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ダイエットで血液検査の数値はいつ動く?血糖1週間・HbA1c3か月・LDL上昇の理由

ダイエット中の血液検査。検査室に並ぶ試験管と分析装置

体重は落ちたのに、健診の紙を見たら思ったほど良くなっていない。むしろ赤い印が増えている。――この落差は、あなたのダイエットが失敗したからではなく、血液検査の数値が体重に遅れて、しかも項目ごとにバラバラの速さで動くから起きます。

いちばん速いのは空腹時血糖で、超低カロリー食を始めた7日目には動きます(Lim, Diabetologia 2011)。いちばん遅いのはHbA1cで、これは赤血球の寿命が約120日あるという体の作り上、どうやっても1〜3か月かかります。そして厄介なことに、減量の途中で一時的に悪くなる項目が2つあります。LDLコレステロールと尿酸です。

この記事でわかること

  • 7つの検査項目が、それぞれいつから動くのか(1週間・数週・1〜3か月)
  • 「体重は落ちたのにLDLと尿酸が上がった」の仕組みと、続けていいかの判断
  • 健診の紙にある2本の判定ライン(保健指導判定値と受診勧奨判定値)の読み分け
  • 何%痩せると何が変わるのか(5%・8.6%・10%)
  • 健診前の「にわか節制」で、数値がどう狂うか

筆者は臨床検査技師です。検査室の側から見ていると、同じ人の数値でも、採血の条件ひとつで判定の線をまたいでしまうことがあります。検査値は「点」ではなく「線」で見るものという前提から始めます。

目次

結論:血液検査は体重に遅れて動く|7項目の変動タイムライン

先に全体像を出します。横軸は「ダイエットを始めてからの時間」です。

図解1:どの数値が、いつから動くのか 横軸=ダイエット開始からの時間/赤は「一時的に悪くなることがある」項目 開始 1週 1か月 3か月 6か月 12か月 空腹時血糖 中性脂肪 尿酸 ↑一時上昇 LDL ↑減量中に上がることがある HbA1c ALT・AST γ-GTP ※痩せた日数ではなく「飲まなかった日数」で決まる 濃い色=はっきり動き始める時期/淡い色=以後も改善が続く時期。1か月時点で動いていない項目があるのは、 失敗ではなく、その項目がまだ順番待ちだからです。

空腹時血糖=1週間で動く(最速)

2型糖尿病の11人に1日600kcalの食事を8週間続けた研究では、7日目の時点で空腹時血糖が9.2±0.4 mmol/Lから5.9±0.4 mmol/L(およそ166 mg/dLから106 mg/dL)へ下がりました(Lim, Diabetologia 2011)。肝臓にたまっていた中性脂肪も、8週間で12.8±2.4%から2.9±0.2%まで減っています(p=0.003)。

空腹時血糖がここまで速いのは、この値が主に「今の肝臓の状態」を映しているからです。肝臓の脂肪が減れば、インスリンが効くようになり、朝の血糖はすぐ落ちます。ダイエットの手応えを最初に確かめられるのがこの項目です。

中性脂肪=数週。ただし直前の食事と酒で簡単にぶれる

脂肪肝のある人を対象にした隔日断食の試験では、4週間で体重が4.56±0.41kg(6.1±0.5%)減り、12週間で中性脂肪が約25%低下しました(Cai, J Hum Nutr Diet 2019)。時間制限食でも約20%です。

ただしこの項目には落とし穴があります。中性脂肪は、その日に何を食べたかで大きく動きます。食後の中性脂肪は3〜4時間でピークになり、6〜8時間は高いままです。通常の食事でも+0.1〜0.3 mmol/L(およそ+9〜27 mg/dL)、高脂肪の食事なら空腹時の1.5倍以上になります(Tromsø study, Frontiers in Nutrition 2023)。前日の飲み会ひとつで、3か月の努力が紙の上から消えることがあります。

HbA1c=1〜3か月。1か月目に動かないのは失敗ではなく仕様

HbA1cは、赤血球のヘモグロビンにブドウ糖がくっついた割合です。赤血球の寿命は約120日なので、この値は過去2〜3か月の平均血糖を映します。

ここで多くの人が誤解しているのは、「均等な平均ではない」という点です。直近30日が結果の約50%を占め、60〜90日前は約25%しか寄与しません。

図解2:HbA1cは「直近の1か月」で半分が決まる 直近30日 ≒50% 31〜60日前 ≒25% 61〜90日前 ≒25% 採血日 3か月前 だから「今月から食事を変えた」段階のHbA1cは、まだ先月・先々月の自分の記録です。 2か月目からが本番。1か月目で判定しないでください。

