健診で「中性脂肪が高い」と言われて、まず頭に浮かぶのは揚げ物や脂身ではないでしょうか。ところが検査室から見ていると、数値が大きく動く人が変えているのは、たいてい油ではなく「甘い飲み物」と「酒」です。
血液中の中性脂肪は、食べた脂がそのまま流れているだけのものではありません。かなりの部分を肝臓が作っています。その材料になるのが果糖や砂糖、そしてアルコールです。だから「揚げ物だけを我慢しているのに下がらない」が起きます。
ただし、これはすべての人に当てはまる話ではありません。中性脂肪が500mg/dLを超えてくると、優先順位は逆転して脂質の制限が重くなります。まず自分の数値がどのゾーンにいるかを確かめるところから始めます。
この記事でわかること
- 150・300・500という3つの区切りで、打ち手がどう変わるか
- 軽度〜中等度なら何から手を付けるか(優先順位)
- 減らす食品・増やす食品の具体的な置き換えと、1日の献立例
- 介入研究では実際にどれくらい下がったのか(数字と、その研究の条件)
- 魚は何を選べばいいのか(EPAは魚種と部位で100倍以上違う)
- 気をつけているのに下がらないときに疑う5つ
筆者は臨床検査技師です。検査室の側から見ていると、中性脂肪は採血の条件ひとつで判定の線をまたいでしまう、扱いの難しい項目です。数値そのものだけでなく、その数値がどう作られたかまで含めて書きます。
まず自分の数値を確認|150・300・500で打ち手が変わる
「中性脂肪を下げる食事」は、ひとつではありません。いくつなのかによって、先に手を付けるべきものが変わります。
| 値(mg/dL) | 位置づけ | 先に来るもの |
|---|---|---|
| 150未満(空腹時) 175未満(随時) | 基準内 | 現状維持。採血条件をそろえて経過を見る |
| 150〜299(空腹時) 175〜299(随時) | 保健指導判定値 =軽度〜中等度 | 甘い飲み物・果糖・酒・精製糖質の見直し。この記事の主対象 |
| 300〜499 | 受診勧奨判定値 | まず医療機関。食事の工夫は自己判断で完結させない |
| 500〜999 | 重度 | 脂質の制限の比重が上がる。糖質だけを見ていては足りない |
| 1000以上 | 急性膵炎のリスク域 | 総脂肪20〜30g/日(エネルギーの10〜15%)程度の超低脂肪食が医学的な中心。必ず医師の管理下で |
空腹時150/随時175|線が2本ある理由
健診の判定値には、中性脂肪だけ線が2本あります。空腹時(食後10時間以上)なら150mg/dL以上、随時(食後10時間未満)なら175mg/dL以上が高トリグリセライド血症です。2022年版の動脈硬化性疾患予防ガイドラインで「随時175」が新しく設けられました。
なぜ2本かというと、食後は誰でも上がるからです。食後の中性脂肪は3〜4時間でピークになり、6〜8時間は高いまま推移します。つまり同じ体でも、採血が食後何時間かだけで判定の線が25mg/dL動くということです。
「随時175」が作られたのは、食後の値が甘く見られていたからではありません。逆で、空腹時でも非空腹時でも、中性脂肪の高さは将来の冠動脈疾患や脳梗塞と関連すると国内の疫学研究で示されたためです。「食後だから高いだけ」で流していい時代ではなくなりました。
300以上は受診勧奨判定値|食事の前に医療機関へ
特定健診の判定では、300mg/dL以上が受診勧奨判定値です。ここから先は「食生活を見直しましょう」の段階ではなく「医療機関を受診してください」の段階になります。
理由は数値の大きさだけではありません。食事では動かない中性脂肪があるからです。家族性の脂質異常症、甲状腺機能低下症、腎疾患、糖尿病のコントロール不良、一部の薬剤。これらが背景にあると、いくら食事を整えても頭打ちになります。X(旧Twitter)でも「食事を変えても下がらないから今は薬を飲んでいる」「遺伝要素がある」という投稿は珍しくありません。努力不足の話にしないためにも、300を超えたら一度は医療機関で背景を確かめてください。
500以上では「糖より脂」に逆転する
ここが、この記事でいちばん大事な但し書きです。
