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太もも痩せの正しい順番|むくみ・筋肉・脂肪の見分け方と脚やせ方法を論文で検証

太もも痩せの正しい順番。むくみ・筋肉・脂肪の見分け方と脚やせ方法を論文で検証

体重は落ちたのに、太ももだけ細くならない。筋トレしたら、むしろ太くなった気がする。

結論から書きます。太ももが細くならないのは、太ももの脂肪が特別に落ちにくいからではありません。原因が3つに分かれていて、そのどれに時間を使うかを間違えているだけです。

「脚だけ痩せない」と感じる背景には、むくみ・脂肪・筋肉という別々の話が同居しています。むくみに効く手は脂肪には効きませんし、その逆もそうです。順番を決めないまま「脚やせストレッチ」や「寝たまま10回」を足していくと、成果が出ないまま時間だけが過ぎます。

この記事を書いている私は臨床検査技師です。運動指導の専門家ではありません。ただ、数字を出す側の人間として「その数字は何を測ったものか」を確かめるのは仕事そのものです。この記事では、脚やせでよく語られる説を、実際の論文が何をどこまで測ったのかまで戻して並べ直します。

この記事でわかること
・体重・脂肪量・太ももの周囲径は、それぞれ別のものさしだということ
・カロリー制限をした女性61人で、太ももの皮下脂肪がどう動いたか
・むくみ・脂肪・筋肉のどれが大きそうかを見分けるための目安
・「太ももだけ狙って脂肪を落とす」を13研究1,158人で検証した結果
・女性が24週間筋トレしたとき、太ももの筋肉が実際に何%増えたか
・やることの優先順位と、細さだけを目標にしないほうがいい理由

先に断っておきます。この記事に「2週間で−5cm」の方法は出てきません。そういう数字が何を測ったものなのかは、記事の中で説明します。

目次

なぜ「太ももだけ痩せない」と感じるのか

体重・脂肪量・太ももの周囲径は別のものさしで、同じ方向に同じ速さでは動きません。だから「減ったのに変わらない」が起きます。

体重計に出る数字と、鏡に映る太ももは、そもそも測っているものが違います。ここを重ねて見ていると、「体重は減ったのに脚だけ残った」という結論に飛びやすくなります。

体重・脂肪量・太ももの周囲径は別のものさし

太ももの周囲径は、脂肪だけでなく筋肉・骨・体液を全部まとめた太さです。脂肪が減っても、他が動けば数字は動きません。

メジャーで測った1周の長さには、皮下脂肪も、大腿四頭筋やハムストリングスも、大腿骨も、その日の水分も入っています。脂肪が少し減った日に、たまたま前日の運動で一時的に張っていれば、数字は変わらないか、むしろ増えます。

ものさし何を測っているか短期間で動くか
体重体のすべて(水分・内容物を含む)1日で1kg前後動く
脂肪量脂肪組織の量(推定値)数週間単位でしか動かない
太ももの周囲径皮下脂肪+筋肉+骨+体液の合計むくみと張りで日内でも動く
表1:3つは別のものさしです。どれか1つが動かないことは、他の2つが動いていない証拠にはなりません

体重と体脂肪率がちぐはぐに動く理由は体重が減ったのに体脂肪率が増える理由で詳しく書きました。太ももの周囲径にも、同じ「測っているものが違う」問題があります。

実測:カロリー制限で末梢の皮下脂肪も減っていた

肥満女性61人が6か月のカロリー制限をした研究では、大腿など末梢の皮下脂肪が中心部より相対的に大きく減りました。

コロンビア大学のグループが、24〜68歳・BMI28以上の肥満女性61人(アフリカ系31人・白人30人)を対象に、上腕・大腿・ウエスト・ヒップの4か所の皮下脂肪を減量の前後で比べています。結果は、カロリー制限だけでも皮下脂肪は末梢のほうが中心部より「割合として」大きく減った、というものでした(Wang, Obesity Research 2002)。

ここは慎重に読む必要があります。この研究が測ったのは6か月後の前後差であって、「脚から先に落ちる」という時間の順番ではありません。言えるのは「太ももの脂肪が必ず最後まで残る、とは限らない」までです。61人・特定の食事介入という条件も外せません。

※「脚は最後に落ちる」「脚から先に落ちる」のどちらも、この研究からは言えません。この研究が否定しているのは「太ももの脂肪だけは動かない」という思い込みのほうです。

