「同じもの食べてるのに、あの子だけ太らない」——この理不尽さを一度も感じたことがない人は、たぶんいません。
この記事は、2021年に私が書いた「太りやすい人が痩せるには」を、5年後に全部書き直したものです。当時の私は「太りやすい人=コルチゾールが多い人」と一言で片づけていました。いま論文を読み直すと、その説明は雑すぎました。
先に結論を3行で置きます。
この記事の結論
- 太りやすい体質は実在します。同じだけ食べさせた実験で、増え方に3倍の差がつきました
- ただし体質は「魔法の代謝」ではありません。効いているのは食欲と、運動ではない日常の動きの量です
- だから体質を調べるより、食べ方と動き方を変えるほうが早い。遺伝子型に合わせて食事を選んでも、12か月で差は出ませんでした
この記事でわかること
- 「遺伝率40〜70%」が、あなたの体重の話ではない理由
- 同じカロリーを食べさせたとき、増え方の差を作っていたもの
- 太りやすい食べ物・太りにくい食べ物が、4年で何グラム違ったのか
- 遺伝子検査と「洋梨型・リンゴ型」の体型診断で、やることが変わるのかどうか
- 体質を調べる代わりに、健診のどの数字を見ればいいか
私は臨床検査技師です。仕事は「測ること」そのもので、測り方の違う数字を並べて比べてはいけないという前提で毎日を過ごしています。この記事でいちばん役に立つのは、たぶんその部分です。
「太りやすい体質」は本当にあるのか
あります。しかも、かなりはっきりと。
双子を使った研究では、BMI(体格指数)のばらつきのうち遺伝で説明できる割合は、子どもでも大人でもおおむね40〜70%と報告されています。大人だけを集めたメタ解析では47〜80%、88の推定値(双子14万525人分)を集めた系統的レビューでは0.47〜0.90と、研究によって幅があります。
ただし、ここで必ず分けておかなければならないことがあります。
遺伝率は「集団の中のばらつき」の話です。「あなたの体重の60%は遺伝でできている」という意味ではありません。しかも40のコホートを集めた解析では、遺伝率は20〜29歳の0.77から、70代の男性で0.57、80代の女性で0.59まで下がります。歳をとるほど、環境の取り分が増えていくということです。
同じだけ食べさせたら、増え方に3倍の差がついた
体質の実在を、いちばん直接に見た実験があります。
Bouchard C, Tremblay A, Després JP, et al. The response to long-term overfeeding in identical twins. N Engl J Med 1990;322(21):1477-1482.
若年成人男性の一卵性双生児12組(24人)に、体重維持量に加えて1日1,000 kcalを週6日・100日のうち84日間(総過剰量84,000 kcal)食べさせた。平均の体重増加は8.1 kgだったが、個人差は4.3〜13.3 kg。体重・体脂肪率・脂肪量の増え方はペア内でよく似ており、ペア間の分散はペア内の約3倍だった。
この実験が示したのは「1,000 kcal多く食べると8 kg太る」ということではありません。そこは読み違えないでください。示されたのは、過剰なカロリーを摂ったときに、どれだけ体重が増えやすいかには大きな個人差があり、その差が遺伝的に近い人どうしで揃うということです。
男性24名・特定条件下の小規模な実験で、1990年のものです。それでも、「同じもの食べてるのに、あの子だけ太らない」という体感が気のせいではないことを、これほどはっきり示した研究は多くありません。
太りやすい体質の正体は「食欲」と「無意識の活動量」
ここからが本題です。
「太りやすい体質」と聞くと、多くの人が「基礎代謝が極端に低いこと」を思い浮かべます。私も昔はそう書いていました。けれど実際には、基礎代謝の個人差よりも、無意識の活動量と食欲の幅のほうがはるかに大きいのです。
増え方の差を説明したのは、運動ではない日常の動きだった
Levine JA, Eberhardt NL, Jensen MD. Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science 1999;283(5399):212-214.