血液から中性脂肪を取り除く仕組みは無限ではなく、おおむね500〜700mg/dLを超えると処理が飽和します。そうなると、食べた脂を運ぶカイロミクロンが血液中に滞留し、急性膵炎のリスクが立ち上がります。
米国心臓病学会(ACC)の2021年のコンセンサスでは、1000mg/dL以上では総脂肪をエネルギーの10〜15%(およそ20〜30g/日)まで落とす超低脂肪食が示されています。これはカイロミクロンを減らすための食事で、糖質の話とは別軸です。
この記事の対象
以下はおおむね150〜499mg/dLの軽度〜中等度を想定した内容です。500mg/dL以上の方は、この記事の優先順位(糖質・酒が先)をそのまま当てはめないでください。脂質の制限と医師の評価が先に来ます。
結論|軽度〜中等度なら、この順番で変える
先に全体像を出します。上にあるものほど、変えたときに数値が動きやすく、しかも取りかかりやすいものです。
①と②が上に来ているのは、やめた分がまるごと肝臓への持ち込みの減少になるからです。一方で⑤の減量が最下段にあるのは「痩せても無駄」という意味ではありません。減量は①〜④を実行した結果として付いてくるもので、体重だけを目標にすると遠回りになるという順序の話です。
今日から変える食事|減らす食品・増やす食品
理屈より先に、明日の朝から何をどう替えるかを出します。ゼロにする必要はなく、置き換えるだけです。
| 減らすもの | 置き換え先 | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 清涼飲料・加糖コーヒー・果汁飲料・エナジードリンク | 水・無糖茶・ブラックコーヒー・炭酸水 | 果糖と砂糖は肝臓での脂肪合成を直接押し上げる |
| 菓子パン・スナック・洋菓子 | 主食+たんぱく質の食事(卵・納豆・ヨーグルト) | 間食を「食事の形」にすると総量が読める |
| 大盛りの白米・ラーメン・うどん | 普通盛りに戻し、魚・豆・野菜を足す | 抜くのではなく量を戻す。続かない制限は数値も戻る |
| 揚げ物中心の主菜 | 焼き魚・煮魚・大豆製品・鶏肉 | 揚げ物が主因ではないが、魚に替えると同時にEPAが入る |
| 毎晩の晩酌 | まとめて4〜5週抜いてから、量を決めて戻す | 週1日の休肝日は採血で効果を確かめにくい |
①甘い飲み物 → 水・無糖茶
最初に切るのはここです。飲み物は「食べた」という実感が残らないぶん、食事日記からもいちばん抜け落ちます。清涼飲料の甘味料として広く使われている果糖ぶどう糖液糖については、果糖ぶどう糖液糖は最悪!知らないで摂取する危険性で別に扱っています。
注意したいのは、100%果汁ジュースやスムージーも果糖という点では同じ扱いになることです。「体に良さそうな飲み物」だから対象外、とはなりません。
②菓子パン・お菓子 → 主食+たんぱく質
菓子パンは、砂糖と精製小麦と油脂が一度に入る食品です。朝食を菓子パンにしている人は、ここを卵かけご飯や納豆ご飯、無糖ヨーグルトに替えるだけで、1日の砂糖の入り口がひとつ閉じます。
③大盛りの白米・麺 → 量を調整して魚・豆・野菜を足す
ここで極端な糖質制限に振る必要はありません。大盛りを普通盛りに戻す程度で十分です。1日あたりの目安については糖質一日何グラムまで?ダイエット女性が気にするべきことにまとめています。
④揚げ物中心 → 焼き魚・煮魚・大豆・鶏肉
「揚げ物が主犯ではない」と書きましたが、揚げ物を減らすこと自体に意味がないわけではありません。揚げ物を焼き魚に替えると、脂の量が下がると同時にEPAが入るという二重の効果があります。減らす話と増やす話が同時に片付くので、実務としては効率がいい置き換えです。
⑤晩酌 → 休肝日より「一定期間まとめて抜く」
週に1日だけ休肝日を作る方法は、続けやすい代わりに採血で効果を確かめにくいのが難点です。慢性的に飲んでいる人では、超低比重リポたんぱく(VLDL)に載った中性脂肪の代謝回転が速くなっており、断酒によってこれが正常化することが報告されています(男性10名・2週間の断酒/Atherosclerosis 1984)。
この研究は10名の代謝回転の話で、「◯週間やめれば中性脂肪が◯%下がる」と約束できる試験ではありません。ただ、同じ健診項目のγ-GTPは半減期が26日と分かっているので、4〜5週まとめて抜いてから採血すると、酒の寄与がどれくらいだったかを自分の数値で切り分けられます。これがいちばん確実な確かめ方です。