それでも見た目が変わりにくいと感じる理由

太ももは元の周囲径が大きいので、同じ割合だけ減っても、腕や手首ほど見た目が動きません。

もう一つは、脚には毎日むくみが乗ってくることです。夕方の太ももには、朝には無かった水分が加わっています。脂肪が着実に減っていても、測る時間帯がばらばらだと、その変化はむくみの上下に埋もれます。

太ももが太く見える原因を3つに分ける

原因はむくみ・脂肪・筋肉の3つに分かれ、打ち手が正反対になります。まずどれが大きそうかを見当づけます。

先に断っておきます。これは診断ではありません。以下の見分け方は、医学的に妥当性を検証された分類法ではなく、打ち手を決めるための目安です。多くの人は3つが混ざっていますし、割合も日によって変わります。

図解1:太ももが太く見える3つの原因(診断ではなく目安) むくみ 朝と夕方で太さが変わる すねを押すと痕が残る 立ち仕事・座り仕事が長い 一晩寝ると戻っている 最初にやること 同じ時刻に測る ふくらはぎを動かす 着圧・脚を上げる 脂肪 つまむと厚みがある 力を抜いても柔らかい 朝と夕方で大きく変わらない 体重の増減と連動する 最初にやること 続けられる範囲の エネルギー赤字をつくる 全身を動かす 筋肉 力を抜いても硬さが残る 前ももに張りを感じる 運動歴・競技歴がある つまめる厚みは薄い 最初にやること 前ももに偏っていないか 種目・負荷・回数を見直す 全身種目に振り直す 3つは混ざっているのが普通です。1つに決めきらず、割合の大きそうな順に手を打ちます ※片脚だけ急に腫れる・痛み・熱感・発赤・強い左右差があるときは、この3分類から外して受診を検討してください

むくみが大きそうな人のヒント

朝と夕方で太さが変わり、一晩寝ると戻っているなら、その差の正体は脂肪ではなく水分です。

確かめ方は単純で、起床直後と就寝前に同じ位置を測って比べるだけです。何cm差があれば、という基準値はありません。大事なのは差の大きさではなく、その差が翌朝には無くなっているかどうかです。無くなっているなら、それは減らせる脂肪ではなく、出入りしている水分です。

脂肪が大きそうな人のヒント

力を抜いても柔らかく、つまんだ厚みがあり、朝夕で大きく変わらないなら、脂肪の割合が大きいと考えます。

もう一つの目安は、体重の増減と太ももの太さが連動しているかです。体重が2〜3kg動いたときに太ももも一緒に動く感覚があるなら、脂肪が主役の可能性が高くなります。この場合、脚だけを対象にした運動より、全身の話に戻ったほうが早いです。

筋肉が大きそうな人のヒント

力を抜いた状態でも硬さが残り、つまめる皮下の厚みが薄いなら、筋肉の割合が大きいと考えます。

ただし「筋肉太り」を自認している人の多くは、実際には筋肉と脂肪とむくみが混ざっています。硬く感じても、その硬さが運動直後だけなら一時的な張りかもしれません。判断は運動していない日の、力を抜いた状態で行ってください。

これは「むくみ」ではないかもしれない、というサイン

片脚だけ急に腫れる、痛みや熱感や赤みがある、左右差が明らかに大きい。この場合は自己判断で対処しないでください。

両脚が夕方に同じくらいむくむのと、片脚だけが急に太くなるのは別の話です。後者は着圧やマッサージで様子を見る対象ではありません。腎臓・心臓・肝臓の疾患や、静脈の血栓、リンパの流れの問題などが背景にあることがあります。検査室で働いていると、こうした所見が最初に「脚のむくみ」として来ることは珍しくありません。心当たりがあれば医療機関で相談してください。

原因別にやること

むくみには物理的な対策、脂肪にはエネルギー赤字、筋肉には種目の見直し。この3つは互いに代わりになりません。

原因やること効くまでの時間やっても効かないこと
むくみ着圧、脚を上げる、ふくらはぎを動かす、測る時刻をそろえるその日〜数日脂肪量は減らない
脂肪続けられる範囲のエネルギー赤字、全身を使う運動数週間〜数か月太ももだけを狙うことはできない
筋肉・前ももの張り種目・負荷・回数・可動域の見直し、全身種目への振り直し数週間ストレッチだけで筋肉量は減らない
表2:原因別の打ち手。むくみ対策で脂肪は減りませんし、食事だけでは前ももの張りは変わりません

