スーパーの調味料売り場で、リンゴ酢と黒酢を両手に持って迷ったことがある人に向けて書いています。
この記事は、2021年に私が書いた「黒酢とリンゴ酢はどっちがダイエットに効果的?」を全部書き直したものです。当時の私は「黒酢はダイエット、リンゴ酢は美容」と結論づけていました。いま論文を読み直すと、その結論には根拠がありませんでした。
先に結論を3行で置きます。
この記事の結論
- どちらが上とは言えません。リンゴ酢と黒酢を直接比べた試験そのものがないからです
- 日本人でいちばん堅いデータは、実はリンゴ酢で取られています。12週間で体重が−1.2kg(1日15mL)、−1.9kg(1日30mL)でした
- やめて4週間で、元に戻りました。だから続けられる味と値段で選ぶのが正解です
この記事でわかること
- リンゴ酢と黒酢で何がどれだけ違うのか(そして違わないのか)
- 12週間飲んだ155人の体重が、%ではなく何kg動いたのか
- 1日どれくらい・いつ・どう飲むのが現実的か
- 売り場で見るべき表示と、買わなくていいもの
- 「リンゴ酢で7〜8kg痩せた」という有名な研究に起きたこと
私は臨床検査技師です。仕事は「測ること」そのもので、測り方の違う数字を並べて比べてはいけないという前提で毎日を過ごしています。この記事でいちばん役に立つのは、たぶんその部分です。
リンゴ酢と黒酢、ダイエットに効くのはどっちか
現時点では「どちらが上とは言えない」が正確な答えです。
お酢で体脂肪が動く仕組みとして研究されているのは、主成分である酢酸です。そして酢酸の量は、リンゴ酢も米黒酢も製品100g中でおおむね4〜5%と、大きくは変わりません。
ただし、ここで先回りして言い切ってはいけません。「酢酸の量が同じだから効果も同じ」とは書けないのです。リンゴ酢と黒酢を同じ酢酸量でそろえて、減量効果を直接比較したランダム化試験が見当たらないからです。原料の区分も、黒酢は穀物酢、リンゴ酢は果実酢と別のものです。
言えるのはここまでです。お酢の研究では酢酸が主要な候補成分と考えられているため、酸度が近い製品同士で、黒酢だけに大きな減量の優位性があるとは現時点では言えません。
| 項目 | リンゴ酢 | 黒酢(米黒酢) | ダイエットへの影響 |
|---|---|---|---|
| 分類 | 果実酢 | 穀物酢 | — |
| 酢酸(製品100g中) | おおむね4〜5% | おおむね4〜5% | 主成分の量に大きな差はない |
| アミノ酸 | 少ない | 多い傾向(製品差が大きい) | 多い=痩せる、を示した試験はない |
| その他の成分 | カリウム・ポリフェノールなど | — | 痩身効果とは結びつけられない |
| 味 | 果実の酸味で割りやすい | こくと独特の香り | 続けやすさが最大の差 |
| ヒトでの試験 | 日本人155人の二重盲検はリンゴ酢で実施 | 単独の試験は小規模で体重の有意差なし | 直接比較した試験はない |
酸度は製品ごとに違います。ラベルの表示を確認してください。
黒酢のアミノ酸は、ダイエットの決め手になるか
黒酢は玄米を原料に長期間熟成させるため、米酢よりアミノ酸が多い傾向があります。これは事実です。
ただし2つ注意があります。ひとつは、アミノ酸の組成は原料・熟成期間・製法でかなり変わり、製品ごとの差が大きいこと。「黒酢には必須アミノ酸が◯種類」という数字は、特定の商品の分析値であることがほとんどです。
もうひとつは量です。大さじ1杯(15mL)に含まれるアミノ酸は、1日のたんぱく質摂取量から見ればほぼ誤差です。そして「アミノ酸が多いから痩せやすい」ことを示した比較試験はありません。
黒酢だけを調べた試験は、何を示したか
濱町直史, 瀬戸佳代子, 矢澤一良. 黒酢含有食品の体脂肪及びエネルギー代謝へおよぼす影響. 日本補完代替医療学会誌 2014;11(1):67-.