1日の献立例
難しくしない1日の形
朝 無糖ヨーグルト+オートミールまたはご飯+卵。飲み物は無糖に替える
昼 ご飯は普通盛り+焼き魚(またはサバ缶)+野菜+味噌汁
夜 豆腐か魚を主菜に、副菜を1〜2品、主食は控えめ。酒は一定期間なし
※糖質制限食にする必要はありません。甘い飲み物と晩酌が抜けているかどうかが、この献立の要点です。
なぜ糖と酒で中性脂肪が上がるのか|肝臓が”作る”
ここから理屈です。血液中の中性脂肪には、入り口が2つあります。
中性脂肪は食べた脂だけでできているわけではない
左のルートは、食べた脂が小腸から吸収されてカイロミクロンとして血中に入るもので、食後に上がり、数時間で片付きます。健診の空腹時採血で見ているのは、多くの場合このルートが済んだ後の血液です。
問題は右です。果糖・砂糖・アルコールは肝臓に届き、そこで脂肪を作る材料になります。作られた脂肪はVLDLに載って血中へ送り出されるので、絶食していても下がりません。「揚げ物を我慢しているのに数値が変わらない」の正体はここにあります。
この肝臓での脂肪の蓄積が進んだ状態が脂肪肝です。食べ物の優先順位という意味では脂肪肝にいい食べ物・肝臓に悪い食べ物ランキングと地続きの話になります。
果糖・砂糖とでんぷんでは肝臓の反応が違う
「じゃあ炭水化物を全部減らせばいいのか」というと、そうではありません。同じ糖でも、肝臓の反応が違います。
健康な男性94名を対象に、フルクトース・スクロース(砂糖)・グルコースをそれぞれ80g/日で7週間飲んでもらった試験があります(Geidl-Flueck, J Hepatol 2021)。肝臓での脂肪酸の新規合成を示す指標(FSR)の中央値は、スクロース20.8%/日(P=0.0015)、フルクトース19.7%/日(P=0.013)で、飲まない対照の9.1%/日のおよそ2倍でした。ところが同じ量のグルコースでは11.0%/日で、ほとんど変わりませんでした。
ここで正確に書いておくと、これは血液中の中性脂肪が2倍になったという数字ではありません。肝臓での脂肪酸合成の指標です。同じ論文では、新しく作られたVLDL中性脂肪の基礎分泌そのものは有意には増えていません。それでも、「ごはんのでんぷんより先に、砂糖と果糖入りの飲み物を切る」という順番の根拠としては十分な結果です。
酒がVLDLを増やす
アルコールも肝臓で処理され、脂肪合成の方向に働きます。慢性飲酒者ではVLDL中性脂肪の合成速度と異化速度がともに亢進しており、2週間の断酒でどちらも正常化したことが報告されています(男性10名/Atherosclerosis 1984)。中性脂肪と酒の関係が「量」ではなく「肝臓の働き方」の問題であることが分かります。
介入研究ではどれくらい下がったのか
ここからは実際の数字です。ただし先に注意書きを1つ。
この表はランキングではありません
以下の研究は、対象者(小児/成人/糖尿病あり)も、介入期間も、開始時の中性脂肪の値も、比較の相手もばらばらです。数字を縦に並べて「どれがいちばん効く」と順位を付けることはできません。「その条件では、これくらい動いた」という記録として読んでください。
| 介入 | 対象・期間 | 中性脂肪の変化 | 種類 |
|---|---|---|---|
| 砂糖をでんぷんに置換 (カロリーは変えない) | 小児43名・9日 入院管理下の完全給食 | −46%(P<0.001) | 食品の入れ替え |
| 低炭水化物食 | 成人・RCTのメタ解析 | −0.15 mmol/L(約−13mg/dL・95%CI −0.23〜−0.07) 2型糖尿病では −19.91mg/dL(−28.83〜−10.99) ※いずれも対照食との群間差 | 量の調整 |
| 有酸素運動 | 過体重・肥満成人 RCTのメタ解析 | −16.1±7.3mg/dL(群間差) ※2型糖尿病では有意差なし | 運動 |
| 食事+運動 | 成人・RCTのメタ解析 | −10.6mg/dL(−18.2%) | 併用 |