むくみ:着圧と、ふくらはぎを動かすこと

着圧は下腿の容積増加を抑えることが試験で確認されています。強さは20〜30mmHgのほうが有効でした。

健康な人を対象に、立ち仕事・座り仕事・両方の3群で着圧ストッキングを比べた試験があります。15〜20mmHgでも容積の増え方は抑えられましたが、20〜30mmHgのほうがさらに抑えられ、その差は立位より座位のほうが大きく出ました(Quilici Belczak, International Journal of Vascular Medicine 2018)。

ただしこれは職業性のむくみを対象にした試験で、「太もも痩せ」の効果を示したものではありません。着圧が変えるのは水分の溜まり方であって、脂肪量ではないという前提は動きません。ふくらはぎ痩せるグッズで書いたことと同じ整理です。

道具を使わない側でいちばん効くのは、ふくらはぎを動かすことです。座りっぱなしのときに、かかとの上げ下げを数十回。ふくらはぎの筋肉が収縮して静脈を押し戻す働きは、着圧より前に置いていい手です。

脂肪:続けられる範囲のエネルギー赤字

脂肪量を動かせるのは、消費が摂取を上回る状態を続けたときだけです。食事でも運動でも、そこは同じです。

「食事でしか脂肪は減らない」という言い方をよく見ますが、これは正確ではありません。運動単独でも脂肪量は減ります。食事のほうが効率がいいのは、赤字をつくる量が大きく取りやすいからで、運動が脂肪に無力だからではありません。

重要なのは「続けられる範囲」のほうです。急激に削ると、減るのは脂肪だけではありません。皮下脂肪の落とし方にも書きましたが、落とす速さを上げるほど、除脂肪も一緒に持っていかれます。太ももを細くしたいなら、筋肉を減らして細くするのは目的から外れています。

筋肉・前ももの張り:確認したい点

前ももの張りには、筋肉量・脂肪・姿勢・関節角度・トレーニング量・一時的なパンプ・むくみが混ざります。

よく「フォームが悪いから前ももばかり張る」と説明されますが、原因を一つに決めつけることはできません。確認する順に並べるとこうなります。

  • タイミング:張りを感じるのが運動直後だけなら、一時的なパンプの可能性がある
  • 種目の偏り:スクワットとランジばかりで、股関節を使う種目(ヒップヒンジ系)が入っていないか
  • :週あたりの脚の総セット数が増えすぎていないか
  • むくみとの重なり:張っていると感じる日が、立ち仕事の日に偏っていないか

ストレッチは可動域と感覚を変えますが、筋肉量そのものを減らすものではありません。太腿が痩せるストレッチで検証したとおりです。フォームローラーも同じで、変わるのは張りの感じ方であって、脂肪や筋肉の量ではありません。

座りながらできることは「むくみ対策」として使う

座位でできる運動は、消費エネルギーが小さいので脂肪を減らす手にはなりません。むくみ対策として置きます。

「座りながら脚やせ」で紹介される動きは、ほとんどがふくらはぎと足首を動かすものです。これは静脈を押し戻すという意味で理にかなっています。ただし、それで消費するエネルギーは1回数kcalの世界です。むくみの受け皿としては有効、脂肪の受け皿としては無効と分けて使ってください。

太ももだけ狙って脂肪を落とせるのか

片側だけ鍛えた13研究1,158人をまとめた解析では、鍛えた側と鍛えていない側で脂肪の減り方に差がありませんでした。

いわゆる部分痩せ(スポットリダクション)です。太もものトレーニングで太ももの脂肪が落ちるなら話は早いのですが、それを直接検証する方法として使われてきたのが「片側だけ鍛える」設計でした。同じ人の左右を比べれば、食事も生活も条件が揃うからです。

図解2:部分痩せ研究の見取り図 片側だけ鍛えた13研究のまとめ 1,158人(14〜71歳) 鍛えた側 と 鍛えていない側 を比較 鍛えた側 鍛えていない側 脂肪の減り方に差なし 統合効果量 −0.03(95%CI −0.10〜0.05) 2023年の小規模RCT 過体重の男性16人・10週×週4回 腹部の持久系運動を追加(消費は揃える) 体幹脂肪 約7%減 対照群は変化なし ただし 対象=男性 / 部位=腹部 運動=筋トレではなく持久系 読み方:「生理学的に絶対不可能」とまでは言えない しかし条件が違いすぎるため、太ももを細くする実践法として一般化できる証拠ではない =「太ももの筋トレで太ももの脂肪を狙い撃つ」は、いまのところ期待しにくい