プラセボ食品を対照とした二重盲検試験。黒酢含有食品を12週間、1日約10分の運動と併用して摂取。ヒップ周囲径に減少傾向がみられ、運動中のエネルギー消費が脂質利用寄りにシフトした。もともと体脂肪が多い人ほど減り方が大きかった。
注目したいのは、この試験では体重の有意差が出ていないことです。しかも運動を併用しています。
つまり「黒酢だから痩せる」というより、「お酢を続けた」話として読むのが妥当です。
では何で選ぶか=続けられる味と値段
実際に飲んでいる人の投稿を調べると、選ぶ基準は味の飲みやすさ>成分(無ろ過・マザー入り)>値段の順でした。黒酢を選んでいる人の多くは「はちみつ入りの黒酢飲料が甘くて続けやすいから」という理由です。
これは正しい選び方だと思います。12週間続かない酢は、どんな成分でも効きません。ただし加糖タイプには別の問題があるので、それは売り場の章で書きます。
12週間飲むと、体の数字はどれだけ動くのか
先にひとつ断っておきます。2024年に世界的に話題になった「リンゴ酢で12週間に7〜8kg減った」という研究は、のちに撤回されています。その話は後半でします。
ここで見るのは、日本人155人を対象にした二重盲検試験です。しかも試験に使われた飲料の中身は、リンゴ酢でした(日本では飲用にリンゴ酢が好まれるため、と論文に書かれています)。
Kondo T, Kishi M, Fushimi T, Ugajin S, Kaga T. Vinegar intake reduces body weight, body fat mass, and serum triglyceride levels in obese Japanese subjects. Biosci Biotechnol Biochem 2009;73(8):1837-1843.
BMI 25〜30 kg/m²の日本人175人を無作為に3群へ割り付け、解析対象は155人(プラセボ50・15mL群54・30mL群51)。前観察3週+摂取12週+後観察4週。500mLの飲料を朝食後に250mL、夕食後に250mL。飲料にはリンゴ酢が0mL/15mL(酢酸750mg)/30mL(酢酸1,500mg)含まれる。プラセボは味を似せるため乳酸を添加。期間中、3群のあいだで食事内容(エネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・食物繊維)と歩数に差はなかった。
結果を、%ではなく実数で並べます。
| 指標 | 群 | 0週 | 12週 | 中止4週後 |
|---|---|---|---|---|
| 体重(kg) | プラセボ | 74.2 | 74.6 | 74.5 |
| 15mL | 74.9 | 73.7 | 74.9 | |
| 30mL | 73.1 | 71.2 | 72.7 | |
| BMI | プラセボ | 26.9 | 27.1 | 27.0 |
| 15mL | 27.2 | 26.8 | 27.2 | |
| 30mL | 27.0 | 26.3 | 26.8 | |
| 腹囲(cm) | プラセボ | 90.2 | 90.4 | 90.6 |
| 15mL | 90.8 | 89.4 | 90.1 | |
| 30mL | 90.5 | 88.6 | 89.8 | |
| 体脂肪率(%) | プラセボ | 29.9 | 29.9 | 30.0 |
| 15mL | 30.3 | 29.6 | 30.2 | |
| 30mL | 30.2 | 29.3 | 29.8 | |
| 中性脂肪(mg/dL換算) | プラセボ | 151 | 149 | 138 |
| 15mL | 151 | 123 | 129 | |
| 30mL | 158 | 116 | 158 |
日本人155人(プラセボ50・15mL群54・30mL群51)の二重盲検。試験飲料はリンゴ酢で、500mLを朝食後と夕食後に250mLずつ。食事内容と歩数は3群で差がありませんでした。プラセボとの比較はANCOVA+Bonferroni法。中性脂肪は論文のmmol/Lを×88.57でmg/dLに換算しています。
臨床検査技師の視点:この表の読み方
- %だけを見ると、効果は大きく見えます。同じ結果でも「体重1.6%減」と「1.2kg減」では受ける印象がまるで違います。健康情報で%が前に出ているときは、必ず実数を探してください