| 時間制限食(16/8など) | 成人・RCTのメタ解析 | カロリー制限を伴わないと脂質への効果は乏しい 運動併用で −13.38mg/dL(−21.22〜−5.54) | 時間帯 |
| EPA/DHA(製剤・サプリ) | 成人・RCTのメタ解析 | 2,000mg/日超・8週以上で −56.78mg/dL 中用量で −24.9〜−31.8mg/dL | 薬理量。食品とは別枠 |
| 減量 | 70研究のメタ解析(1992) | 減量量と中性脂肪の低下に有意な関連(体重1kgあたり−1.33mg/dLの回帰係数) | 体重 |
砂糖を入れ替えた9日間の研究(小児43名)
いちばん大きな数字が出ているのが、この研究です。肥満とメタボリックシンドロームがある小児43名(ラテン系27名・アフリカ系16名)に、総カロリーもたんぱく質・脂質の比率も変えないまま、食事中の糖を28%から10%へ落とし、減らした分をでんぷんに置き換えた食事を9日間提供したものです(Lustig, Obesity 2016)。
結果は空腹時中性脂肪 −46%(P<0.001)、LDLコレステロール −0.3mmol/L、拡張期血圧 −5mmHg(P=0.002)。このとき体重は −0.9±0.2kg しか減っていません。
同じ介入をさらに詳しく解析した報告では、肝臓の脂肪が7.2%→3.8%、肝臓での脂肪の新規合成が68%→26%(いずれもP<0.001)まで落ちていました(Schwarz, Gastroenterology 2017・n=41)。「痩せたから下がった」のではなく「肝臓が脂肪を作らなくなったから下がった」ことが実測されています。
この−46%をそのまま自分に当てはめないでください
対象は9〜18歳の小児43名で、しかもすべての食事を管理下で提供した9日間の結果です。成人が自宅で甘い飲み物をやめた場合に同じ幅で下がる、という意味ではありません。この2本は同じ研究プログラムから出たもので、別々に再現された2つの研究でもありません。ここから読み取るべきは数字の大きさではなく、「体重が動かなくても、糖の中身を替えるだけで中性脂肪と肝脂肪は動く」という方向性です。
糖質量を減らす(対照食との群間差で−13〜−20mg/dL)
成人を対象にした低炭水化物食のメタ解析では、中性脂肪は−0.15mmol/L(約−13mg/dL・95%CI −0.23〜−0.07)、2型糖尿病を持つ人では−19.91mg/dL(95%CI −28.83〜−10.99)と報告されています。18〜30か月の長期でも−23.26mg/dLが維持されていました。
いずれも対照食と比べた群間差です。「糖質を減らせばその分だけ絶対値が下がる」という数字ではありません。また、急に強い糖質制限へ振ると別の不調が出ることがあります。実際に起きることは糖質制限の初期症状はなぜ?経験した感想と対策にまとめました。
運動と減量
有酸素運動のメタ解析では、過体重・肥満の成人で−16.1±7.3mg/dLという群間差が報告されています。ただし2型糖尿病を持つ集団では、有酸素運動だけでは中性脂肪に有意な改善が出ていません。食事と運動を組み合わせた解析では−10.6mg/dL(−18.2%)でした。
減量については、70研究をまとめた古典的なメタ解析(Dattilo & Kris-Etherton, 1992)が減量量と中性脂肪の低下に有意な関連があることを示しています。よく引用される「体重1kgあたり−1.33mg/dL」はこの解析の回帰係数ですが、これを個人に直線で当てはめて「10kg痩せても13mg/dLしか下がらない」と読むのは誤りです。減量するときには糖質の量も酒も肝臓の脂肪も同時に変わるので、体重の効果だけを切り出した数字ではありません。
そもそも体重だけを目標にすると遠回りになりやすい理由については、カロリー制限では痩せない理由で別に書いています。
数値が採血に出るまで
中性脂肪は、健診項目のなかでは比較的早く動く部類です。ただし項目ごとに動く速さがまったく違い、1か月目に全部が変わらないのは普通のことです。血糖・HbA1c・肝機能・LDLがそれぞれいつ動くのかは、ダイエットで血液検査の数値はいつ動く?血糖1週間・HbA1c3か月・LDL上昇の理由にまとめてあります。再検査の時期を決めるときはそちらを参照してください。