実際、生活習慣の介入をした5,145人の1年目の結果では、体重が8.6%減った群でHbA1cが7.3%から6.6%へ下がっています(Look AHEAD, Diabetes Care 2007)。対照群は7.3%から7.2%でした。年単位で見れば確実に動く項目です。

ALT・AST=肝臓の脂肪が減ってから、さらに1〜3か月遅れる

ここが最も誤解されている項目です。肝臓の脂肪が落ちた瞬間と、ALTが下がる瞬間は一致しません。

炭水化物を制限して短期間で減量した研究では、肝臓の中性脂肪は明確に減ったのに、介入直後のALTは変わりませんでした。ところが平均3.2±1.3か月後に追跡すると、ALTは88±34 U/Lから33±16 U/Lへ下がり、79%の人が正常化していました(Browning, Am J Clin Nutr 2011)。

12週間の時間制限食と乳卵菜食を組み合わせた試験でも、体重−8.07±4.31kgに対してALT−17.14±14.33 U/Lという結果でした(Scientific Reports 2025)。脂肪が抜けたあと、傷んだ肝細胞が落ち着くまでの時間が必要だ、と考えると腑に落ちます。

肝臓の数値を動かしたい人が最初に見るべきは食べ物の順番です。詳しくは脂肪肝にいい食べ物・肝臓に悪い食べ物ランキングにまとめています。

γ-GTP=「痩せたから」ではなく「飲まなかったから」動く

X(旧Twitter)で健診結果を喜んでいる投稿を集めると、いちばん多いのがγ-GTPです。ただしこの項目は、体重よりお酒に反応します。

γ-GTの半減期は14〜26日で、8週間断酒を続けた32人での実測では26日と算出されています(Orrego, 1985)。つまり2〜3週で半分になり、4〜5週でおおむね正常域へ戻ります。「半年で−7kg、γ-GTPが正常になった」という体験の多くは、同時にやめた酒の効果と分けられていません。

逆に言えば、γ-GTPだけが下がって他が動いていないなら、それは減量ではなく節酒の成果です。ダイエットの答え合わせに使うなら、飲酒量の記録とセットで見てください。

LDLコレステロール=急激な減量の途中で上がることがある

ここが本記事でいちばん伝えたい部分です。

肥満の女性6人が超低カロリー食で5〜7か月かけて30.3±3.7kg減量し、その後2か月以上の体重維持期を過ごした研究があります(Phinney, Am J Clin Nutr 1991)。総コレステロールの推移はこうでした。

図解3:減量中のコレステロールは「下がる→上がる→下がる」 Phinney 1991/肥満女性6名・超低カロリー食で30.3kg減量(単位 mmol/L) 6.0 4.8 3.6 5.49 3.62 5.95 4.92 開始前 1〜2か月 減量の途中 体重維持期 減量の途中では、開始前より高くなっていました。体重が止まると下がっています。

著者はこの上昇を、脂肪組織にためこまれていたコレステロールが、脂肪の分解にともなって血中に出てきたためと解釈しています。実際、末梢(腕・脚)の脂肪組織のコレステロール量は変わらないのに、腹部の脂肪組織では有意に増えていました。

ただし、この研究は6人・超低カロリー食・半年で30kg減という極端な条件です。「痩せると必ずLDLが上がる」という話ではありません。月1〜2kgのゆるやかな減量では、一時的に上がる人もいれば、なかなか下がらない時期がある程度と考えるのが妥当です。

尿酸=減量の初期に上がることがある

もうひとつの「裏切り項目」が尿酸です。仕組みははっきりしています。

  • ケトン体との競合:糖質を絞ると増えるケトン体は、腎臓で尿酸を再吸収するURAT1などの輸送系を取り合います。結果、尿酸が捨てられにくくなります。
  • 脱水:糖質を減らすと肝臓のグリコーゲンと一緒に水分が抜けます。血液が濃くなれば尿酸も濃く出ます。
  • 細胞の入れ替わり:組織の分解が進むと、プリン体そのものの供給が増えます。