- 統計学的に有意=あなたの健診で必ず見える、ではありません。これは50人ずつの群の平均の話です
- 中性脂肪は、食事・採血条件・飲酒で大きく動く項目です。「この試験で下がったから、次の健診でも下がる」とは読まないでください。検査値がいつ動くかはこちらの記事に分けて書いています
15mLでも差は出た。ただし30mLのほうが大きく動いた
ここはよく誤解されるところです。
この試験では、体重・BMI・体脂肪率が摂取4週の時点からプラセボより有意に低く、腹囲とヒップは8週から差がつきました。そして体重とBMIについては、8週と12週の時点で30mL群が15mL群より有意に低いと論文に明記されています。つまり用量依存性が認められています。
ですから「15mLで十分」「30mL飲んでも無意味」とは言えません。
一方で、30mLで効果が2倍になるわけでもありません。12週間の体重の差は15mLで−1.2kg、30mLで−1.9kgです。酸をたくさん飲むほど歯と胃の負担は増えるので、私はまず1日15mL(大さじ1)から始めるのを実用上の目安にしています。
内臓脂肪は「減った」だけでなく「増えなかった」
お腹の脂肪の面積をCTで測った結果は、こうでした。0週から12週にかけての変化率です。
- 内臓脂肪面積:プラセボ +4.4%/15mL群 −2.8%/30mL群 −4.9%
- 皮下脂肪面積:プラセボ −0.2%/15mL群 −2.3%(p=0.085で傾向どまり)/30mL群 −2.8%
- 総脂肪面積:プラセボ +1.0%/15mL群 −2.8%/30mL群 −3.5%
ここで見落とされがちなのが、プラセボ群は増えていることです。生活を変えずに12週間過ごすと、内臓脂肪は4.4%増えていました。
つまりお酢を飲んだ群の意味は、「減らした」だけではありません。その3か月で増えるはずだった分を止めた、という側面もあります。
やめて4週間で、元に戻った
この試験のいちばん大事な部分は、実は摂取が終わったあとにあります。
お酢をやめて4週間後、15mL群の平均体重は73.7kgから74.9kgへ、つまり0週とまったく同じ値に戻りました。BMIも27.2に戻っています。30mL群も71.2kgから72.7kgへ戻り、中性脂肪にいたっては1.31 mmol/Lから1.78 mmol/Lへ、開始時より高い値になりました。
お酢は「12週間がんばって終わり」の方法ではありません。飲んでいるあいだだけ効く習慣です。同じことは乳酸菌でも起きます。
ガセリ菌で痩せたは本当?内臓脂肪に効く「SP株」の論文9本とやめると戻る条件
短い試験で一貫して出ているのは、食後の血糖のほう
体重より数字が動きやすいのは、食後の血糖です。
臨床試験を集めた系統的レビュー・メタ解析(Shishehbor 2017)では、お酢の摂取で食後の血糖曲線下面積(AUC)とインスリンAUCが有意に低下していました。短時間の試験でも比較的一貫して確認されている効果です。
仕組みとして考えられているのは、小腸の二糖類分解酵素のはたらきを抑えること、胃から腸への食べ物の移動を遅らせること、骨格筋への糖の取り込みを促すことです。ただし人でこれらがすべて確定したわけではありません。候補にとどまります。
錠剤やサプリで代用できるか
同じ酢酸量でも、形が変われば結果が変わる可能性があります。
健康な若年成人12人のクロスオーバー試験では、液体のお酢を摂ったときの食後60分の血糖上昇が、対照や市販の酢錠剤より31%低くなりました。
これは小規模な1本の試験なので、「錠剤は効かない」と言い切ることはできません。言えるのは、少なくとも1つの小規模試験では、市販の錠剤は液体のお酢と同等の食後血糖効果を示さなかったということです。飲みにくいからサプリで、が等価交換になる保証はありません。
体重の試験と血糖の試験では、飲むタイミングが違う
ここは、この記事でいちばん書いておきたかったことです。
体重と内臓脂肪が動いたKondo 2009では、被験者は飲料を朝食後と夕食後に飲んでいます。一方、食後血糖を抑える研究では、食事と一緒か、食事の直前に摂るのが一般的です。
つまり「何を目的にするか」で、飲むタイミングの根拠が変わります。どちらか一方の研究だけを見て「お酢は食前がいい」「いや食後だ」と断言するのは、測り方の違う数字を並べているのと同じことです。