魚を選ぶなら何が現実的か|EPAは魚種と部位で桁が違う
ここが唯一「増やす」項目です。ただし「青魚を食べましょう」で終わらせると、ほとんど意味が変わってしまいます。
| 魚 | EPA | DHA |
|---|---|---|
| さんま | 1,500mg | 2,200mg |
| まぐろ(みなみまぐろ・脂身) | 1,600mg | 4,000mg |
| まぐろ(くろまぐろ・脂身) | 1,400mg | 3,200mg |
| ぶり | 940mg | 1,700mg |
| いわし | 780mg | 870mg |
| さば | 690mg | 970mg |
| さけ(銀鮭) | 310mg | 890mg |
| あじ | 300mg | 570mg |
| さけ(白鮭) | 240mg | 460mg |
| まぐろ(みなみまぐろ・赤身) | 10mg | 64mg |
| [参考]さば水煮缶詰 EPA 930mg/DHA 1,300mg(同成分表・可食部100g) | ||
まぐろの赤身と脂身でEPAが100倍以上違う
表4でいちばん目を引くのは、同じみなみまぐろでも赤身のEPAが10mg、脂身が1,600mgと160倍違うことです。「まぐろを食べているから大丈夫」は、赤身の刺身であればほとんど当てになりません。
逆に言えば、さんま・いわし・さば・ぶりといった青魚は、値段のわりに含有量が高いということでもあります。
サバ缶が現実解になる理由
Xで中性脂肪の話題を追うと、実際に一般の人が挙げている食品はほぼサバ缶です。「まずはサバ缶から」「サバ缶食べるだけでEPA・DHAが摂れて」といった投稿が続きます。青汁やトクホ飲料は宣伝投稿ばかりで、生の声はほとんど見つかりません。
サバ缶が現実解になっているのは、含有量が最高だからではありません。安くて、常温で置けて、調理がいらず、1缶で食べ切れるという実用面の理由です。水煮缶のEPAは可食部100gあたり930mgで、生のさば(690mg)と比べても遜色ありません。
ひとつだけ実務的な注意を書いておくと、缶詰の汁には脂が出ています。汁を捨てるとEPAとDHAもいくらか一緒に捨てることになるので、味噌汁や炊き込みご飯に汁ごと使えるときは使ってください。
味付けの缶より、味噌煮や醤油煮ではない「水煮」のほうが砂糖が入りません。この記事の主旨(先に切るのは糖)と揃えるなら水煮を選んでください。まとめ買いしておくと、忙しい日の主菜が揚げ物に流れずに済みます。
サプリの前に|JELISの1,800mgは医薬品の用量
「サプリのほうが早いのでは」と考える前に、数字の出どころを確認しておきます。
日本人18,645名を平均4.6年追跡したJELIS試験では、スタチンにEPA 1,800mg/日を上乗せした群で主要冠動脈イベントが19%減少しました。中性脂肪はEPA群で−10%(対照−5%)です。ただし、この1,800mgは医薬品として処方される用量であって、食事やサプリでの摂取と同列には置けません。
メタ解析でも、はっきりした中性脂肪の低下が出ているのは2,000mg/日超を8週以上という条件です(−56.78mg/dL)。一方で、低用量ではLDLコレステロールがむしろ上がる場合があることも同じ解析で指摘されています。
ここでサプリを勧めることはしません。用量によって効果も副作用も変わるものなので、飲むかどうかは中性脂肪の値と一緒に医師に相談する話です。食事の側でできることは、まず魚の頻度と種類を変えることです。
そのうえで選ぶなら、見るべきは価格ではなく「1日あたりのEPAとDHAが何mg入っているか」です。オメガ3をうたっていても、中身がえごま油・あまに油(α-リノレン酸)主体で、EPA・DHAはごくわずかという製品が少なくありません。成分表示でEPAとDHAのmg数が明記されているものを選んでください。下は青魚由来を明記している製品の一例です(推奨ではありません)。
下がらないときに疑う5つ
「気をつけているのに下がらない」という人には、だいたい共通した見落としがあります。
| 疑うこと | 具体的に | 確かめ方 |
|---|---|---|
| ① 脂だけ避けて糖が残っている | 揚げ物はやめたが、加糖コーヒー・菓子パン・果汁飲料は続いている | 3日分の飲み物だけを書き出す |