非肥満の成人16人に、体重維持量+1日1,000 kcalを8週間。増えた総エネルギー消費のうち約3分の2がNEAT(非運動性活動熱産生=そわそわ、姿勢の保持、日常の動き)だった。脂肪の増え方には10倍の個人差があり、その差を説明したのはNEATの変化だった(r = 0.77、p < 0.001)。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
「太りにくい体質」の正体は、無意識に動いている量でした。本人は「特に運動していない」と思っています。それでも、座っている時間が短く、立ち上がる回数が多く、そわそわしている。それだけで、同じカロリーを食べても脂肪の増え方が10倍変わりました。
Xで見かける「友達はどんなに食べても太らない」という嘆きの、少なくとも一部はこれです。魔法の代謝ではなく、目に見えにくい行動の差でした。
食欲は、食べ物の「形」で動く
もうひとつの経路が食欲です。そしてこちらは、食べ物の側から動かせます。
Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, et al. Ultra-processed diets cause excess calorie intake and weight gain: an inpatient randomized controlled trial of ad libitum food intake. Cell Metab 2019;30(1):67-77.e3.
体重が安定した成人20人が入院し、超加工食と非加工食を2週間ずつ入れ替えて食べた。提示するカロリー・エネルギー密度・三大栄養素・糖・ナトリウム・食物繊維をそろえたうえで、好きなだけ食べてよいという条件。結果、超加工食のほうが1日あたり約500 kcal多く食べ、体重が増えた。
この研究の読み方を間違えないでください。超加工食品が代謝を悪くするから太った、のではありません。栄養素はそろえてあったのですから。示されたのは、無意識のうちに摂取カロリーが増えてしまうという、食欲の側の話です。
入院管理で20人・2週間という小規模な試験です。それでも「何を食べるか」より「どれだけ食べてしまうか」が体重を動かしている、という方向を強く示しています。
ストレスとコルチゾールも、食欲の側の話
2021年版の記事で私が主役に据えていたのが、ここでした。いまは、この位置に置きます。
ストレスで分泌されるコルチゾールと内臓脂肪の関係については、臨床から細胞・分子レベルまでの証拠を集めたレビューがあります(Pasquali & Vicennati 2002)。ただしこれはレビューであって、「コルチゾールが高い人=太りやすい人」を検証した試験ではありません。当時の私は、そこを飛ばして断言していました。
いま書くならこうです。ストレス下では、脂質や糖質に手が伸びやすくなる。つまりこれも「食欲の側」の話であり、体質の正体という位置づけではありません。睡眠不足も同じ経路に乗ります。
睡眠と体重の関係については、こちらに詳しく書いています。
【最終形態】寝るだけダイエット?!そんな馬鹿な!なぜ痩せる?
遺伝子検査や「洋梨型・リンゴ型」の体型診断で、ダイエット法は変わるのか
ここが、いちばん多くの人が知りたいところだと思います。
Xを見ていると、遺伝子検査を受けた人の感想は見事に割れています。「思い当たること全部当たってた」「一回受けたら一生ものだしやってよかった」という声がある一方で、「食べてもすぐ満腹になって太りにくいタイプらしい……当てはまらん」という声もある。
研究のほうを見ていきます。
有名な肥満遺伝子でも、効き目はこのくらい
肥満関連で最も有名なのがFTO遺伝子です。
| 何の話か | 数字 | 規模 |
|---|---|---|
| 集団のBMIのばらつきのうち、遺伝で説明される割合 | 40〜70% | 双生児研究 |
| FTOリスクアレル1個あたりのBMI | +0.28 kg/m² | 41,504人 |
| 同(東アジア・南アジア) | +0.26 kg/m² | 96,551人 |
| FTOリスクアレルを2個持つ人の体重差 | 約3 kg(肥満オッズ1.67倍) | 該当は成人の約16% |
| 身体活動によるFTOの効き目の減弱 | 27% | 218,166人 |
| 遺伝子型に合わせた食事による12か月の減量差 | 差なし(P = .20) | 609人 |
この表がいちばん言いたいことは、桁の違いです。「体質の総和」は集団のばらつきの40〜70%を占めるのに、いちばん有名な遺伝子1個の効き目は、2個持っていて約3 kg。同じ土俵の話ではありません。
同じ遺伝子でも、動く人では効き目が27%小さくなった
