけ違う脂肪酸組成を持ったおいしいバターです。それ以上でも以下でもありません。量を決めて使うのであれば、種類で悩む必要はほとんどないはずです。

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よくある質問

Q. グラスフェッドバターは普通のバターよりLDLコレステロールが上がりにくいですか?
A. 確認できていません。グラスフェッドバターと通常バターを直接比較して、LDLへの影響の差を見た介入研究は今回見つかりませんでした。グラスフェッドでも飽和脂肪酸を多く含むため、種類ではなく食事全体での摂取量を見るのが現実的です。

Q. バターコーヒーを毎日飲むと健康診断で引っかかりますか?
A. 全員が引っかかるとは言えません。一方で、バター50gを用いた4週間の比較試験では、LDLの変化量がほかの油の群より約15〜16mg/dL大きくなりました(Khaw, BMJ Open 2018)。またn=1の症例報告では、スタチンを自己中断した男性でLDLが49%上昇しています(Toklu, J Clin Lipidol 2015)。開始前後の検査値を確認し、異常があれば自己判断で継続しないことをおすすめします。

Q. グラスフェッドバターは1日何グラムまでなら大丈夫ですか?
A. 一律の安全量は決められません。2,000kcalで飽和脂肪酸7%は約15.6gですが、これは肉・乳製品・菓子などを合算した1日全体の目標量です。バター換算で約31gという数字は、この枠を全部バターに使ったと仮定した理論値であって、安全上限ではありません。バターコーヒー1杯(15g)で目標量の約半分を使う、という感覚で組み立ててください。

Q. グラスフェッドバターのCLAやオメガ3にはダイエット効果がありますか?
A. バターとしての根拠は確認できません。平均含有率は通常バターより高いものの、10g換算でCLAの差は約20mg、オメガ3の差は約9mgです。CLAの試験で使われた量は中央値3.2g/日(Whigham, Am J Clin Nutr 2007)で、バターで摂るには約500g必要になります。通常の食べ方では届きません。

Q. 健診でLDLが高かったら、グラスフェッドバターをやめるべきですか?
A. この記事だけで中止・継続を決めず、摂取量・ほかの食事内容・服薬・既往歴・前回値を含めて医師にご相談ください。判断材料としては、飽和脂肪酸を減らすこと自体より減らした分を何で埋めるかのほうが冠動脈疾患のリスクと関連していました(多価不飽和脂肪酸への5%置き換えでハザード比0.75/Li, JACC 2015)。なお、脂質異常症の薬を自己判断で中断するのは避けてください。

参考文献

  1. Pustjens AM, Boerrigter-Eenling R, Koot AH, Rozijn M, van Ruth SM. Characterization of retail conventional, organic, and grass full-fat butters by their fat contents, free fatty acid contents, and triglyceride and fatty acid profiling. Foods. 2017;6(4):26. PMC
  2. Benbrook CM, Davis DR, Heins BJ, et al. Enhancing the fatty acid profile of milk through forage-based rations, with nutrition modeling of diet outcomes. Food Sci Nutr. 2018;6(3):681-700. Wiley Online Library
  3. Khaw KT, Sharp SJ, Finikarides L, et al. Randomised trial of coconut oil, olive oil or butter on blood lipids and other cardiovascular risk factors in healthy men and women. BMJ Open. 2018;8(3):e020167. PubMed
  4. Toklu A, et al. Rise in serum lipids after dietary incorporation of “bulletproof coffee”. J Clin Lipidol. 2015;9(3):462.(症例報告・n=1) Journal of Clinical Lipidology
  5. Pimpin L, Wu JH, Haskelberg H, Del Gobbo L, Mozaffarian D. Is butter back? A systematic review and meta-analysis of butter consumption and risk of cardiovascular disease, diabetes, and total mortality. PLoS One. 2016;11(6):e0158118. PLOS ONE
  6. Li Y, Hruby A, Bernstein AM, et al. Saturated fats compared with unsaturated fats and sources of carbohydrates in relation to risk of coronary heart disease: a prospective cohort study. J Am Coll Cardiol. 2015;66(14):1538-48. PubMed
  7. Whigham LD, Watras AC, Schoeller DA. Efficacy of conjugated linoleic acid for reducing fat mass: a meta-analysis in humans. Am J Clin Nutr. 2007;85(5):1203-11. PubMed
  8. Risérus U, Arner P, Brismar K, Vessby B. Treatment with dietary trans10cis12 conjugated linoleic acid causes isomer-specific insulin resistance in obese men with the metabolic syndrome. Diabetes Care. 2002;25(9):1516-21. PubMed
  9. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(脂質・飽和脂肪酸の目標量). 厚生労働省

この記事を書いた人

臨床ブロガー 臨床検査技師/18年・88kg→65kg

検査値を通して人の体を見てきました。論文を確認し、自分の実測とは分けて書いています。医師・管理栄養士ではなく、診断・治療・服薬の判断は行いません。

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この記事を書いた人

臨床検査技師。専門は生化学検査。健診センターのデータ業務、治験コーディネーター(CRC)、総合病院、公立病院の経営推進課を経て、現在はWEBマーケティングが本業。自身が20回のダイエット失敗のあと88kgから65kgへ。論文を読んで気になったものを自分の体で試し、体重・腹囲・血液検査・体組成という数値で確かめた記録を書いています。効くものは効くと、効かないものは効かないと書きます。広告主から記事内容の指定を受けることはありません。

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