| ② 酒が残っている | 「量は減らした」で止まっている。休肝日が週1日 | 4〜5週まとめて抜いて再検査 |
| ③ 採血の条件がそろっていない | 前回は空腹時、今回は昼食後。検査機関も違う | 絶食時間と検査機関をそろえて比べる |
| ④ 食事より生活時間 | 夜遅い食事、睡眠不足、就寝直前の飲食 | 夕食の時刻を1週間記録する |
| ⑤ 食事で動かない中性脂肪 | 家族性の脂質異常症、甲状腺機能低下症、腎疾患、糖尿病、薬剤の影響 | 医療機関で背景を調べる |
とくに⑤は、努力の問題にしないために大事です。X上でも「食事を変えても下がらないから今は薬を飲んでいる」という投稿があり、医療機関のアカウントが「努力不足ではなく遺伝のせいかもしれません」と発信しています。食事で動く範囲には限りがある、という前提を持っておいてください。
なお、中性脂肪と内臓脂肪はセットで動くことが多い指標です。食べ物の側からの整理は内臓脂肪を最速で落とす食べ物ランキングにもまとめています。
健診前・再検査で注意すること|臨床検査技師の視点
前日だけの節制は「本当の値」を隠すだけ
健診前の駆け込みは、Xを見ているとかなりの数があります。「2日で2.5キロ落とした」「健康診断前の3日間、奇跡の断酒」。気持ちは分かりますが、これは検査を良く見せる行為ではなく、自分の現在地を見えなくする行為です。
ある医師は「昨日の夜は焼肉…中性脂肪が600あります…再検査のときは前日は焼き魚とか」と投稿しています。逆に言えば、前日の食事しだいで600という値が出てしまう項目でもあるということです。健診は合格を目指すテストではなく、いまの状態を測るためのものです。
採血条件で中性脂肪はぶれる(検査前工程)
検査室では、採血より前の段階を検査前工程(pre-analytical phase)と呼びます。中性脂肪は、この検査前工程の影響をもっとも受けやすい項目のひとつです。
- 絶食時間(食後3〜4時間がピーク、6〜8時間は高いまま)
- 前日の飲酒
- 採血の時刻
- 直前の食事の脂の量
報告されている食後の上がり幅は、通常の食事で+8.9〜26.6mg/dL程度、脂質の多い食事では空腹時比+50%以上ですが、これは試験食の脂肪量と個人差でかなり変わる数字なので、自分の健診前日の予測に使えるものではありません。「条件で動く」という事実だけを持ち帰ってください。
乳び検体|中性脂肪が高いと血清が白く濁る
これは検査室の側でしか見えない話です。中性脂肪が非常に高い血液を遠心分離すると、上澄みの血清が透明ではなく白く濁ります。これを乳び(にゅうび)検体と呼びます。
乳びが強いと、濁りそのものが測定の邪魔をして、中性脂肪以外の項目にも影響が出ることがあります。だから検査室では、乳びの程度を確認して、必要なら測定方法を変えたり、コメントを付けたりします。
ここで言いたいのは診断の話ではありません。中性脂肪の高さは、血液の見た目が変わるほどの状態になりうるということです。紙の上の数字が実際の血液でどう見えているかを知っておくと、300や500という数字の意味が少し違って見えると思います。
1回の値では判断できない
中性脂肪は日内変動も日差変動も大きい項目です。「150から180になったから悪化した」とは、条件をそろえない限り言えません。
もうひとつ、実務的な注意があります。多くの検査ではLDLコレステロールをFriedewald式という計算で求めていますが、この式は中性脂肪が高いと値がずれ、400mg/dLを超えると使えません。「中性脂肪が下がったらLDLが上がった」と見える現象の一部は、この計算の性質で説明がつきます。
検査値は点ではなく線で見るもの、というのはこういう意味です。同じ条件で、間隔を空けて、複数回。それが結局いちばん早い確かめ方になります。
よくある質問
Q. 揚げ物を我慢すれば中性脂肪は下がりますか?
A. 軽度〜中等度(150〜499mg/dL)であれば、揚げ物より先に甘い飲み物と酒を見直したほうが動きやすいです。血液中の中性脂肪は肝臓でも作られていて、その材料が果糖・砂糖・アルコールだからです。ただし500mg/dLを超える場合は脂質の制限の比重が上がるので、この順番は当てはまりません。