上昇はおおむねケトーシスに入ってからの2〜8週に集中し、体が慣れると元に戻る、あるいは開始前より下がります。糖質を大きく削る食事法を始めたときの体の反応は糖質制限の初期症状にも書いています。

「体重は落ちたのに数値が悪い」2大トラブルの正体

X上で「痩せたのに数値が悪い」と困っている投稿を集めると、中身はほぼこの2項目に集中します。「ゴリゴリにダイエットを頑張り万全の態勢で挑んだ今回、高尿酸値です。要再検査です」「肝機能とかの数値は劇的に改善したんだけど、LDLコレステロール値だけはしぶとい」といった具合です。

表1:減量中に上がりやすい2項目と、その背景
項目 何が起きているか 起きやすいやり方 いつ戻るか
LDL
コレステロール
脂肪組織にためていたコレステロールが、脂肪の分解とともに血中へ出てくる(Phinney 1991) 超低カロリー食、短期間での大幅減量、脂質の割合が高い食事法 体重が止まる(維持期に入る)と下がる
尿酸 ケトン体が腎臓の尿酸排泄と競合する。脱水と細胞の分解も加算される 強い糖質制限、断食、水分不足をともなう減量 ケトーシス開始からおおむね2〜8週で落ち着く

【判断基準】このままダイエットを続けていいのか、止めるべきか

いちばん知りたいのはここだと思います。検査室の側から見た整理はこうです。

3つの見分け方

① 今まさに体重が減り続けている最中か
そうであれば、上昇は減量のプロセスの一部である可能性があります。上の研究では、体重が止まった維持期に入ってから下がりました。

② 減量のペースが急すぎないか
極端な糖質制限や絶食に寄っているほど、尿酸とLDLは動きます。ペースを緩めるだけで景色が変わることがあります。

③ 体重が止まって半年たっても高いままか
この場合はダイエットの影響では説明できません。家族性高コレステロール血症や甲状腺機能の問題など、別の原因を考える段階です。医療機関で相談してください。

自己判断で終わらせないでください

後述する受診勧奨判定値(LDL 140 mg/dL以上、尿酸 8.0 mg/dL以上など)を超えている場合は、「ダイエット中の一時的なものだろう」と自分で結論を出さず、医療機関に相談してください。この記事は検査値の読み方を説明するもので、診断や治療の判断をするものではありません。

それでも「いつまでも」ではない|長期には下がる

年次健診を追跡した2024年の縦断研究では、尿酸を6 mg/dL未満まで下げられた割合が、小さな減量で1.25倍、中等度の減量で2.82倍、大きな減量で5.27倍になっていました。初期の上昇は通過点で、体重が落ちきったあとの尿酸は、落とした分だけ下がります。

自分の健診結果の紙を正しく読む|判定値には2本の線がある

「良くなった/悪くなった」を語る前に、線をどこに引くかを揃えておきます。厚生労働省の特定健診には2種類の判定値があります。

  • 保健指導判定値=ここから外れたら、生活習慣を見直す段階
  • 受診勧奨判定値=ここからは、医療機関で診てもらう段階
表2:主要項目の判定値(標準的な健診・保健指導プログラム 令和6年度版)
項目 保健指導判定値 受診勧奨判定値 採血条件など
空腹時中性脂肪 150 mg/dL以上 300 mg/dL以上 食後10時間以上
随時中性脂肪 175 mg/dL以上 300 mg/dL以上 食後10時間未満
HDLコレステロール 40 mg/dL未満
LDLコレステロール 120 mg/dL以上 140 mg/dL以上
Non-HDLコレステロール 150 mg/dL以上 170 mg/dL以上
空腹時血糖 100 mg/dL以上 126 mg/dL以上 食後10時間以上
HbA1c(NGSP値) 5.6%以上 6.5%以上 小数点以下1桁
AST(GOT) 31 U/L以上 51 U/L以上
ALT(GPT) 31 U/L以上 51 U/L以上
γ-GT(γ-GTP) 51 U/L以上 101 U/L以上
尿酸 7.0 mg/dL超 8.0 mg/dL以上
血圧 130/85 mmHg以上 140/90 mmHg以上
腹囲 男性85cm・女性90cm以上 内臓脂肪100cm²相当

中性脂肪だけは「空腹時150/随時175」と線が2本ある

令和6年度版で新しく入ったのが「随時中性脂肪 175 mg/dL」です。食事の影響が大きすぎるため、空腹時(食後10時間以上)と随時(10時間未満)で線そのものを分けました。