成人218,166人・子ども19,268人を集めたメタ解析(Kilpeläinen 2011)では、FTOリスクアレルによる肥満のオッズは全体で1アレルあたり1.23倍でした。ところがこれを身体活動で分けると、活動的な人では1.22倍、不活発な人では1.30倍。活動的な群では影響が27%減弱していました。
観察研究をまとめたメタ解析なので、「運動したから減った」と因果を確定させる設計ではありません。それでも、遺伝子を持っていることが結果を固定していないことは示しています。
日本でよく売られている遺伝子検査(β3アドレナリン受容体)について
日本のダイエット遺伝子検査でほぼ必ず出てくるのが、β3アドレナリン受容体遺伝子のTrp64Arg多型です。日本人のおよそ3割が持っているとされ、「基礎代謝が1日約200 kcal低い」という説明が広く流通しています。
ただし、この多型を持つ人と持たない人で食事・運動による減量効果に差は認められなかったという報告もあります。また、多型があるだけでは肥満リスクの上昇は見られず、エネルギーの過剰摂取という環境要因が加わってはじめて差が出たという報告もあります。
つまり「持っているかどうか」より「どう食べているか」が先に来る、という話です。
「体質に合わせた食事」は、12か月の試験で差が出なかった
Gardner CD, Trepanowski JF, Del Gobbo LC, et al. Effect of low-fat vs low-carbohydrate diet on 12-month weight loss in overweight adults and the association with genotype pattern or insulin secretion: the DIETFITS randomized clinical trial. JAMA 2018;319(7):667-679.
糖尿病のない18〜50歳・BMI 28〜40の成人609人を、健康的な低脂質食か低糖質食に12か月ランダムに割り付けた。あらかじめ遺伝子型パターンとインスリン分泌で層別してある。体重変化の中央値は低脂質 −5.3 kg、低糖質 −6.0 kg。食事×遺伝子型パターンの交互作用はなし(P = .20)、食事×インスリン分泌の交互作用もなし(P = .47)。
読み方に注意が必要です。この試験が否定したのは、「遺伝子タイプに合わせて低糖質か低脂質かを選ぶ」という方法です。遺伝学のすべてを否定したわけではありません。
そのうえで言えるのは、少なくともこの方法では減量効果に明確な差が出なかったということ。遺伝子検査で一発逆転の食事法が見つかる可能性は、低いと考えたほうがよさそうです。
洋梨体型ダイエット――下半身の脂肪は、健康の指標の上ではむしろ守りに働く
「洋梨型ダイエット」で調べている方に、先にお伝えしておきたいことがあります。
Manolopoulos KN, Karpe F, Frayn KN. Gluteofemoral body fat as a determinant of metabolic health. Int J Obes (Lond) 2010;34(6):949-959.(レビュー)
腹部の脂肪と殿部・大腿部の脂肪の比が、肥満に関連する病気や死亡と相関する。殿部・大腿部の脂肪量が多いことは、脂質・血糖のプロファイルの良さ、心血管・代謝リスクの低さと独立して関連する。この部位の脂肪は日々の代謝では腹部より不活発で、長期にわたって脂肪酸を貯め込むことで守りの性質を発揮すると考えられている。
下半身につく脂肪は、健康の指標の上では「悪玉」ではありません。むしろ守りに働いている可能性が高い。ですから、「危ないから落とす」という動機は、少なくとも下半身については成立しません。
もちろん、「スラックスがパツパツで不細工」「太ると足ばかりに肉がつく」という悩みそのものを否定するつもりはまったくありません。見た目の希望は、健康リスクとは別の話として、あっていいものです。
ただし、特定の部位だけを狙って脂肪を落とす方法は、いまのところ確認されていません。下半身だけに効くストレッチや筋トレで劇的に細くなる、という説明を見かけたら、その根拠がどこにあるかを確かめてください。
ただし「見た目が洋梨型だから安心」でもない
ここが、検査の側から見ていていちばん怖いところです。
Kalimeri M, et al. Postmenopausal Chinese-Singaporean women have a higher ratio of visceral to subcutaneous adipose tissue volume than Caucasian women of the same age and BMI. Diagnostics (Basel) 2021.
