納豆にはちみつを加えると甘みで食べやすくなりますが、「2つを組み合わせると健康効果が強くなる」ことを確かめた研究は見つかりません。納豆の研究は納豆単独、ナットウキナーゼの研究はサプリメント、はちみつの研究ははちみつ単独で行われたもので、どれも「納豆はちみつ」を調べたものではないからです。
この記事では、臨床検査技師として毎日AST・ALT・γ-GTPや凝固検査を見ている立場から、実際の論文の数字を挙げて「どこまで言えて、どこから言えないのか」を整理します。合わせて、量の目安と、食べないほうがよい人もはっきり書きます。
この記事でわかること
- 納豆はちみつで期待できること・確認されていないことの線引き
- はちみつを足すと栄養とエネルギーがどれだけ増えるのか、実際の数字
- ポリアミンとナットウキナーゼの研究が、実際には何を測った研究なのか
- AST・ALT・γ-GTP・中性脂肪・HbA1cを食品ひとつで語れない理由
- ワルファリン服用中・1歳未満・大豆アレルギーなど、食べてはいけない人
- 「糸が固くなる」「甘すぎる」を避ける、量と混ぜ方のコツ
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。納豆とはちみつを組み合わせた健康効果を直接検証した臨床研究は確認できません。紹介する研究の多くは納豆・ナットウキナーゼ・はちみつを個別に調べたもので、この食べ方そのものの効果を示すものではありません。治療中の病気がある方、薬を服用中の方は、自己判断で食事を変えず医師・薬剤師にご相談ください。
納豆はちみつの効果|先に結論
結論から書きます。納豆はちみつは「健康食品」として特別視するものではなく、納豆を食べやすくするための味付けの一種と考えるのが実態に合っています。甘みが加わるぶん、糖質とエネルギーは確実に増えます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 期待できること | 納豆の匂いと苦みが和らぎ、食べやすくなる/納豆由来のたんぱく質・食物繊維・ビタミンKを摂れる/付属のタレや砂糖の代わりに少量使える |
| 確認されていないこと | 組み合わせによる相乗効果/血栓症の予防/肝機能値やHbA1cの改善/若返り・寿命が延びること |
| 注意すること | はちみつのぶん糖質とエネルギーが増える/ワルファリン服用中は納豆を自己判断で食べない/1歳未満にはちみつを与えない/大豆アレルギーがある人は納豆を食べない |
「効果がない」という意味ではありません。納豆そのものには後述するとおり研究の蓄積があります。ただしそれは納豆の研究であって、はちみつを足したことによる上乗せを示した研究ではない、という区別が必要です。
納豆にはちみつを入れると何が変わるのか
味と粘りは変わる
実際に試した人の声で多いのは、甘みで匂いが和らぐという評価と、「糸が水飴のように固くなる」という食感の変化です。はちみつは水分が少なく糖度が高いため、納豆の糸を引く成分(ポリグルタミン酸)の粘りが強く出ます。少量なら「みたらし団子のよう」と表現されますが、入れすぎると粘りが重くなります。後述するとおり、小さじ1/2程度から試すのが無難です。
栄養とエネルギーは足し算で増える
数字で見ると分かりやすいので、日本食品標準成分表の値で並べます。
| 組み合わせ | エネルギー | たんぱく質 | 食物繊維 | 糖質(利用可能炭水化物) | ビタミンK |
|---|---|---|---|---|---|
| 納豆1パック(45g)のみ | 約83kcal | 約7.4g | 約3.0g | 約0.3g | 約270µg |
| +はちみつ小さじ1/2(約3.5g) | 約94kcal | 約7.4g | 約3.0g | 約2.9g | 約270µg |
| +はちみつ小さじ1杯(約7g) | 約106kcal | 約7.4g | 約3.0g | 約5.6g | 約270µg |
はちみつは100gあたり利用可能炭水化物が75.3g、エネルギーが329kcalです。小さじ1/2なら糖質は約2.6g、エネルギーは約11kcalの増加にとどまります。角砂糖1個(約3g)とほぼ同じと考えてください。付属のタレにも砂糖と食塩が含まれているので、タレの代わりに使うのであれば糖質の増え方はさらに小さくなります。
糖の種類としては、はちみつは果糖とぶどう糖が主体です。果糖は肝臓で優先的に代謝される性質があり、清涼飲料などで大量に摂ると問題になります。この点は果糖ぶどう糖液糖の記事で詳しく書きました。ただし小さじ1/2という量は、飲料1本に含まれる糖(20〜50g)とは桁が違います。量で考えてください。
納豆はちみつの作り方と量の目安
研究で「この量が効く」と決まっているわけではありません。甘みを付けながら糖質の追加を抑えるための、実用上の目安として読んでください。
- 量は小さじ1/2(約3.5g)から。甘さが足りなければ少しずつ増やす。最初から大さじで入れると糸が固くなり、甘さも強く出ます。