つまり同じ人の同じ体でも、採血が食後何時間かというだけで「異常」の線が25 mg/dL動きます。去年は朝いちばんで受けて、今年は昼過ぎに受けた――それだけで前後比較は成立しなくなります。

前後で比べるなら、採血条件と検査機関を揃える

検査室の側の事情も書いておきます。

  • 施設差・測定法差がある。基準範囲は検査室ごとに設定されています。他の病院で測った値と単純に引き算しないでください。
  • LDLは計算で出していることがある。Friedewald式で算出した場合はその旨が明示されます。中性脂肪が高いと算出値がずれます。
  • 脱水は数値を押し上げる。血液が濃くなれば、尿酸もヘモグロビンも見かけ上高く出ます。前日から水分を控えるのは逆効果です。

何%痩せれば数値が変わるのか|5%が最初の関門、10%で肝臓が変わる

「何kg痩せればいいか」ではなく「体重の何%を落とすか」で考えると、研究の結果とそのまま突き合わせられます。

表3:減量率ごとに確認されていること
減量率 確認されている変化 研究
5% 脂肪組織・肝臓・筋肉のインスリン感受性とβ細胞機能が改善。ただし炎症マーカーはまだ動かない Magkos, Cell Metabolism 2016(5.1±0.9%減 n=19)
5%以上 脂肪肝炎(NASH)の消失が51/88人=58% Vilar-Gomez, Gastroenterology 2015(生検確定NASH 293名・52週)
8.6% HbA1cが7.3%→6.6%(対照群は7.3%→7.2%)。中性脂肪・HDL・血圧も対照より有意に改善 Look AHEAD, Diabetes Care 2007(n=5,145・1年)
10%以上 全員で活動性スコアが低下、90%でNASH消失、45%で線維化が改善 Vilar-Gomez, Gastroenterology 2015
15kg以上 12か月時点で46%が糖尿病寛解(薬なしでHbA1c 6.5%未満/対照4%) DiRECT, Lancet 2018

体重70kgの人なら、5%は3.5kg、10%は7kgです。まず3.5kgで血糖まわりが動き、7kgで肝臓の組織そのものが変わるという順番になります。

なお、Vilar-Gomezの論文の抄録に載っているのは「5%以上」「10%以上」という段だけで、5%未満や5〜10%の細かい層別値は書かれていません。ここは想像で埋められない部分です。

カロリーの計算だけで体重が決まらない理由についてはカロリー制限では痩せない理由で別に扱っています。

健診前の「にわか節制」で数値はどう狂うか|正しい状態を測るための注意点

健診の直前だけ酒を止める、数日だけ食事を減らす、前日から絶食する。X上には「悪あがき」「駆け込み」という自己申告つきで大量に投稿されています。

ここで「どうすれば数値を良く見せられるか」を書くつもりはありません。血液検査は健診をパスするためのテストではなく、自分の体の現在地を知るためのものだからです。ただし、直前の行動で数値が動くこと自体は事実なので、「本来の状態が測れなくなるリスク」として整理しておきます。

表4:健診直前の行動が、測定値に与える影響
直前の行動 数値への影響 何が問題か
2週間の断酒 γ-GTPは下がる(半減期14〜26日) 肝臓が治ったわけではない。普段の飲酒量が数値に反映されなくなり、リスクを見落とす
前夜の食事を軽くする 中性脂肪と随時血糖は下がる 採血条件を揃える意味では正しいが、普段の食生活の像がぼやける
数日〜1か月の急な減量 体重・腹囲は下がる。尿酸とLDLは上がりうる 減量の途中でいちばん数値が乱れる時期を、わざわざ健診日にぶつける形になる
直前の絶食・水分制限 低血糖、ケトン体上昇、脱水による尿酸の見かけ上の上昇 「要再検査」を自分で作り出す。体調そのものが危険
直前の激しい筋トレ AST・ALTが上昇 健常男性15人に1時間のウエイトトレーニングをさせた研究では、AST・ALTが7日以上にわたって有意に上昇した(Pettersson, 2008)。肝障害と見分けがつかない値になる
直前1週間の節制 HbA1cは動かない 直近30日でも寄与は約50%。数日の節制は誤差の範囲