どれくらい・いつ・どう飲むのが現実的か
| 項目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 量 | まず1日15mL(大さじ1)から | 15mLでもプラセボとの差は出ている。30mLのほうが大きく動くが、酸の負担も増える |
| タイミング | 体重・内臓脂肪が目的なら食後/食後血糖が目的なら食事と一緒か直前 | 根拠にしている試験の飲み方がそれぞれ違うため |
| 薄め方 | 水や炭酸水で5〜10倍 | 原液はpH2〜3。エナメル質はpH5.5以下で溶ける |
| 飲み方 | ストローを使い、だらだら飲まない | 歯に酸が触れている時間を短くする |
| 飲んだあと | 水で口をすすぐ/歯みがきは30分あけて | やわらかくなったエナメル質をこすり落とさないため |
| 避ける時間 | 空腹時・就寝直前 | 胃粘膜への刺激と、横になったときの逆流 |
| 続ける期間 | やめると戻る前提で | 中止4週間で0週の値に戻った(表2) |
実際に続けている人の飲み方を調べても、大さじ1杯を水・炭酸水・白湯・トマトジュースで割るのが多数派で、ストローを使うことをすすめる声が目立ちました。上の図はそれとほぼ一致しています。
売り場でどれを買えばいいか
ここまで読んで「で、結局どれを買えばいいのか」が残っていると思うので、判断の基準を4つに絞ります。
- 「リンゴ酢」「米黒酢」など、純粋な食酢を選ぶ。飲むために作られた加糖ドリンクは別物です
- ラベルの酸度を見る。酢酸の量は製品ごとに違います。研究で使われているのは酢酸750mg(食酢15mL相当)です
- 「無ろ過」「マザー入り」を健康効果の必須条件にしない。そこで効果が上がるという根拠はありません
- 高い製品ほど痩せる、という根拠もありません。続けられる価格帯を選ぶほうが合理的です
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「飲む酢」「黒酢ドリンク」は糖質量を見る
飲みやすさを売りにした酢飲料の多くは、果糖ぶどう糖液糖などで加糖されています。味が続く理由がそこにある以上、当然ではあります。
ただし、加糖飲料を1本増やしてお酢を摂るのでは、差し引きで何をしているのか分からなくなります。裏面の炭水化物(糖質)量を必ず確認してください。
飲まずに料理に使ってもいいか
酢酸を摂ることが目的なら、原液に近い形で飲む必要はありません。料理に使えば歯への負担も下がります。
ただし正直に書くと、体重が動いた試験は「飲料として1日2回」という条件で行われています。料理で摂った場合に同じ効果が出るかどうかは、同じ設計で確かめられていません。「飲まなくてもいい」とは言えますが、「料理でも同じ効果」とまでは言えない、という線引きです。
酢キャベツダイエットで痩せない理由|4つの原因を研究から切り分ける
「リンゴ酢で7〜8kg痩せた」という研究は、2025年に撤回された
2024年、リンゴ酢で12週間に7〜8kgの体重減少という研究が報じられ、世界中で話題になりました。日本語のSNSでも「リンゴ酢で痩せる」という投稿が一気に増えた時期です。
この論文は、2025年9月23日に撤回されています。
Abou-Khalil R, et al. Apple cider vinegar for weight management in Lebanese adolescents and young adults with overweight and obesity. BMJ Nutrition, Prevention & Health, 2024年3月公開 → 2025年9月23日 撤回。
撤回の理由として挙げられたのは、統計解析の手法への懸念、ありえない統計値、生データの信頼性、方法の記述が不十分であること、そして試験の事前登録がないこと。各30人の3群で年齢・身長・体重の分布がほとんど同一である点も指摘された。著者側も誤りを認め、撤回に同意している。
研究不正の話をしたいわけではありません。いま日本語で流通している「リンゴ酢で痩せた」の数字の多くが、この論文を発信源にしているという点が重要です。
メタ解析の数字を、どう読むか