- 付属のタレは使わず、はちみつだけにする。両方入れると甘じょっぱさが強く、糖質も重なります。
- からしは抜くか、ごく少量に。甘みと辛みがぶつかって食べにくくなるという声が多い部分です。
- 先に納豆をよく混ぜてから、最後にはちみつを加える。先に入れると粘りが立ち上がらず、混ぜにくくなります。
- 甘さが苦手なら、豆腐に乗せる・刻んだ梅を足す・青のりを振る。甘みが分散して食べやすくなります。
加熱については、ナットウキナーゼが酵素であるため熱に弱いという性質があります。活性をできるだけ保ちたい場合は、加熱調理を避けて少し冷ましたご飯に乗せる方法があります。ただし食べ方の違いで健康上の結果が変わることを確かめた臨床研究はありませんので、「熱いご飯に乗せたら無意味になる」というほどの話ではありません。
納豆に含まれる成分と、実際の研究で分かっていること
ポリアミン:血中濃度が上がることは示されている
納豆はポリアミン(スペルミジン・スペルミン)を多く含む食品として知られています。介入試験では、健康な男性10人が納豆を1日平均66.4gずつ2か月間食べたところ、血中スペルミン濃度が平均1.39倍に上昇しました(Soda, J Nutr Sci Vitaminol 2009)。ポリアミンの多い食品を除いた対照群7人では変化がありませんでした。
ただし、この研究が測ったのは血中濃度であって、病気の予防や検査値の改善ではありません。「血中濃度が上がった」から「体に良い効果があった」へは飛べません。
関連する観察研究として、イタリアで829人を約20年追跡した調査があり、食事から摂るスペルミジンの量が多い人ほど総死亡率が低いという関連が報告されています(Kiechl, Am J Clin Nutr 2018)。ただしこれは食事質問票にもとづく観察研究で、生活習慣などの影響を完全には除けません。納豆を食べれば寿命が延びると示した研究ではありません。
ナットウキナーゼ:研究の多くは納豆ではなくサプリメント
「納豆は血液をサラサラにする」と語られる根拠は、たいていナットウキナーゼの研究です。しかし内容を見ると、納豆そのものを食べた試験ではありません。
代表的な試験では、健康な若年男性12人を対象に二重盲検クロスオーバー法で、ナットウキナーゼ2,000FUを含むカプセルを1回だけ飲んでもらい、その後8時間の凝固・線溶に関する検査値を調べています(Kurosawa, Sci Rep 2015)。結果は、Dダイマーが摂取6時間後・8時間後に、FDPが4時間後に有意に上昇し、第VIII因子活性の低下、アンチトロンビン濃度の上昇、APTTの延長がみられました。ただし変化した値はすべて基準範囲内でした。
ここは検査を扱う立場からとくに補足しておきたいところです。Dダイマーは、血栓ができて溶かされる過程で上がる検査項目です。この試験では線溶反応の指標として解釈されていますが、「Dダイマーが上がった=血液がサラサラになった」という説明は正確ではありません。また基準範囲内という事実は、安心材料ではなく「臨床的に意味のある変化かどうかは分からない」という限界を示すものです。12人・単回投与という規模も踏まえる必要があります。
そして最も大事な点として、規格化されたカプセル2,000FUと、市販の納豆1パックに含まれる量が同じという保証はありません。「納豆を食べると6〜8時間後にDダイマーが上がる」と書くことはできません。
納豆そのものの疫学研究
納豆を含む発酵性大豆食品については、日本の大規模コホート研究があります。45〜74歳の約9万2千人を追跡した解析で、発酵性大豆食品(納豆・味噌)の摂取が多い群は総死亡が約10%低いという関連が報告されました(Katagiri, BMJ 2020)。大豆製品全体では関連が見られなかったのが特徴です。これも観察研究であり、納豆が死亡率を下げると証明したものではありません。
なお、納豆菌はヨーグルトの乳酸菌とは別の菌です。腸内環境の話をひとまとめにしがちですが、菌の種類ごとに報告されている内容は異なります。乳酸菌側の研究についてはガセリ菌の記事で整理しています。
はちみつに関する研究と、その限界
はちみつ側にも臨床試験をまとめた解析があります。18の試験・1,105人を統合した解析では、空腹時血糖が0.20mmol/L(約3.6mg/dL)、空腹時中性脂肪が0.13mmol/L(約11mg/dL)低下しました(Ahmed, Nutr Rev 2023)。未加工のはちみつではより大きな低下がみられたと報告されています。
ただし、この結果をそのまま納豆はちみつに当てはめることはできません。理由は3つあります。
- 比較条件がばらばら。はちみつを通常の食事に追加した試験、砂糖類と置き換えた試験などが混在しています。
- 使われた量が桁違い。試験で用いられた量は、納豆に小さじ1/2加える量よりはるかに多いのが一般的です。
- 確実性の評価が低い。著者ら自身、健康的な食事パターンの中で摂った場合に一部の指標が改善する「可能性」がある、という書き方をしています。未加工のはちみつに関する解析も試験数が限られ、確定的ではありません。