片側だけ鍛えた13研究・1,158人

13研究1,158人(14〜71歳)を統合した結果、局所トレーニングによる局所の脂肪減少は認められませんでした。

統合効果量は−0.03(95%信頼区間 −0.10〜0.05)で、ゼロをまたいでいます(Human Movement 2022;23(3):1–14)。つまり、鍛えた側の脂肪が余分に減るという傾向すら見えなかった、ということです。

この結果から言えるのは、「太ももの筋トレは、太ももの脂肪を狙い撃つ手段としては期待しにくい」ということです。筋トレそのものが無意味という話ではありません。

部分痩せを支持する2023年の小規模RCT

過体重の男性16人に腹部の持久系運動を足した試験では、体幹脂肪が約7%減り、対照群は変わりませんでした。

10週間・週4回、両群のエネルギー消費を揃えたうえで、片方だけ腹部の持久系インターバルを加えています。結果は体幹脂肪が1,170±1,093g(約7%)減で、著者らは部分痩せを支持すると述べています(Brobakken, Physiological Reports 2023)。

ただし、この研究は先ほどのメタ解析を否定したものではありません。対象は男性16人、部位は腹部、運動は筋トレではなく持久系と、条件がまるで違います。「生理学的に絶対不可能」とまでは断定できない、という程度に受け取るのが妥当で、太ももを細くする実践法として一般化できる証拠ではありません。

「2週間で−5cm」の正体

2週間で周囲径が数cm動くとき、その中身はほぼ水分と測定条件の差です。脂肪ではありません。

SNSで数千から1万を超える反応を集めている「寝たまま10回」「毎日3分」の脚やせ動画では、2週間で−5〜−8cmという数字がよく出ます。ここまで見てきたとおり、脂肪はその速さでは減りませんし、局所トレで局所の脂肪が余分に落ちることも確認されていません。

では嘘なのかというと、そうとも限りません。むくみが強い人が、脚を動かす習慣を持ち、測る時刻を夕方から朝に変えれば、数cmは普通に動きます。変わったのは水分と測定条件です。そして水分の分は、その習慣をやめれば戻ります。

細くするなら何を優先するか

優先順位は、エネルギー赤字・全身を使う運動・筋トレ・むくみ対策の順です。効果の大きさで並べています。

やること何に効くか根拠の強さ
1続けられる範囲のエネルギー赤字脂肪量そのもの強い(介入研究多数)
2全身を使う運動(歩く・自転車・大きい筋肉の種目)脂肪量、消費量強い
3筋トレ減量中の除脂肪維持、形中〜強い
4むくみ対策(着圧・脚を上げる・ふくらはぎ)その日の見え方中(下腿の容積で確認)
太ももだけを狙う運動局所の脂肪弱い(13研究で差なし)
表3:やることの優先順位。下に行くほど「見え方」寄りで、上に行くほど「脂肪量」寄りです

筋トレで脚は太くならないのか

未経験の女性85人が24週間鍛えた研究では、太ももの筋横断面積の増加は12週で約3%、24週で約4.5%でした。

平均23.1歳の未経験女性85人を、全身トレーニング・上半身のみ・非運動の各群に分け、MRIで筋横断面積を追った研究です。太ももの増加が見られたのは全身トレーニング群だけで、上半身のみの群では増えていません(Nindl, Medicine & Science in Sports & Exercise 2004)。

ここで注意が要ります。この3%は筋肉そのものの断面積であって、メジャーで測る太ももの周囲径が3%増えるという意味ではありません。周囲径には皮下脂肪も骨も体液も含まれるので、換算はできません。言えるのは「筋組織の増え方は数%の規模だった」までです。「筋トレを始めたら脚が別物のように太くなる」という心配は、この数字とは合いません。

やる運動は2〜4種でいい

種目を増やすより、続く量に収めるほうが結果につながります。全身の大きい筋肉を使うものを2〜4種で十分です。

  • 歩く・自転車:消費量をつくる土台。時間で管理する
  • スクワット系:脚全体。前ももだけに偏るなら深さと重心を見直す
  • ヒップヒンジ系(デッドリフト・ヒップスラスト等):股関節側。前もも偏重の是正にもなる
  • かかとの上げ下げ:ふくらはぎ。むくみ対策として日中に分散して入れる