閉経後の女性、アジア系22人と白人22人。年齢(58歳 vs 57歳)もBMI(24.5 vs 24.6)もほぼ同じ。MRIで測ると、内臓脂肪/皮下脂肪比は0.32 対 0.25(+24.5%、p = 0.02)、内臓脂肪/総脂肪比は0.24 対 0.20(+18.2%、p = 0.02)だった。
44人・シンガポールの中国系・閉経後という限られた条件の研究なので、日本人にそのまま当てはめることはできません。それでも方向としては、同じBMIでも、アジア系では内臓脂肪の取り分が多い可能性があるということです。
だから私は、体型の見た目より腹囲と検査値を見てほしいと思っています。鏡は内臓脂肪を映しません。血液検査は映します。
ダイエットで血液検査の数値はいつ動く?血糖1週間・HbA1c3か月・LDL上昇の理由
太りやすい食べ物・太りにくい食べ物(4年あたりで何グラム違ったか)
やっと食べ物の話です。この順番にしたのには理由があります。体質を調べてもやることが変わらないなら、変えられるのは食べ方と動き方だけだからです。
先に読み方の注意を置きます。これから出す表は観察研究です。関連であって、その食品が体重を増やした・減らしたと証明したものではありません。そして1食品あたりの差は、4年で数百グラムから1キロ程度です。
| 食品 | 4年あたりの体重変化 | kg換算 |
|---|---|---|
| ポテトチップス | +1.69 ポンド | 約 +0.77 kg |
| ポテト(その他の調理法) | +1.28 ポンド | 約 +0.58 kg |
| 加糖飲料 | +1.00 ポンド | 約 +0.45 kg |
| 未加工の赤身肉 | +0.95 ポンド | 約 +0.43 kg |
| 加工肉 | +0.93 ポンド | 約 +0.42 kg |
| 野菜 | −0.22 ポンド | 約 −0.10 kg |
| 全粒穀物 | −0.37 ポンド | 約 −0.17 kg |
| 果物 | −0.49 ポンド | 約 −0.22 kg |
| ナッツ | −0.57 ポンド | 約 −0.26 kg |
| ヨーグルト | −0.82 ポンド | 約 −0.37 kg |
米国の成人120,877人を4年ごとに、最長20年追った観察研究です。年齢・各期間の開始時BMI・すべての生活習慣要因を同時に補正しています。いずれもP ≤ 0.005。関連であって因果ではありません。なお同じ4年間で、参加者の体重は平均で+1.52 kg増えています。
この表の「減少側」に並んでいるのは、ヨーグルト、ナッツ、果物、全粒穀物、野菜。派手さがまるでない顔ぶれです。
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発酵食品でいえば、このサイトでいちばん読まれているのはこちらの記事です。
納豆はちみつの効果は?栄養成分・食べ方・注意点を臨床検査技師が解説
「これを食べれば痩せる食べ物」は存在するのか
Xにこんな投稿がありました。「健康系番組の『痩せる食べ物5選!』のうち4つがアボカド・トマト・イカ・ヨーグルトだったので……いや太るだろそんなもんは」。
この失望は、正しい失望だと思います。
食べれば痩せる食品は、確認されていません。表1の減少側にある食品も、「食べ足す」ものとして見ると意味が反転します。ナッツを今の食事に追加すれば、当然カロリーは増えます。
正しい読み方は「置き換える」です。ポテトチップスの代わりにナッツ。加糖飲料の代わりに水やお茶。太りにくい食べ物=痩せやすい食べ物とは、増加側の食品を追い出してくれる食品のことだと考えるのが、この表のいちばん実用的な使い方です。
「太りやすい」と感じる人が、今日から変える3つの行動
ここまでの話を、明日から使える形にまとめます。
① 足すのではなく、置き換える