したがって「はちみつを足したから血糖値が下がる」とは書けません。あくまで砂糖の代わりに少量使う選択肢のひとつという位置づけです。
| 研究 | 何を調べたか | 対象 | 結果 | この記事で言えること |
|---|---|---|---|---|
| Soda, J Nutr Sci Vitaminol 2009 | 納豆の継続摂取と血中ポリアミン | 男性10人(対照7人)・2か月 | 血中スペルミンが平均1.39倍 | 血中濃度は上がる。健康への効果は測っていない |
| Kiechl, Am J Clin Nutr 2018 | 食事性スペルミジン摂取と死亡率 | 829人・約20年の観察 | 摂取量が多いほど死亡率が低い関連 | 関連であって因果ではない |
| Kurosawa, Sci Rep 2015 | ナットウキナーゼ単回投与と凝固・線溶 | 健康な男性12人・二重盲検 | Dダイマー等が変化。すべて基準範囲内 | サプリの試験。納豆にも当てはまるとは言えない |
| Katagiri, BMJ 2020 | 発酵性大豆食品と死亡率 | 約9万2千人の観察 | 摂取多い群で総死亡が約10%低い | 納豆を含む食習慣との関連 |
| Ahmed, Nutr Rev 2023 | はちみつと代謝指標 | 18試験・1,105人 | 空腹時血糖・中性脂肪がわずかに低下 | はちみつ単独・量も条件も異なる |
検査値から見た注意点
このサイトを書いているのは臨床検査技師です。だからこそはっきり書いておきたいのですが、納豆はちみつでAST・ALT・γ-GTP・中性脂肪・HbA1cがどう動くかを測定した研究はありません。食品ひとつと検査項目を一対一で結びつけることはできません。
| 検査項目 | 主に反映するもの | 納豆はちみつの直接研究 | 言える範囲 |
|---|---|---|---|
| AST・ALT | 肝細胞の障害。脂肪肝・飲酒・薬剤・運動・肝炎など多数の要因 | なし | 食品一品では評価できない |
| γ-GTP | 飲酒・胆道系の異常・薬剤 | なし | 同上。禁酒の影響のほうが大きい |
| 中性脂肪 | 直近の食事・飲酒・糖質の摂取量・採血前の絶食時間 | なし(はちみつ単独の解析はある) | はちみつを砂糖の代わりにする選択肢まで |
| HbA1c | 過去1〜2か月の平均血糖 | なし | 小さじ1/2の糖質量で語れる項目ではない |
| PT-INR | ワルファリンの効き具合。ビタミンK摂取の影響を強く受ける | — | 服用者は納豆を避ける(後述) |
健康診断で数値を指摘された場合は、食品で様子を見ずに医療機関を受診してください。数値そのものを動かしたい場合、食品を足すことより先に効くものがあります。脂肪肝と検査値の記事に、研究で差がはっきりついている順に整理しました。
食べないほうがよい人・注意が必要な人
ワルファリンを服用している人
これが最も重要です。ワルファリン服用中の人は、納豆を原則として避けるよう指示されます。理由は納豆に多く含まれるビタミンKが、ワルファリンの抗凝固作用を弱めるためです。糸引き納豆のビタミンK含有量は100gあたり約600µgで、1パックでも約270µgになります。さらに納豆菌は腸内でビタミンKを産生するため、影響が長く続きます。100g摂取後にトロンボテスト値への影響が3日以上続いたという報告もあります。
「血液をサラサラにする作用が重なって危ない」という説明を見かけますが、これは逆です。薬の効きが弱まる方向に働きます。少量なら大丈夫と自己判断せず、主治医または薬剤師の指示に従ってください。なお、DOACなど他の抗凝固薬はビタミンKとの関係が異なります。ただし基礎疾患があること自体は変わらないため、継続的に食べ始める前に医療者へ確認してください。
1歳未満の乳児
1歳未満の子どもにはちみつを与えてはいけません。乳児ボツリヌス症の危険があるためで、加熱しても防げません。納豆に混ぜた場合も同じです。離乳食で納豆を使うこと自体は問題ありませんが、はちみつは1歳を過ぎてからにしてください。
大豆アレルギーがある人
大豆アレルギーがある人は納豆を食べないでください。
糖尿病で治療中の人
はちみつも糖質を含みます。健康食品として無制限に追加せず、食事療法や薬の内容に合わせて主治医・管理栄養士に確認してください。糖質制限中の人も、小さじ1/2で約2.6gという数字を踏まえて量で管理してください。
食事制限を受けている人
腎臓病などでたんぱく質・カリウム・エネルギーの制限を受けている場合は、個別の食事指示を優先してください。
実際の味と、失敗しないコツ
実際に試した人の感想は、はっきり分かれています。肯定的な声は「みたらし団子みたいで意外とうまい」「においが和らいで食べやすくなった」「子どもがはちみつをかけないと納豆を食べない」といったもの。否定的な声は「糸が水飴みたいに固くなってびっくり」「甘くて香ばしいが舌触りが受け付けない」というものです。