特に最後から2番目は覚えておく価値があります。「健診の前に運動しておこう」は、肝機能の項目に関しては逆効果です。筋肉が壊れるとASTとALTが血中に出るためで、このときはCK(クレアチンキナーゼ)やミオグロビンも大きく上がります。CKを一緒に見れば筋肉由来か肝臓由来かは区別できますが、健診の基本項目にCKは入っていません。

臨床検査技師の視点|検査値は「点」ではなく「線」で見る

検査室では1日に何百件もの血液データを扱います。そこから見えてくるのは、1回の結果で判断できることはほとんどないという事実です。同じ人でも、採血の時刻・前日の食事・水分・運動・体位で値は動きます。

そのうえで、ダイエットの経過を追うなら、順番はこう考えています。

  1. 腹囲と中性脂肪をセットで追う。内臓脂肪がいちばん先に動き、中性脂肪はそれに素直について来ます。ここが動かないなら、その先も動きません。
  2. ALTは3か月待ってから評価する。肝臓の脂肪が減ってから数値が追いつくまでのタイムラグを、失敗と読み違えないためです。
  3. HbA1cは半年で見る。3か月でも読めますが、直近1か月の重みが半分ある以上、半年のほうが生活習慣の全体像に近づきます。

体重そのものをどう記録して、どこで手応えを判断したかは、82.05kg→72.4kgの実データに全部出しています。

血液検査を受けるタイミング|3か月・6か月・12か月

図解4:いつ測るかを先に決めておく 開始時 3か月 6か月 12か月 基準を取る (前回の健診で可) 中性脂肪・空腹時血糖 ALT・腹囲 HbA1cを含めた全体 尿酸・LDLの落ち着きも 年次健診で通年比較 1か月時点では測らない。 動く項目より、まだ順番待ちの項目のほうが多いためです。 測るなら、前回と同じ検査機関・同じ絶食時間・同じ時間帯で。条件を変えると比較になりません。

腎臓の項目(クレアチニン・eGFR)まで気にする段階の人は、クレアチニンの読み方も合わせて確認してください。

よくある質問

Q. ダイエットを始めて1か月、血液検査が変わりません。失敗ですか?
A. 失敗とは限りません。1か月で確実に動くのは空腹時血糖と中性脂肪くらいで、HbA1cは構造上まだ動きません。赤血球の寿命が約120日あるため、直近30日の生活が結果に占める割合は約50%です。ALTは肝臓の脂肪が減ってからさらに1〜3か月遅れます(Browning, Am J Clin Nutr 2011)。判定は3か月以降にしてください。

Q. LDLコレステロールが上がってしまいました。すぐダイエットをやめるべきですか?
A. 体重がまだ減り続けている最中なら、脂肪組織からのコレステロール動員による一時的な上昇の可能性があります。実際、超低カロリー食で30kg減量した6人では、減量中に開始前より高くなり、体重が止まった維持期に下がりました(Phinney, Am J Clin Nutr 1991)。ただし受診勧奨判定値(140 mg/dL以上)を超えている場合や、体重が止まって半年たっても高いままの場合は、別の原因を含めて医療機関で相談してください。

Q. 郵送検査キットやスマホの血液検査は、ダイエットの経過観察に使えますか?
A. 前後比較という点では注意が必要です。基準範囲は検査室ごとに設定されており、測定法によっても値が変わります。健診と自費検査を交互に使うと、変化なのか施設差なのか判別できません。比べるなら、同じ検査機関・同じ絶食時間で揃えてください。

Q. 健診の前は何時間絶食すればよいですか?
A. 特定健診では、空腹時の判定値を使うのは食後10時間以上、随時の判定値を使うのは食後10時間未満と定義されています。中性脂肪は食後3〜4時間でピークになり6〜8時間高いままなので、絶食時間が短いと随時の線(175 mg/dL)で判定されます。どちらで受けたかを毎回そろえることのほうが、絶食時間そのものより重要です。

Q. 筋トレを始めたら肝機能(AST・ALT)が上がりました。なぜですか?
A. 筋肉が壊れると、その中のASTとALTが血液へ出るためです。慣れていない健常男性15人に1時間のウエイトトレーニングをさせた研究では、AST・ALTが7日以上にわたって有意に上昇し、CKとミオグロビンは高度に上昇しました(Pettersson, 2008)。肝臓の障害と見分けるにはCKを併せて測ります。採血の前1週間は、慣れない強い運動を避けるほうが読みやすい値になります。