新しく何かを食べ始めるのではなく、表1の増加側にあるものを減少側のものに入れ替えます。「ナッツを食べる」ではなく「間食をポテトチップスからナッツにする」。ここを間違えると、健康的なものを食べているのに増える、という一番よくある失敗になります。
② 座っている時間を割る
NEATは運動ではありません。立ち上がる回数、歩く距離、家事の頻度です。ジムに行くかどうかより、1時間座り続けているかどうかのほうが効きます。実験で10倍の差を作っていたのは、まさにこの部分でした。
③ 体重は日ではなく、週の平均で見る
体重は水分だけで1〜2 kg動きます。日々の数字に反応すると、極端な制限に走りやすくなります。1週間の平均を、先週の平均と比べる。それだけで、動く必要のないところで動揺しなくなります。
「極端な制限をすれば早い」と思いたくなりますが、続かなければ意味がありません。私自身、20回失敗しています。
ダイエット成功の中身を全部出す|82.05kg→72.4kgの実データを臨床検査技師が論文で解剖する
「体質」を調べる代わりに、確認する数字
自分で体質タイプを分類・判定する科学的な方法はありません。2021年版の記事で私が載せていた「太りやすい人診断」のチェックリストも、出典のない自作のものでした。あれは取り下げます。
ただし、健康状態や代謝のリスクは、健診で客観的に確認できます。体質を占うより、こちらのほうがずっと役に立ちます。
| 見るもの | 見方 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 腹囲 | 朝、同じ条件で測る | 鏡に映らない内臓脂肪の目安。体型の見た目より情報量が多い |
| 体重の週平均 | 毎日測って、7日分を平均する | 水分の変動に振り回されずに傾向が見える |
| 中性脂肪・HDLコレステロール | 健診の基準値と、去年の自分の値の両方と比べる | 脂質の代謝がどう動いているか |
| 空腹時血糖・HbA1c | 同上 | 糖の処理がどう動いているか。HbA1cは直近1〜2か月の平均を映す |
| ALT・γ-GTP | 同上 | 脂肪肝の手がかり。体重より先に動くことがある |
臨床検査技師として毎日数字を見ていて思うのは、「去年の自分の値と比べる」ことの情報量です。基準値の中に収まっていても、去年から明らかに動いていれば、そこには意味があります。
医療機関の受診をおすすめする場合
急激な体重増加がある場合、あるいは食生活や運動不足に心当たりがないのに体重が増えていく場合は、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が背景にあることもあります。「体質だから」で自己完結せず、自己判断せずに医療機関を受診してください。
よくある質問
Q. 太りやすい体質は遺伝で決まっているのですか?
A. 「決まっている」とまでは言えません。双生児研究ではBMIのばらつきの40〜70%が遺伝で説明されますが、これは集団の話であって、あなたの体重の何%が遺伝かという意味ではありません。また遺伝率は加齢とともに下がります。
Q. 家族全員が太っています。私も無理ですか?
A. 無理ではありません。FTO遺伝子のメタ解析(218,166人)では、同じリスクアレルを持っていても、身体活動が多い群では肥満への影響が27%小さくなっていました。家族は遺伝だけでなく食卓と生活時間も共有しているので、その両方が効いています。
Q. 遺伝子検査を受ける価値はありますか?
A. 「自分の体質に合った食事法がわかる」という期待には応えにくいと思います。609人・12か月の試験(DIETFITS)では、遺伝子型パターンに合わせて低糖質か低脂質かを選んでも、減量効果に明確な差は出ませんでした。興味として受けるのは自由ですが、結果を待ってから行動を決める必要はありません。