Q. サバ缶は1日何缶食べればいいですか?
A. 何缶という基準はありません。EPAの明確な低下が報告されているのは2,000mg/日超という薬理量の話で、これは食品だけで狙う数字ではないためです。食事の側でできるのは、赤身の刺身や揚げ物に寄っていた主菜を、青魚や水煮缶に置き換える頻度を上げることです。
Q. お酒は週にどれくらいまでなら大丈夫ですか?
A. この記事で示せる範囲では「◯合までなら安全」という線は引けません。代わりにおすすめしているのは、4〜5週まとめて抜いてから採血して、自分の数値で酒の寄与を確かめる方法です。週1日の休肝日では、採血で差が見えにくくなります。
Q. 果物も控えたほうがいいですか?
A. 果物そのものと、果糖ぶどう糖液糖入りの飲料は分けて考えてください。優先度が高いのは飲料のほうです。100%果汁ジュースやスムージーは、果糖という点では清涼飲料に近い扱いになります。
Q. 食事を変えたら、どれくらいで採血に出ますか?
A. 中性脂肪は健診項目のなかでは早く動くほうですが、項目ごとに速さが違います。詳しくはダイエットで血液検査の数値はいつ動く?にまとめました。再検査は、採血条件をそろえられる日を選んでください。
Q. 数値が300を超えていました。まず何をすればいいですか?
A. 食事の工夫より先に医療機関を受診してください。300mg/dL以上は特定健診の受診勧奨判定値です。家族性の脂質異常症や甲状腺・腎臓の病気、薬剤の影響など、食事では動かない原因が隠れていることがあります。
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- Dattilo AM, Kris-Etherton PM. Effects of weight reduction on blood lipids and lipoproteins: a meta-analysis. Am J Clin Nutr. 1992;56(2):320-328(70研究/減量量と中性脂肪低下に有意な関連・体重1kgあたり−1.33mg/dLの回帰係数) PDF
- Kelley GA, et al. Aerobic exercise, lipids and lipoproteins in overweight and obese adults: a meta-analysis of randomized controlled trials. International Journal of Obesity. 2005(過体重・肥満成人/中性脂肪 −16.1±7.3mg/dL) International Journal of Obesity
- Efficacy of aerobic exercise and a prudent diet for improving selected lipids and lipoproteins in adults: a meta-analysis of randomized controlled trials. 2011(食事+運動/中性脂肪 −10.6mg/dL=−18.2%) PMC
- The Effect of Time-Restricted Eating Combined with Exercise on Body Composition and Metabolic Health: A Systematic Review and Meta-Analysis. 2024(運動併用で中性脂肪 −13.38mg/dL・95%CI −21.22〜−5.54) ScienceDirect
- Accelerated turnover of very low density lipoprotein triglycerides in chronic alcohol users. Atherosclerosis. 1984(慢性飲酒男性10名/2週間の断酒でVLDL中性脂肪の合成速度・異化速度がいずれも正常化) ScienceDirect
- Associations between postprandial triglyceride concentrations and sex, age, and body mass index. Frontiers in Nutrition. 2023(食後3〜4時間でピーク・6〜8時間高値が持続/通常食で+8.9〜26.6mg/dL、高脂肪食で空腹時比+50%以上) Frontiers in Nutrition
ガイドライン・公的資料
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」(高トリグリセライド血症=空腹時150mg/dL以上、随時175mg/dL以上) 日本動脈硬化学会
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」(中性脂肪の受診勧奨判定値=300mg/dL以上) 厚生労働省
- 2021 ACC Expert Consensus Decision Pathway on the Management of ASCVD Risk Reduction in Patients With Persistent Hypertriglyceridemia. JACC. 2021(中性脂肪1000mg/dL以上では総脂肪をエネルギーの10〜15%=20〜30g/日程度まで落とす超低脂肪食。500〜700mg/dLを超えると血中からの除去が飽和する) JACC
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」脂肪酸成分表編(表4のEPA・DHA値) 食品成分データベース
※この記事は検査値と食事の関係を解説するもので、診断・治療の判断を目的としたものではありません。中性脂肪が300mg/dL以上の場合、また食事を変えても改善しない場合は、医療機関にご相談ください。服薬中の方は、食事内容の大きな変更について主治医にご確認ください。