脚の可動域そのものが気になるなら開脚と体の変化も併せて読んでください。ただし可動域が広がることと脚が細くなることは、別の話です。

どのくらいで見た目が動くか

むくみ由来なら数日、脂肪由来なら数週間から数か月です。1〜2週間で判断しないでください。

測るときは、起床直後・トイレの後・同じ位置と決めてしまうのが確実です。週1回だけ記録して、4週ぶんを並べて向きを見ます。日々の数字を追うと、むくみの上下に振り回されて、脂肪側の変化が見えません。

細さだけを健康の目標にしない

大腿が極端に細い集団で、心血管疾患と総死亡が多かったという観察研究があります。細ければ良い、ではありません。

大腿が細い集団でリスクが高かった観察研究

デンマークの男女2,816人を追跡した研究で、大腿周囲径が小さいほど心血管疾患と総死亡が多く見られました。

男性1,436人・女性1,380人を対象に、身長・体重・大腿・ヒップ・ウエストの周囲径と体組成を測って追跡したものです。おおよそ60cmを下回るあたりからリスクの上がり方が急になり、それより太くしても追加の恩恵は見られませんでした(Heitmann & Frederiksen, BMJ 2009)。

※これは観察研究で、対象はデンマークの一般集団です。「60cm以下は危険」「日本人女性も60cm以上にすべき」という基準として使えるものではありません。大腿周囲径は筋肉量の代理指標にもなるため、細さそのものが原因かどうかも分かりません。ここから言えるのは「極端に細い大腿が健康上有利とは限らない、という観察研究がある」までです。

下半身の脂肪は腹部脂肪と同じ扱いではない

下半身に付く脂肪は、腹部の脂肪と同じ健康リスクとは限らない、という報告が続いています。

米国のNHANES(2003〜2007)を解析した研究では、下半身型(gynoid)の脂肪量が多いほど全死因死亡が低い関連が示され、女性と高齢者で顕著でした(Frontiers in Cardiovascular Medicine 2023)。ただし観察研究であり、最も低リスクだったのは中間の層で、単純に「多いほど良い」という形ではありません。

それでも、太ももに付いた脂肪を、内臓脂肪と同じ危険物のように扱う必要はなさそうです。内臓脂肪のほうは別に話が立ちます(内臓脂肪を落とす食べ物)。

セルライトは「確実に消せると証明された方法がない」

思春期以降の女性の80〜90%に見られ、確実に消せると言える治療法はまだ確認されていません。

67件の論文を精査したレビューでは、ランダム化プラセボ対照試験は19件しかなく、レビュー時点でどの治療にも明確に高い有効性は確認できませんでした(Luebberding, American Journal of Clinical Dermatology 2015)。限定的に可能性が示されたのは音響波療法と一部のレーザーのみです。

「消えない」と断定しているわけではありません。「確実に消せると証明された方法はない」というのが現在地です。セルライトを消す前提で計画を立てないほうが、落胆せずに済みます。

よくある質問

Q. 骨格ウェーブだと太ももは痩せにくいですか?

A. 骨格タイプの診断だけで、脂肪の減りやすさを医学的に判定できる根拠は乏しいです。似合う服の選び方としては有用でも、脂肪量の動き方を予測するものではありません。「骨格タイプだから痩せない」で止めず、むくみ・脂肪・筋肉のどれが大きいかに戻したほうが打ち手が決まります。