Q. どの数値がいちばん最初に改善しますか?
A. 空腹時血糖です。1日600kcalの食事をした2型糖尿病の11人では、7日目に9.2 mmol/Lから5.9 mmol/Lへ下がっていました(Lim, Diabetologia 2011)。肝臓の脂肪が減ってインスリンが効くようになるのが速いためで、次いで中性脂肪、そのあとにHbA1cとALTが続きます。

まとめ

  • 血液検査は体重に遅れて動く。空腹時血糖は1週間、中性脂肪は数週、HbA1cとALTは1〜3か月
  • γ-GTPは体重ではなくお酒に反応する(半減期14〜26日)。ダイエットの成果と混同しない
  • LDLと尿酸は減量の途中で一時的に上がることがある。体重が止まってからの推移で判断する
  • 判定は保健指導判定値と受診勧奨判定値の2本の線で読む。受診勧奨を超えたら自己判断で終わらせない
  • 量の目安は5%で血糖まわり、10%で肝臓の組織
  • 健診前だけの節制は、数値を良く見せるのではなく本来の状態を測れなくする

参考文献

  1. 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」健診判定値 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231390.pdf
  2. Lim EL, et al. Reversal of type 2 diabetes: normalisation of beta cell function in association with decreased pancreas and liver triacylglycerol. Diabetologia. 2011(n=11・8週・7日目に空腹時血糖9.2→5.9 mmol/L) PubMed
  3. Browning JD, et al. Short-term weight loss and hepatic triglyceride reduction: evidence of a metabolic advantage with dietary carbohydrate restriction. Am J Clin Nutr. 2011(追跡3.2±1.3か月でALT 88±34→33±16 U/L・79%が正常化) ScienceDirect
  4. Cai H, et al. Effects of alternate-day fasting on body weight and dyslipidaemia in patients with non-alcoholic fatty liver disease: a randomised controlled trial. 2019(4週で体重−6.1%・12週で中性脂肪約−25%) PubMed
  5. Effects of time restricted feeding combined with lacto-ovo vegetarian diet on metabolic associated fatty liver disease management: a randomized clinical trial. Scientific Reports. 2025(12週・体重−8.07±4.31kg・ALT−17.14±14.33 U/L) Nature
  6. Orrego H, et al. Relationship between gamma-glutamyl transpeptidase and mean urinary alcohol levels in alcoholics while drinking and after alcohol withdrawal. 1985(断酒8週の32名でγ-GT減衰の半減期26日) PubMed
  7. Phinney SD, et al. The transient hypercholesterolemia of major weight loss. Am J Clin Nutr. 1991(肥満女性6名・30.3±3.7kg減量・総コレステロール5.49→3.62→5.95→4.92 mmol/L) PubMed
  8. Weight Reduction and Target Serum Urate Level: A Longitudinal Study of Annual Medical Examination. 2024(尿酸6 mg/dL未満達成の調整相対危険度 1.25/2.82/5.27) PubMed
  9. Magkos F, et al. Effects of Moderate and Subsequent Progressive Weight Loss on Metabolic Function and Adipose Tissue Biology in Humans with Obesity. Cell Metabolism. 2016;23(4):591-601(5.1%減 n=19/10.8%減 n=9/16.4%減 n=9) Cell Metabolism
  10. Vilar-Gomez E, et al. Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis. Gastroenterology. 2015(生検確定NASH 293名・52週・5%以上減でNASH消失51/88=58%、10%以上減で90%消失・45%線維化改善) PubMed
  11. Look AHEAD Research Group. Reduction in Weight and Cardiovascular Disease Risk Factors in Individuals With Type 2 Diabetes: One-Year Results of the Look AHEAD Trial. Diabetes Care. 2007(n=5,145・体重−8.6%・HbA1c 7.3→6.6%) PMC
  12. Lean MEJ, et al. Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): an open-label, cluster-randomised trial. The Lancet. 2018(12か月で15kg以上減24%・寛解46%) The Lancet
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  15. Simulation of a computed HbA1c using a weighted average glucose. PMC(直近30日が約50%、60〜90日前が約25%) PMC

※この記事は検査値の読み方を解説するもので、診断・治療の判断を目的としたものではありません。判定値を超えている項目がある場合は、医療機関にご相談ください。

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