2025年には、リンゴ酢と体組成のメタ解析も出ています(Castagna 2025, Nutrients)。ランダム化試験10本・789人を集めたもので、体重の標準化平均差は−0.39(95%信頼区間 −0.63〜−0.15)。効果の方向はマイナス側でした。
ただし、ここに厄介な事情があります。
このメタ解析は、上で書いた撤回論文を解析対象として含んでいます。しかもバイアスのリスクが低い研究として評価されていました。メタ解析が公開されたのは、撤回のわずか4日前です。
つまり「バイアスの高い研究を除いた感度分析」からも、撤回された研究は除外されていません。感度分析でも効果は残ったと報告されていますが、撤回後のエビデンスとしてそのまま読むことはできません。
なお同じ論文には、体重の平均差として−7.45kgという非常に大きい値も載っています。報道で見かけるのはこの数字です。ただし主要な解析の効果量は上の−0.39と小さく、日本人155人の試験でも減量幅は1〜2kgです。本記事では、この−7.45kgを減量量の代表値として採用しません。
SNSで見る「1か月7kg」をどう扱うか
投稿を集めて見ると、「2か月で6kg」「1か月で7kg」といった派手な数字は、商品を紹介する立場の投稿に偏っていました。一般の人の投稿は「気持ち減った」「体脂肪が少し減った」「停滞が動き出した」という控えめな表現が中心です。
あわせて、「飲むだけで脂肪が溶ける」「無ろ過のものなら効果が別格」といった説明も実際に流通しています。どちらも根拠が確認できません。
歯・胃・薬――ここだけは損をしないために
実際に飲んでいる人の投稿でいちばん多かった実害は、体調ではなく歯でした。「歯が溶けていくような感覚」「歯に最悪」「ストロー必須」といった声です。
ここは根拠の強さを分けて読む必要があります。
| 言えること | 根拠の強さ |
|---|---|
| 食酢のpHは2〜3で、エナメル質はpH5.5以下で脱灰する | 生理学的・歯科的に確立 |
| お酢を長期間飲み続けて、エナメル質から象牙質に及ぶ酸蝕・摩耗が起きた例がある | 症例報告(頻度は示せない) |
| 何人に1人に起きるのか | 分かっていない |
症例報告は「起こり得る」ことを示すもので、「◯%の人に起こる」ことを示すものではありません。効果の大きさ(ランダム化試験)と、危険が存在すること(症例報告)は、同じ土俵の数字ではないということです。
それでも、表3の飲み方は守る価値があります。薄める・ストロー・すすぐ・30分あけて磨く。コストがほぼゼロで、失うものだけが減ります。
空腹時の原液はやめる
強い酸は胃の粘膜と食道を刺激します。「空腹時に原液は負担」「胃が痛くなった」「喉がいがいがした」という声は実際にあります。
逆流性食道炎の指摘を受けたことがある人は、空腹時と就寝直前を避け、食後に薄めてにしてください。
始める前に主治医へ確認したほうがいい人
- 1型糖尿病で、糖尿病性の胃不全麻痺(胃排出の遅れ)がある人。10人を対象にしたパイロット研究で、リンゴ酢30mLが胃排出をさらに遅らせました。インスリンと食事のタイミングが合わなくなる可能性があります(※「胃が弱い人全員」という話ではありません)
- 血糖を下げる薬・インスリンを使っている人。理屈のうえでは低血糖側に寄り得ます。通常量の食酢で重い低血糖が頻発するというランダム化試験があるわけではありませんが、自己判断で習慣化せず相談してください
- 利尿薬など、カリウムが下がりやすい薬を使っている人。通常量での発生頻度は確立していませんが、大量・長期の摂取で低カリウム血症の症例が報告されています
- 腎臓の病気を指摘されている人。この点は別の記事で詳しく書いています
それでも痩せた人が、実際に変えていたこと
投稿を読んでいて気づいたことがあります。
「痩せた」と書いている人は、酢だけでなく、甘い飲み物の置き換えや食事全体の見直し、運動を併用している例が多く見られました。「効いたのは酢じゃなくて、置き換わったもののほう」と自分で分析している人もいます。
ここはSNSの投稿を眺めた印象なので、統計として扱うことはできません(そもそも成功した人ほど投稿しやすいという偏りがあります)。それでも、Kondo 2009の減量幅が12週で1〜2kgだったことと突き合わせると、筋は通ります。加糖飲料をお酢の炭酸割りに替えた分の差のほうが、酢酸そのものの効果より大きいことは十分にあり得ます。