Q. 「これを食べれば痩せる」食べ物はありますか?
A. 確認されていません。4年で体重の増え方に差がついた食品はありますが(表1)、それは「食べ足す」のではなく「置き換える」ときに意味を持つ数字です。
Q. 洋梨型(下半身太り)は、リンゴ型より危険ですか?
A. 健康の指標の上では、殿部・大腿部の脂肪が多いことはむしろ良いプロファイルと関連します。ただし「見た目が洋梨型だから内臓脂肪も少ない」とは限りません。腹囲と検査値で確認してください。
Q. 同じ量を食べているのに友達だけ太らないのはなぜですか?
A. 実験でも同じことが起きています。同じだけ食べさせて脂肪の増え方に10倍の差がつき、その差を説明したのは運動ではない日常の動き(NEAT)でした。本人に自覚がないことがほとんどです。
Q. 心当たりがないのに体重が増えます。病気の可能性はありますか?
A. 可能性はあります。甲状腺機能低下症などの内分泌疾患では体重が増えることがあります。急激な増加や、生活を変えていないのに増え続ける場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
まとめ
2021年の私は「太りやすい人=コルチゾールが多い人」と書きました。5年かけて論文を読み直した結論は、こうです。
- 太りやすい体質は実在します。気のせいでも、言い訳でもありません
- ただし体質は「魔法の代謝」ではありません。食欲と、運動ではない日常の動きを通じて効いています
- だから体質を調べても、やることはあまり変わりません。置き換える・座り続けない・週平均で見る、の3つです
「痩せやすい体」をつくるとは、結局どういうことか
痩せやすい体とは、代謝が特別な体のことではなく、無意識に動いていて、食べすぎにくい食べ方が習慣になっている体のことでした。少なくとも、いま読める研究はその方向を指しています。
そしてそれは、体質を調べなくても、今日から始められるものです。
脂肪肝にいい食べ物・肝臓に悪い食べ物ランキング|先に変える順番を検査技師が解説
参考文献
- Bouchard C, Tremblay A, Després JP, et al. The response to long-term overfeeding in identical twins. N Engl J Med 1990;322(21):1477-1482. PubMed
- Levine JA, Eberhardt NL, Jensen MD. Role of nonexercise activity thermogenesis in resistance to fat gain in humans. Science 1999;283(5399):212-214. PubMed
- Hall KD, Ayuketah A, Brychta R, et al. Ultra-processed diets cause excess calorie intake and weight gain. Cell Metab 2019;30(1):67-77.e3. PubMed
- Mozaffarian D, Hao T, Rimm EB, Willett WC, Hu FB. Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men. N Engl J Med 2011;364(25):2392-2404. PubMed
- Frayling TM, Timpson NJ, Weedon MN, et al. A common variant in the FTO gene is associated with body mass index and predisposes to childhood and adult obesity. Science 2007;316(5826):889-894. PubMed
- Kilpeläinen TO, Qi L, Brage S, et al. Physical activity attenuates the influence of FTO variants on obesity risk: a meta-analysis of 218,166 adults and 19,268 children. PLoS Med 2011;8(11):e1001116. PubMed
- Thorleifsson G ほか/Scandinavian HUNT・MDC・MPP研究. FTO, type 2 diabetes, and weight gain throughout adult life: a meta-analysis of 41,504 subjects. PubMed
- Li H ほか. Association of genetic variation in FTO with risk of obesity and type 2 diabetes with data from 96,551 East and South Asians. PubMed
- Gardner CD, Trepanowski JF, Del Gobbo LC, et al. Effect of low-fat vs low-carbohydrate diet on 12-month weight loss in overweight adults and the association with genotype pattern or insulin secretion: the DIETFITS randomized clinical trial. JAMA 2018;319(7):667-679. JAMA
- Manolopoulos KN, Karpe F, Frayn KN. Gluteofemoral body fat as a determinant of metabolic health. Int J Obes (Lond) 2010;34(6):949-959. PubMed
- Kalimeri M, et al. Postmenopausal Chinese-Singaporean women have a higher ratio of visceral to subcutaneous adipose tissue volume than Caucasian women of the same age and BMI. Diagnostics (Basel) 2021. PMC
- Pasquali R, Vicennati V. Activity of the hypothalamic-pituitary-adrenal axis in different obesity phenotypes. Int J Obes Relat Metab Disord 2002. PubMed