Q. ストレッチやマッサージで脂肪は減りますか?

A. 減りません。変わるのは可動域と、むくみによる一時的な見え方です。それ自体は無駄ではありませんが、「脂肪を減らす手」の枠に入れて期待すると外れます。

Q. 筋トレをやめれば脚は細くなりますか?

A. 筋肉が減った分は細くなりますが、代謝面では損です。太ももの太さのうち筋肉が占める割合は、多くの人が思っているほど大きくありません。まず、むくみと脂肪の側を確かめてください。

Q. 有酸素運動と筋トレはどちらを先にやるべきですか?

A. どちらが先かより、続く量に収まっているかが効きます。脂肪量を動かすのはエネルギー赤字なので、まず総量を確保してください。筋トレは減量中の除脂肪維持のために入れます。

Q. 太もも痩せのサプリやグッズは効きますか?

A. 局所の脂肪を減らす手段として有効性が確認されたものはありません。着圧のように、むくみに対して働くことが試験で示されているものはあります。目的を「脂肪」ではなく「むくみ」に置くなら、選ぶ意味はあります。

Q. 脂肪吸引や脂肪溶解注射はどうですか?

A. 医療行為なので、この記事で可否を判断する立場にはありません。ただ、SNSでは「効果が実感できなかった」「時間が経って表面がでこぼこになった」という声も一定数あります。受けるなら、費用と合併症の説明を医療機関で直接確認してください。

まとめ

この記事でいちばん言いたかったのは、「太ももだけを相手にしない」ということです。

体重・脂肪量・周囲径は別のものさし。1つが動かないことは他の証拠にならない
・肥満女性61人・6か月のカロリー制限では、末梢の皮下脂肪が中心部より相対的に大きく減った。「太ももは必ず最後まで残る」とは言えない
・原因はむくみ・脂肪・筋肉の3つ。診断ではなく目安として見当をつけ、打ち手を分ける
・片側だけ鍛えた13研究1,158人で、鍛えた側の脂肪は余分に減らなかった(統合効果量−0.03)
・2023年に部分痩せを支持する小規模RCTもあるが、男性16人・腹部・持久系と条件が違う
・女性85人・24週の筋トレで、太ももの筋横断面積の増加は12週で約3%。周囲径に換算はできない
「2週間で−5cm」の中身は水分と測定条件。やめれば戻る
・優先順位はエネルギー赤字→全身運動→筋トレ→むくみ対策
細ければ良いわけではない。大腿が極端に細い集団でリスクが高かった観察研究がある

太ももが細くならないのは、あなたの脚が特別だからではありません。3つの原因が混ざったまま、1つの方法で全部を解こうとしていただけです。まず起床直後と就寝前に測って、その差が翌朝に戻るかどうかを見てください。そこから先の順番は、この記事の表3のとおりです。

参考文献

  1. Wang J, Laferrère B, Thornton JC, Pierson RN Jr, Pi-Sunyer FX. Regional subcutaneous-fat loss induced by caloric restriction in obese women. Obes Res. 2002;10(9):885-890. PubMed
  2. Ramírez-Campillo R, ほか. A proposed model to test the hypothesis of exercise-induced localized fat reduction (spot reduction), including a systematic review with meta-analysis. Hum Mov. 2022;23(3):1-14. Human Movement
  3. Brobakken MF, Krogsæter I, Helgerud J, Wang E, Hoff J. Abdominal aerobic endurance exercise reveals spot reduction exists: A randomized controlled trial. Physiol Rep. 2023;11(22):e15853. PMC
  4. Nindl BC, Harman EA, Marx JO, ほか. Changes in muscle hypertrophy in women with periodized resistance training. Med Sci Sports Exerc. 2004;36(4):697-708. PubMed
  5. Quilici Belczak SQ, Pereira de Godoy JM, Ramos RN, de Oliveira Ramos R, Caffaro RA. Comparison of 15-20 mmHg versus 20-30 mmHg Compression Stockings in Reducing Occupational Oedema in Standing and Seated Healthy Individuals. Int J Vasc Med. 2018;2018:2053985. PMC
  6. Heitmann BL, Frederiksen P. Thigh circumference and risk of heart disease and premature death: prospective cohort study. BMJ. 2009;339:b3292. BMJ
  7. Zhang X, ほか. Association between android fat mass, gynoid fat mass and cardiovascular and all-cause mortality in adults: NHANES 2003-2007. Front Cardiovasc Med. 2023;10:1055223. Frontiers
  8. Luebberding S, Krueger N, Sadick NS. Cellulite: an evidence-based review. Am J Clin Dermatol. 2015;16(4):243-256. PubMed
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この記事を書いた人

臨床検査技師。専門は生化学検査。健診センターのデータ業務、治験コーディネーター(CRC)、総合病院、公立病院の経営推進課を経て、現在はWEBマーケティングが本業。自身が20回のダイエット失敗のあと88kgから65kgへ。論文を読んで気になったものを自分の体で試し、体重・腹囲・血液検査・体組成という数値で確かめた記録を書いています。効くものは効くと、効かないものは効かないと書きます。広告主から記事内容の指定を受けることはありません。

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