分かれ目は量にあります。失敗している例の多くは入れすぎです。小さじ1/2から始めて、からしを抜き、納豆をよく混ぜてから最後にはちみつを加える。この3点で印象がかなり変わります。それでも甘さが気になるなら、豆腐に乗せてかさを増やす、刻んだ梅を足して酸味を入れる、といった調整が有効です。
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納豆やはちみつが自分の腸に効いたのかどうかは、実は測れます。腸内細菌の構成は食事で動くので、食べはじめる前と3か月後の2回測れば、一般論ではなく自分の菌がどう動いたかが分かります。多様性という指標と、その活かし方を論文7本で整理しました。
よくある質問
Q. 納豆はちみつは毎日食べても大丈夫ですか。
A. 健康な人が納豆1パックにはちみつ小さじ1/2程度を毎日食べることは、通常の食事の範囲です。ただしワルファリンを服用している場合は毎日どころか少量でも避けてください。増えるのは1日あたり約11kcal・糖質約2.6gなので、その分をどこかで調整すれば体重への影響はごくわずかです。
Q. ダイエット中でもはちみつを入れていいですか。
A. 量を守れば大きな問題にはなりません。小さじ1/2で約11kcalです。ただし「はちみつを入れると痩せる」という研究はありません。付属のタレや砂糖の代わりに使う置き換えとして考えてください。
Q. 血糖値は上がりますか。
A. はちみつは糖質なので、量に応じて血糖は上がります。小さじ1/2の約2.6gは角砂糖1個弱に相当する量です。はちみつ単独の研究で空腹時血糖がわずかに低下したという解析はありますが、条件も量も異なるため、この食べ方に当てはめることはできません。糖尿病で治療中の方は主治医に確認してください。
Q. 朝と夜、どちらに食べるのがいいですか。
A. 時間帯による違いを確かめた研究はありません。食べやすい時間で構いません。「夜に食べると血液がサラサラになる」といった説明を見かけますが、根拠となる比較試験はありません。
Q. 加熱してもいいですか。
A. ナットウキナーゼは酵素なので熱に弱い性質があります。活性を保ちたい場合は加熱を避け、少し冷ましたご飯に乗せる方法があります。ただし食べ方の違いで健康上の結果が変わることを示した研究はないため、料理に使うこと自体を否定するものではありません。
まとめ
納豆はちみつは、納豆を食べやすくするための味付けとしては十分に成立し、健康効果を上乗せする方法としては裏づけがない、というのが現時点の整理です。納豆自体には血中ポリアミンの上昇や、発酵性大豆食品と死亡率の関連といった報告がありますが、それは納豆の話であって、はちみつを足したことによる効果ではありません。
量は小さじ1/2から。ワルファリンを飲んでいる人と1歳未満の子どもは対象外。この2点さえ外さなければ、あとは好みで選べる食べ方です。検査値が気になっている場合は、食品を足すことより先に見直すべきものがあります。そちらを優先してください。
参考文献
- Soda K, et al. Long-term oral polyamine intake increases blood polyamine concentrations. J Nutr Sci Vitaminol. 2009;55(4):361-366. PubMed
- Kiechl S, et al. Higher spermidine intake is linked to lower mortality: a prospective population-based study. Am J Clin Nutr. 2018;108(2):371-380. PubMed
- Kurosawa Y, et al. A single-dose of oral nattokinase potentiates thrombolysis and anti-coagulation profiles. Sci Rep. 2015;5:11601. Scientific Reports
- Katagiri R, et al. Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study. BMJ. 2020;368:m34. PubMed
- Ahmed A, et al. Effect of honey on cardiometabolic risk factors: a systematic review and meta-analysis. Nutr Rev. 2023;81(7):758-774. PubMed
- 文部科学省 日本食品標準成分表(糸引き納豆・はちみつ). 食品成分データベース
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). ワルファリンと納豆・クロレラ・青汁について. PMDA