だからお酢の役割は、「脂肪を溶かすもの」ではなく「食習慣を1つ入れ替えるきっかけ」と考えるのがいちばん現実的です。
中性脂肪を下げる食事|減らす食品・増やす食品と数値別の優先順位
太りやすい体質は本当にある?遺伝と痩せる食べ物を臨床検査技師が解説
よくある質問
Q. リンゴ酢と黒酢、ダイエットに効くのはどっちですか?
A. 現時点では「どちらが上とも言えない」が正確な答えです。両者を同じ酢酸量でそろえて直接比較したランダム化試験がありません。酢酸の量はどちらもおおむね4〜5%で大きくは変わらないため、続けられる味と値段で選ぶのが合理的です。
Q. リンゴ酢は1日どれくらい飲めばいいですか?
A. 日本人155人の試験では、1日15mL(大さじ1)でもプラセボとの差が出ています。ただし体重とBMIについては30mLのほうが大きく動きました。酸の負担も増えるので、まず15mLから始めるのを目安にしてください。
Q. 飲むタイミングはいつがいいですか?
A. 目的によります。体重・内臓脂肪の根拠になっている試験は朝食後と夕食後に飲んでいます。食後の血糖を抑えたい場合は、食事と一緒か直前に摂る研究が中心です。空腹時と就寝直前は避けてください。
Q. リンゴ酢を飲むだけで痩せますか?
A. 飲むだけで大きく痩せることは期待しないでください。食事も歩数も変えなかった12週間の試験で、体重の差は1〜2kgでした。しかもやめて4週間で開始時の値に戻っています。
Q. 歯が溶けると聞きましたが、防ぐ方法はありますか?
A. 原液で飲まない、ストローを使う、だらだら飲まない、飲んだあと水で口をすすぐ、歯みがきは30分あけてから。この5つで歯に酸が触れる時間と強さを下げられます。
Q. 錠剤やサプリのリンゴ酢でも同じですか?
A. 同じとは言えません。12人の小規模なクロスオーバー試験では、同じ酢酸量でも液体のお酢のほうが食後60分の血糖上昇を31%低く抑えました。1本の小さな試験なので断定はできませんが、代用できる前提では考えないほうがいいと思います。
Q. 薬を飲んでいますが、リンゴ酢を飲んでも大丈夫ですか?
A. 血糖を下げる薬・インスリン、利尿薬などカリウムが下がりやすい薬を使っている場合は、自己判断で習慣にせず主治医に相談してください。1型糖尿病で胃排出の遅れを指摘されている場合も同様です。
Q. リンゴ酢を飲むと肌がきれいになりますか?
A. 飲用による美肌効果を確立した質の高い臨床試験は、現時点では不足しています。2021年に私が書いた「リンゴ酢は美容」という結論は取り下げます。
Q. 便秘に効きますか?
A. 排便回数を増やす、便秘の治療になる、といったことを確立した臨床試験は乏しいのが実情です。期待して大量に飲むと、胃と歯の負担だけが増えます。
まとめ
2021年の私は「黒酢はダイエット、リンゴ酢は美容」と書きました。論文を数字まで読み直した結論は、こうです。
- どちらが上とは言えません。直接比べた試験がないからで、「同じ」とも「違う」とも言えないのが正直なところです
- 日本人でいちばん堅いデータは、リンゴ酢で取られています。12週間で−1.2kg(15mL)/−1.9kg(30mL)。内臓脂肪はプラセボが+4.4%増えるなか、−2.8%/−4.9%でした
- やめて4週間で、体重もBMIも開始時の値に戻りました。だから「続けられるかどうか」だけが実質的な選択基準です
売り場で迷ったら、成分表ではなく、自分が3か月飲み続けられそうな味と値段で選んでください。それが今回、いちばん根拠のある答えでした。
参考文献
- Kondo T, Kishi M, Fushimi T, Ugajin S, Kaga T. Vinegar intake reduces body weight, body fat mass, and serum triglyceride levels in obese Japanese subjects. Biosci Biotechnol Biochem 2009;73(8):1837-1843. PubMed
- Castagna A, et al. Effect of apple cider vinegar intake on body composition in humans with type 2 diabetes and/or overweight: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutrients 2025;17(18):3000. PMC
- Retraction: Apple cider vinegar for weight management in Lebanese adolescents and young adults with overweight and obesity. BMJ Nutrition, Prevention & Health, 2025年9月23日. PMC
- Study on apple cider vinegar for weight loss retracted after many raise concerns. Retraction Watch, 2025. Retraction Watch
- Shishehbor F, Mansoori A, Shirani F. Vinegar consumption can attenuate postprandial glucose and insulin responses; a systematic review and meta-analysis of clinical trials. Diabetes Res Clin Pract 2017. PubMed
- Commercial vinegar tablets do not display the same physiological benefits for managing postprandial glucose concentrations as liquid vinegar. Nutrients 2021. PMC
- Hlebowicz J, et al. Effect of apple cider vinegar on delayed gastric emptying in patients with type 1 diabetes mellitus: a pilot study. BMC Gastroenterol 2007;7:46. PMC
- 濱町直史, 瀬戸佳代子, 矢澤一良. 黒酢含有食品の体脂肪及びエネルギー代謝へおよぼす影響. 日本補完代替医療学会誌 2014;11(1):67-. J-STAGE
- ミツカングループ「肥満気味の方の内臓脂肪の減少」. ミツカン
